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ゲームの民主化の功罪も 2013年新春「次世代型ゲーム開発論」・・・黒川塾(伍)レポート

1月11日、エンタテインメントの未来を考える会の「黒川塾(伍)」が開催されました。「黒川塾」は、セガ、デジキューブ、ブシロード、NHNJapanなどを遍歴してきた黒川文雄氏がナビゲートするエンターテイメントの未来を考えるイベント。

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異常なテンションで幕を開けた自己紹介ですが、黒川氏は今回の趣旨を確認しました。黒川氏によれば、多くのゲーム開発や運営の案件に携わってきたやまもと氏を呼びたくて今回の「次世代型ゲーム開発論」というテーマを設定したといいます。そこでUnityの大前氏に実際に新しいゲーム制作の形を提示してもらい、さらに実際にUnityを使用した事例を馬場氏や飯田氏に説明してもらいたかったとそうです。

それに対して、やまもと氏は「どこまで話していいの?例えば、某社が潰れそうだとか?」とまたもや爆弾発言。会場のテンションが再び跳ね上がったところで、大前氏が「立て直しのため(笑)」とゲームエンジンであるUnityを紹介するプレゼンテーションを始めました。

Unityの制作画面も紹介Unityの生い立ちから語られた


既にかなり浸透しているUnityについて、改めて説明する必要はないかもしれませんが、大前氏はニコニコ生放送を見ている一般の方々向けにも、分かりやすい説明を行いました。Unityはゲームの開発環境と実行環境を合わせたゲームの統合開発環境であり、ゲームを実際に動かしながら開発を行えることが特徴です。マルチプラットフォームに対応しているため、ビルドを行えば、iOSやAndroidなどのスマートフォンからXbox360やPS3やWiiUなどのコンソール機でゲームが動かせます。

また大前氏は実際のUnityの編集画面を実演しながら説明しました。デモであるカーレースゲームを実行し、途中で止めて、車のカラーリングやテクスチャーを変更しようとすると、自動的にPhotoshopが立ち上がります。さらに編集を「コントロールZ」でアンドゥして取り消すことも可能。

これまでのゲーム開発では、扱うデータが多様であるため、クオリティを高めるゲームプレイのトライ・アンド・エラーを十分に行えなかったといいます。それに対して、Unityは開発段階でもプレイアブルなゲームのトライ・アンド・エラーを行なうことがメリットだと大前氏は説明しました。また開発のためのワークフローがプロジェクトごとにカスタムメイドであったため、ゲーム作りのノウハウが集積できなかったことを、Unityは解消したと大前氏は説明します。

そのようなUnityを開発するユニティ・テクノロジーズの社是は「ゲーム開発を民主化する」というものです。もともと、デンマークでゲームを開発していたOver The Edge Entertainmentという会社が元になり、創業されました。彼らはゲーム開発に取り組むも成功に至らず、代わりに開発していたゲームエンジンを普及させる道を選びました。

ゲームエンジンの提供によって「ゲーム開発を民主化する」といいうユニティ・テクノロジーズは、当初はベンチャーキャピタルからも相手にされず、3名の創業者たちは貧乏生活の中で開発を行なってきたそうです。2007年にサンフランシスコで行われたUnityのイベント「Unite」では、社長David Helgason氏は参加者たちに用意したケータリングの支払いができず、3日間、現地の留置場に入れられたというエピソードを大前氏は紹介しました。

スマートフォンの普及も手伝い、現在のUnityは爆発的に成長しています。特にアジア圏での成長が目覚ましいといいます。日本では2010年から2012年の間に4800%の成長という驚異的な成長を見せたといいます。これに対して、やまもと氏はUnityが普及している現状を皮肉り、「今、アジア圏ではUnity奴隷という人々がいる」と冗談を述べる場面もありました。

ビジネスモデルとしては無料版を提供すると共に、有料のプレミアム版を販売するというフリーミアムを採用しています。そのため、無料版の使用では大規模なユーザー・コミュニティによる助け合いによるサポートが特徴となっています。一方、有料版には公式の手厚いサポートがあるといいます。

また昨年、発売された任天堂のWiiUにも対応しています。任天堂は今後、小規模開発者を呼び込む意気込みが強く、大前氏としても今年はWiiUのサポートに力を入れるそうです。その他、既にスマートフォンではバンダイナムコゲームス、セガ、グリー、コナミなどの大手パブリッシャーから、アプリのレビューサイトからスタートしたベンチャー企業のAppBankなどがUnityを採用しています。

■未発表ゲームのデモも公開

大前氏のプレゼンテーションの後、黒川氏はUnityを実際に使用している馬場氏と飯田氏にコメントを求めました。馬場氏は3Dでゲームを開発するなら、Unityの利便性は高いと述べ、実際に開発している未発表のゲームを初披露しました。また飯田氏もLINE向けにリリース予定の『イージーダイバー』をUnityで開発しており、その場面をイラストレーターの納口龍司氏と共に会場だけに披露しました。予定外の未発表のゲームのデモンストレーションが立て続けに行われ、会場は熱気に包まれました。

未発表のゲームも紹介された


飯田氏は、Unityを採用する際に決め手になったポイントとして、さきほど大前氏が説明したユーザー・サポートを行なうコミュニティの存在を挙げています。そして、これからのゲームエンジンは、コミュニティの永続的な運営が重要ではないかと提起しました。さらに、Unityがきっかけとなって日本のゲーム業界の風通しの良さは促進していったと述べています。

それに対して、大前氏は日本のゲーム業界の風通し自体は、Unity以前から良くなっていると付け加えました。10年くらい前からCEDECなどのカンファレンスで積極的な技術発表が行われ、その潮流に現在のUnityが上手く乗れたと振り返っています。また、アメリカの高校生がUnityで開発したゲームを大ヒットさせた事例や海外のインディーゲームなどを紹介し、現在のゲーム業界はクリエイターが自由に創造性を発揮できる土壌になりつつあると説明しました。

その一例として、飯田氏は自身が講師を務めるデジタルハリウッドの学生を紹介しました。飯田氏によれば、彼はこれまでどのようなゲームを作りたいのかを上手く具体化することができなかったといいます。ところが、去年の夏くらいからUnityでゲーム開発を始め、現在、卒業制作のゲームを開発中です。彼はプログラマーやグラフィッカーの経験はなかったそうですが、会場で披露されたデモはプレアイブルな形で具体化されていました。

それを受けて大前氏は、実はゲームを作りたいという人間が何を作りたいかはっきりしないという状況は多々あると述べています。そして、そのような漠然とした構想をいち早くプレアイブルな形で具体化するために、Unityは効果を発揮すると主張しました。

実際に会場で披露されたデモに対して、やまもと氏や馬場氏は「もっとバイオレンス感があっても良いのでは」、「レベルデザインはまだできていない」などというコメントを入れました。このように、作り手側から見れば、未完成な状態でフィードバックが得られるのは非常に魅力的に映ります。

■ゲーム開発の民主化の負の影響
《今井晋》
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