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【GTMF 2012】国産ゲームエンジン「OROCHI」を採用した、スクエニ『ガンスリンガー ストラトス』の開発

シリコンスタジオが開発した国産ゲームエンジン「OROCHI」。その採用第一弾として世に出るのは、スクウェア・エニックスの業務用向け『ガンスリンガー ストラトス』でした。

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シリコンスタジオが開発した国産ゲームエンジン「OROCHI」。その採用第一弾として世に出るのは、スクウェア・エニックスの業務用向け『ガンスリンガー ストラトス』でした。「Game Tools & Middleware Forum 2012」ではシリコンスタジオで「OROCHI」の開発を担当する新井タヒル氏、『ガンスリンガー ストラトス』の開発を行ったバイキングの尾畑心一朗社長、エンジニアの鈴木氏が登壇して開発秘話を語りました。

「OROCHI」はシリコンスタジオが開発するマルチプラットフォーム対応のゲームエンジンで、主にハイエンド機の中型~大型プロジェクトを想定し、プロジェクトに応じて柔軟なカスタマイズが出来る事が特徴で、「プロジェクトを成功に導くエンジン」というコンセプトで開発がされました。シリコンスタジオの「YEBIS」「BISHAMON」といった実績のあるミドルウェアが搭載されているのも魅力です。昨年のGDCでお披露目された「OROCHI」ですが、「2」を飛ばしこの度「OROCHI 3」とバージョンアップしています。

『ガンスリンガー ストラトス』は実在の街でバトルを繰り広げるということをコンセプトにしたネットワーク対戦アクションゲームです。開発期間は約1年半ですが、営業的な都合もあり、プレイアブルデモを7ヶ月で準備する必要がありました。プリプロが始まったのは2010年12月頃。当初は別のゲームエンジンで開発が進められていましたが、「OROCHI」への乗り換えを決断します。

バイキングの尾畑氏が特に強調したゲームエンジンの条件は「ゲームエンジンに合わせてゲームを作るのではなく、ゲームに合わせてエンジンをカスタマイズできること」。実在の街を舞台にして、写実的なグラフィックやエフェクトを多様するという点で「YEBIS」「BISHAMON」などが最初から使えること、シリコンスタジオがレンダリングを非常に得意としたスタジオであり「わがままも叶えて貰えそう」な点も大きなポイントとなったそうです。また、タイトーから提供されるガンコンのライブラリなどを柔軟に組み込める点も重要でした。

尾畑氏の言葉通り「OROCHI」にはこのプロジェクトの為に様々なカスタマイズが加えられているようです。

ミドルウェア系では「Havok」と「Umbra」が追加で組み込まれました。「OROCHI」は物理エンジンとして標準ではNvidiaのPhysX、Bulletを搭載。しかしDCCツールとの連携の良さからHavokの「Destruction」「Cloth」が導入されました。組み込みは基本的にはゲーム開発チームが行ったものの、一部エンジンチームもサポートしたとのこと。ちなみに、バイキング側からはHavokに対して「渋谷の街のビルを全て破壊可能にしたい」というリクエストが出され、「クレイジーだ」と驚かれたとか。しかしあくまでも「できる方法を探したい」と貫き、その方法を実現できたそうです。開発チームの姿勢を表すものと言えるでしょう。

「Umbra」は遮蔽物の向こうにあるオブジェクトを描画しないようにして、描画負荷を落とすためのミドルウェアです。『ガンスリンガー ストラトス』には非常に沢山のオブジェクトが登場するため描画速度を得るために導入されましたが、空中からの視点も存在し、その場合には効果が無いなど、あまり大きく効果は得られなかったそうです。

レンダリング関係では動的な陰を焼き込む「SSAO」、木漏れ日のような効果を出す「ゴッドレイ」、髪の毛の表現などに用いた「異方性反射」、人間がワープするような動き「ワープエフェクト」、キャラクターが近づいた時だけ発動するバリア「バリアエフェクト」(バリアの境界線は壊れた建物の上にもきちんと描画されるように、無限の遠景から線を投影した)などの表現手法を新たに追加してもらったそうです。

エンジニアの鈴木氏は「シリコンスタジオのスタッフの皆さんには数え切れないくらいバイキングのスタジオに来ていただいて、一緒に作りましょうという姿勢を最後まで貫いてくれました。現場のスタッフは本当に信頼して、安心感を持ってプロジェクトを進めることができました。ゲームエンジン自体の質は当然大切ですが、二人三脚でやってくれる事が本当に大事だと感じました」と開発を振り返りました。ちなみに、様々なミドルウェアを使っている中でも「OROCHI」のサポートが一番だったそうです。

『ガンスリンガー ストラトス』は今月12日から全国で順次稼働予定です。
《土本学》

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