回数を重ねることで確実に認知度が高まってきた黒川塾ですが、今年最後となる第四回目は、2012年度を振り返り、ゲーム・エンタメ系メディア系編集長たちを一堂に招き、印象に残った今年のコンテンツについて語り合いました。
また開催前からFacebookなどのアンケートによりエントリーを募り、それも参考にしつつ2012年度の「エンタテインメントの未来を考える大賞」を選定するという流れになっています。当日もニコニコ生放送で中継され、オフラインのイベントにとどまらない広がりを見せたイベントになっております。
まずはオーガナイザーの黒川文雄氏から今回のゲスト紹介が行われました。朝日インタラクティブ株式会社の佐藤和也氏は、ゲームキャラクター雑誌や攻略本など紙媒体での編集をつとめた後、2008年よりGameSpot Japanの編集を担当、2010年より編集長を歴任。現在CNET Japan編集記者をつとめています。
当サイトINSIDE・GameBusiness.jpの編集長をつとめる土本学氏は、2000年に個人でゲーム情報サイトを立ち上げ、大学卒業後にサイトをIRIコマース&テクノロジー(現イード)に事業譲渡し編集長として加わりました。土本氏の来歴やゲームメディアについての考え方は先日おこなれたイベントの取材でも触れられています。
参考「いま"ゲーム"はどんなメディアを必要とするか?」 WIREDとGameBusiness.jpの編集長が対談」
株式会社エンターブレインの目黒輔氏は、フリーライターを経て「週刊ファミ通」、「ファミ通.com」、の編集記者を経験後、2011年からファミ通Appの編集長をつとめています。ウェブサイト運営のほか、ムック本「ファミ通App iPhone&Android」や「なめこ栽培キット」や「パズル&ドラゴンズ」などのファンブックも手掛け、12月19日には「ファミ通App iPhone&Android NO.005」を発売予定です。
■2012年を振り返って――「パズドラ」、「なめこ」、「アイマス」
ゲスト紹介の後、黒川氏は2012年のエンターテイメント業界をおおまかに振り返ってみました。家庭用ゲーム機の低迷する中、ソーシャルゲームが躍進するも、5月に発生したコンプガチャ問題で一度業界側が冷静にエンターテイメント産業のあり方を考える流れができたといいます。そして、秋口からは家庭用ゲーム機を中心に良いコンテンツを作るという方向が積極的になり、またスマートフォンではガンホーの「パズル&ドラゴンズ(以下パズドラ)」の大ブレイクで、ソーシャル一辺倒であった業界を驚かせました。
一方、土本氏は、今年を振り返って一番大きかったのはNHNの無料音声通話・メッセンジャーアプリのLINEであったと言います。昨今ではゲームプラットフォームとして事業を拡大し、LINE POPが圧倒的な速さで1000万ダウンロードを達成。土本氏は個人的にもLINEスタンプのキャラクター「ブラウン」が大好き。会場にもわざわざグッズを持ちこみ、その思い入れの強さを語りました。またビジネス的観点でも「キャラクター」というものを強調。昨今のスマートフォンビジネスでは、アングリーバードなどの海外キャラクターが世界を席巻する一方、今後、LINEはそれに対するカウンターとなり得るのではないかと語りました。
次に目黒氏は、今年は「パズドラ」と「なめこ栽培キット(以下なめこ)」一色であったと振り返っております。「パズドラ」はリリースされたのは今年の2月でしたが、未だにスマートフォンのランキングでは一位。ここまでの人気、売行きを示すモンスター級のタイトルは今後もそう簡単に生まれないのではないかと述べました。
一方、「なめこ」は今だとシリーズ累計2500万ダウンロードという圧倒的な支持を基盤に、現在ではスマートフォンアプリの域を超えて展開しております。目黒氏が在住の埼玉のアミューズメント施設も今では「なめこ」一色になったといっております。また目黒氏が手がけた「なめこ」のファンブックは30万部という売り上げを記録。出版不況の中でこれだけの数字を上げるのはかなりのものです。
以上を総括し、目黒氏は2012年をスマートフォンアプリから新しいIP(知的財産)が花開いた年と述べました。「なめこ」はソーシャルゲーム全盛の中でも、まったく課金を必要としない無料アプリを貫き、結果としてキャラクターを育てることで人気を獲得したと目黒氏は主張しました。黒川氏もそれに応答し、エンターテイメント産業においては、キャラクターがアミューズメント施設のUFOキャッチャーなどのプライズ(景品)になったら一つのブレイクスルーを達成したと言って良いだろうと述べました。そして「なめこ」を開発したBEEWORKS GAMESはもともと編集プロダクションから出発しているため、そこでのノウハウが現在のマルチメディア展開に生きているのではないかと、主張しました。
佐藤氏は今年を振り返って、良くも悪くもモバイルゲームがクローズアップされた1年だったと述べました。家庭用ゲームだと盛り上がりを維持するのが難しい一方、ソーシャルゲームは常に更新することで熱量を維持できるところがポイントだと、佐藤氏は分析しています。もともと「アイドルマスター」の大ファンであった佐藤氏は、現在の「アイドルマスターシンデレラガールズ」の成功もそこにあるとにらんでいます。
■エンターテイメントの本質とは――LINEスタンプとコミュニケーション
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