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【特集】ゲームブックはオワコンなのか ― 「ドルアーガの塔」を電子書籍化した幻想迷宮書店が語る今と未来

名作ゲームブック「ドルアーガの塔」三部作を電子化し、一躍注目を集めた“幻想迷宮書店”。その後も意欲的なリリースを続けると共に、電子書籍としてのメリットを生かした「ゲームブックの進化」にも取り組んでいます。

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──「ドルアーガの塔」で言えば、マッピングの楽しさもありますよね。60階分のマップを自分の手で埋めていく快感が。

酒井氏:昨今のゲームはオートマッピングだったりしますけど、自分の手でマップを埋める楽しさというのもあると思うんですよね。その例として、『世界樹の迷宮』シリーズってあるじゃないですか。

──はい。ニンテンドーDSでシリーズが始まり、今は3DSで展開しているダンジョンRPGですよね。

酒井氏:『世界樹の迷宮』シリーズって、オートマッピングじゃなくて手書きなんですよね。あれが実に面白くて(笑)。あれは、(表現や処理こそデジタルですが)アナログが持つ面白さなんですよね。


マッピングソフト「方眼紙マッピング」

──マッピングは、文字情報を視覚化する作業とも言えますし、同時に楽しい部分でもあります。ゲームブックでも数多く扱われました。

酒井氏:ゲームブックを知らないような世代の方々も、あの楽しさを受け入れたわけですよね。だから必ずしも、「楽して遊べること」だけが正解ではないと思うんですよ。

──手間が面白い場合もありますしね。不便と手間は違うわけで。ちなみにゲームブックの衰退時期を今振り返ってみて、酒井さん自身はどう感じていましたか?

酒井氏:当時は一読者に過ぎず、続編が出ないことは残念だったんですが、衰退そのものが悲しかったのかと訊かれると、ゲーム好き少年としてはファミコンがありましたし、不自由も不満もなかったんですよね。本格的に(コンピュータ)RPGも発展していきましたから。『ドラクエ』も『FF』も面白かったです。

──ファミコンブームの時、少年たちは無我夢中でしたよね。

酒井氏:あと個人的な見解ですが、当時、ゲームブックにトドメを刺したのは、『弟切草』と、その続編『かまいたちの夜』なのかなと思います。ゲームブックが、普通のコンピュータRPGにない点を発展させていき、ノベルゲームとして進化していった時の理想型が『かまいたちの夜』だと感じました。『かまいたちの夜』は紙の書籍で再現しようと思っても、まず出来ないんですよね。

──あの分量を一冊に収めるのは難しいですし、分冊というのも現実的ではありませんしね。また、グラフィックや音楽といった演出面の問題もありますし。

酒井氏:『かまいたちの夜』で、ノベルゲームは一度極まってしまった。しかもコンピュータゲームでしか届かない領域で。紙のゲームブックが勝てるのは、価格面だけだったんです。

──開発費に関しては、コンピュータゲームはどうしても嵩みますからね。

酒井氏:『かまいたちの夜』のボリュームには敵わなくとも、それなりの感動をより安価に味わうことができる。それはもちろん可能なんですが、(遊びとして)劣化しているような印象もあるじゃないですか。

──それって、悔しいですよね。

酒井氏:はい。なので、『かまいたちの夜』で一度完敗したなという感触がずっとあったんです。ですが電子書籍なら、紙媒体では敵わなかった面がクリアできるんですよね。

──と、言いますと?

酒井氏:まず、厚さですよね。紙の書籍だと、厚すぎたらどうしたって無理じゃないですか。だからボリューム面で限界があるんですが、電子書籍では問題にならない。文字がどれだけ増えたところで、容量には大して響きません。何万ページもの分量でも、電子書籍なら商品化が可能なんですよ。

──ボリューム面の問題が、電子版ならクリアできるわけですね。

酒井氏:ボリュームの包容力においては、コンピュータのノベルゲームに追いつくことができたと思います。また読み進める上でも、電子書籍ならばシステム面でも紙より進化させることが可能です。

──どのような進化でしょうか。

酒井氏:突き詰めていくと、パラグラフが必要ではなくなります。例えば、「宝箱を開ける」という選択肢がある場合、これまでのゲームブックであれば「宝箱を開けるなら → 50へ進め」という文章になり、「50」の部分にハイパーリンクを仕込むわけです。

──紙媒体で生まれた形式を電子版に導入した、今現在のスタイルがそれですよね。

酒井氏:はい。ですが、「宝箱を開ける」という言葉にハイパーリンクを埋め込めば、パラグラフ番号そのものは不要になります。選択肢や分岐はハイパーリンクで繋がるので。

──なるほど、そういうことですか。

酒井氏:そしてパラグラフ番号がないことで、色々な効果が生まれるんです。例えば進行度ですよね。今自分がどのくらい冒険を進めているのか、序盤なのか中盤なのか分からない。あとどれくらい続くんだろう・・・といったハラハラドキドキ感が最後まで続くんです。

──確かにパラグラフ番号があると、何度か番号を巡っているうちに、最大数がなんとなく分かりますからね。「500より上のパラグラフ指定が出てこないから、それくらいの分量なのかな」とか。

酒井氏:これが紙媒体だと更に、本の厚さそのものでもある程度計れたりしますしね。パラグラフ番号がなくなることで、こういった「予測」がなくなり、先が見えない楽しさが増えます。

あとは、同じパラグラフに来ると「さっき読んだな」「同じところだな」と分かってしまいますが、電子書籍だと本当に同じ場所かどうか分からないですよね。文章が同じでも、内部処理ではまったく違うパラグラフになっている可能性もあります。

──あ、そういうことも可能なんですよね。言われてみて初めて気付きました。すると逆に、違う文章だけどもパラグラフ番号の管理的には同じ段落、という演出もできるんですね。

酒井氏:これも、コンピュータのノベルゲームだと可能で、紙媒体では不可能だったことですよね。そして、既に配信中の「魔人竜生誕」では、電子書籍特有のギミックを活かした改良が施されているんです。

──その点についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

酒井氏:はい。元々は紙媒体で出ていた作品なので、パラグラフ番号そのものは再現しているんですが、例えば「337」というパラグラフ番号が3通りあったりするんです。こっちから飛ぶ337と、あちらから飛んでくる337が微妙に違っていたり、という感じです。

──トリックや仕掛けにも使えそうな進化ですね。

酒井氏:このように、電子化することで表現力の向上も得られたんです。紙媒体の頃に出来てしまった差を、電子化することで埋めることができる。今、電子版で新作を出すとしたら、表現の幅が広がったことを前提とした内容にしたいですね。

──電子化は、ただ便利になっただけではなく、紙媒体の頃についたコンピュータゲームとの差を埋めてくれるんですね。今後の展開も実に楽しみです。

ゲームブックの新たな可能性を切り開く発言に出会えたぞ! 技量点を1上げてもいいくらいの発見だ。原点を超えた「つもり」になっていい。ただしインタビューはまだ続くので、素早く行動しよう。

・小説の電子化も気になる。
7へ進め

・ゲームブック以外に興味はない!
8へ進め

《臥待 弦(ふしまち ゆずる)》

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