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【特集】『ガンヴォルト 爪』開発陣インタビュー ― 「このゲーム死なないけど大丈夫?」が「すごく面白い」「続編作ろう」に変わるまで

ゲームクリエイター・稲船敬二氏とインティ・クリエイツがタッグを組んで生み出したアクションゲーム『蒼き雷霆(アームドブルー) ガンヴォルト』。ロックオンを併用する強力な攻撃「電撃鱗」と絶対回避の「電磁結界」による爽快なゲーム性が好評を博しました。

任天堂 3DS
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◆「このゲーム死なない」「大丈夫?」と言われてきた『蒼き雷霆 ガンヴォルト』制作現場



──ではまず、3DSでリリースされ、Steamでの配信も行われた、前作『蒼き雷霆 ガンヴォルト』の反響についてお聞かせください。

津田氏:TwitterなどのSNSで語っていただけることもあり、ユーザーさんのコメントを見るたびに嬉しく思います。また体験会やイベントを実施した際に、「遊びましたよ」と言ってくださる方が思っていた以上にいて驚きます。E3のような海外のゲームショウにも、『蒼き雷霆 ガンヴォルト』を知っていただいている方がいて、なんだか新鮮な感じです(笑)。

山田氏:前作の時に、イベントを平日に行ったことがあるんです。ほとんど告知もしていないような状態だったんですけども、すごく多くの方に集まっていただけました。ちょっとした列ができて、警察の方から注意されたほどです(笑)。

──まさに、目に見える手応えですね。

津田氏:ほかのタイトルでも幾度もイベントを行っていたので、これくらいだろうという想定があったんですが、それを上回る人数がいらっしゃって。それを見た時に、「ユーザーさんにちょっとは刺さったのかな」と実感しました。実は最初椅子を並べていたんですが、(人が入らないので)全部外してイベントを行うほどで。

荒木氏:そのイベント、僕はスタッフではなく客の立場で行ったんですが、結果的に誘導役として駆りだされてしまいました(笑)。

山田氏:『ガンヴォルト』は歌もポイントになっている作品でして、コンサートなどもやらせていただきましたが、あの時のイベントがそのきっかけになりました。すごく感触がよかったので、今後も色々とやってみようかという流れに。

──ユーザーさんの反応が、その後の広がりに繋がっていったんですか。嬉しい流れですね。多くのユーザーさんに支持されている『ガンヴォルト』ですが、アクションというジャンル自体は最盛期と比べるといささか縮小傾向にあります。それでも新規IPによるアクションゲームを作ろうと決めた原動力は何なのでしょうか。


津田氏:他の人の原動力は分かりませんが、私自身は「2Dアクションならなんとか作れるかなー」という人間でして、それ以外のゲームは作れる自信がまだないんですよ(笑)。

あと私自身、2Dアクションが好きというのもあります。TVゲームの一番面白い部分は、「リアルタイム性」だと思っているんですが、その方向性と2Dアクションの性質が非常にマッチしているスタイルだなと感じていて、作るなら2Dアクションがいいなと常日頃考えています。

加えて、言われた通りアクションゲームの全体のユーザー数というのは減ってきていますし、プレイする方の年齢層も比較的高めの方が多いんですよね。ともすれば、オールドゲームなジャンルに取られることもありますし。なので『ガンヴォルト』は、いかに初心者や低年齢層を開拓できるかというのを目指しました。

──ジャンルの活性化、新しい風を吹き込みたいという想いもあったんですね。

津田氏:入門的なゲームになればいいな、という想いがありまして。アクションが得意ではない方でも最低限クリアまではできるように、「電磁結界(カゲロウ)」や「復活」というシステムを用意しました。

例えば、『スーパーマリオ』の3面くらいまでは、みんな楽しめると思うんですよ。なので「その辺りまで進められるユーザーがクリアできるゲームを作りましょう」と開発を立ち上げ、進めていきました。できるだけ簡単に簡単に……と。

ところがですね、社内の人間は難しいゲームが好きなので、放っておくと難易度が上がるんですよ(笑)。「こんな難しくしないでー!」って言ってるのに、どんどん難易度が上がりまして。


──アクションの間口を拡げる考えと、手応えを求める考えがせめぎ合ったんですね(笑)。

津田氏:「復活」するとEPゲージが減らないというかなり強力な状態になるんですが、これくらいしないと(アクションが得意じゃない人は)クリアできないんじゃないかなと思って調整したんです。「復活」のシステムを最初に考えた時は、そこまで強くするつもりはなかったんですよ、実は(笑)。

直接目には見えないんですが、こういった考えや、その結果として導入したシステムなどが、今遊んでくれている方々に刺さっているのだとしたら、本当に嬉しいですね。

山田氏:『ガンヴォルト』を作っている時、「このゲーム死なない」ってみんな言ってたんですよ。「これでいいの?」って(笑)。開発スタッフは、手強いアクションゲームをずっと作り続けてきたメンバーですから。

──これまで作ってきたアクションゲームとはどこか違うぞ、と。

山田氏:そうですね。最初は「死なないゲーム」だと思っていたんですが、これは「自分で難しくしていくゲーム」だなと気付きまして。十字キーの下を連打していれば、ほとんどの攻撃は「電磁結界」で無効化できるわけですが、いざ攻撃しようとすると相手の攻撃も当たる。このジレンマがゲーム性なんだなと分かって、これまでの旧態然としたアクションゲームとは真逆なんだなと感じました。

──スコアを稼ごうと思ったら、「電磁結界」に頼らず自力で避けないといけませんしね。

山田氏:クリアするだけなら、「電磁結界」を使って攻撃を回避しつつ、その合間にちょっとずつダメージを与えていく。このプレイスタイルの提案が、今までアクションゲームに手を出さなかった人たちへの間口を拡げて、裾野を拡げていったのかなと思っています。

津田氏:アクション初心者の人がクリアでき、かつ上級者の方向けのシステムも用意する。その考えは、『ガンヴォルト』制作当初からずっと持っていました。ただ、その考えを理解してもらうまで長かったですね(笑)。途中までは、荒木さんとかにボロボロに言われてましたから。

荒木氏:その節はすみませんでした(笑)。いやその、開発はそれぞれが部分部分で取り組むじゃないですか。それらが繋がって遊べるようになったのが、『ガンヴォルト』の時は結構終盤だったんですよ。

それまで全体の形が分からなくて不安でした。津田さんとかみんなに集まってもらって、「このゲーム大丈夫なんですか?」と聞いたりして(笑)。ただ、繋がって遊んでみたら、それまで作ってきたゲームにはない初めての感覚があって、「このゲームすごく面白いんじゃないか!」って(笑)。

──評価が一変した、と(笑)。

荒木氏:内部で「このゲームすごく面白い」とかって、あまり言わないんですよ。でも開発中に『ガンヴォルト』をプレイしてる時、一緒にチェックしてる人と「このゲーム、ヤバくない?」みたいな話をしてしまうほど、衝撃的でした。その時に初めて、「こういうゲームだったんだ」と分かった瞬間でした。

──アクションゲームに慣れているほど、「電磁結界」は驚きのシステムですよね。操作しない方が安全、という(笑)。

津田氏:子供とかにゲームをやらせてみると、やっぱりクリアできない子も多いんですよね。そして、進まない時って、大体止まるんですよ。穴の手前とかで。

──「どうしたらいいんだろう」みたいな戸惑いがあるんですね。


津田氏:こういう子たちのプレイを見ていると、「無敵にでもしないとクリアできないんじゃないの?」みたいに思うわけですよ(笑)。だから、穴に落ちて死ぬというアクションゲームお馴染みの要素も、できるだけ減らしてみたんです。

ただ、「夜のビルの上に立つ主人公」というイメージも大事にしたかったので、それを表現しようと思うと、どうしても高さが必要になるんですよね。なので『ガンヴォルト』の開発中盤くらいに「穴があるのは仕方ないよね」と、そこは考えを改めました(笑)。

──上下が反転するステージもありましたしね。よく上に“落ち”ました(笑)。「電磁結界」といい、印象深い仕掛けやシステムが多い作品ですよね。

山田氏:アクションゲームに慣れていると、(「電磁結界」で攻撃が回避できるなど)このゲームはなんなの? って思ってしまうんですよね、最初は。でも実際にゲームをやってみると「あ、こういうことだったんだ」と気付かされるんですが、それまではやはりなかなかイメージできなくて。「こんなの死なないじゃん」って(笑)。

──「電磁結界」のシステムなどを聞くと、死なないゲームだと思いますよね。

山田氏:でも死ぬんですよね、意外と(笑)。

津田氏:最終的にはいいバランスに落ち着いたのかなと思っています。

──難易設定ではなく、プレイスタイルによって難しさが変化するゲームデザインは、刺激的でしたし魅力でもありました。

津田氏:そこまではしっかり考えて作っていたんですが、クードスが1000を超えるとモルフォが歌い出すというシステムに関しては、バランス面で心残りのある部分でして。元々は「ドキドキさせるシステムを用意したい」と考えていて、1000を超えると心臓音が鳴る、という形だったんです。でもあるタイミングで、「クードスに歌を当てはめたら面白いのでは」と思いついて、山田に歌を一曲作ってもらいました。

その感触が想像以上によかったので、モルフォが歌うシステムという形になったんですが……プレイした方なら分かると思うんですが、クードスが1000を超え、またその状態を維持し続けるのって結構難しいんですよね。後から加えたシステムだったので、ここのバランスだけはちょっとちぐはぐだったかなと感じています。もう少し優しいバランスで曲が流れてもよかったのかなと。

その点を踏まえて『爪』では、スコア清算率は低いものの被弾しても減らない「アパシー」や、逆に清算率は高いものの一度の被弾で0になる「レックスレス」、3回被弾するまで維持される「ティミッド」という3つのモードを用意し、より遊びやすくしてあります。

山田氏:ご褒美を難しいところに置く、というのはゲームバランス的にやってしまいがちなんですよね。初心者向けのアイテムを入手しづらい場所に用意する、みたいな(笑)。それに近いことをしてしまった感覚があったので、『爪』では調整が入って安心しました。


荒木氏:前作のシステムも、あれはあれで「1000超えよう!」というモチベーションに繋がるんですけどね。

津田氏:シンプルで分かりやすいので、前作のシステムもひとつの形かなと思います。そして『爪』では、色んなユーザーに楽しんでもらえるようにしましたので、前作と本作それぞれを出す意味がある形になったのかもしれませんね。いきなり『爪』のシステムだと、分かりにくかったかもしれませんし。

──前作の経験や反響が、『爪』に活かされているんですね。

津田氏:前作は、アクション初心者の方と上級者の人、それぞれを意識したシステムやバランスを心がけましたが、中級者向けのシステムはあまりなかったんですよね。なので『爪』では、そこも少し厚くしてみました。

──中級者に向けた要素を伺ってもよろしいですか?

津田氏:一例としては、「ノーマルスキル」の存在ですね。ゲージを使わないで使用できる「ノーマルスキル」というのがGVにあるんですが、これを探す遊びなどは中間層向けかなと思っています。ステージのあちこちを回って、見つける楽しさを味わえます。

あとアキュラで言えば、プログラムをどんどん増やせるチップを隠してあるので、それも見つけてみてください。……ぶっちゃけて言うと『ロックマンX』ですよね(笑)。

──ぶっちゃけましたね!(笑)

津田氏:あの辺りを参考にして(笑)。「隠しハンマー」を見つける楽しさとかは、中級者向けの遊びかなと。上級者になると、見つけたアイテムを駆使してタイムアタックに挑む、みたいな。前作は「簡単」と「難しい」の両立を中心にしていたので、『爪』では中間層にも向けて作ってみました。

──『爪』は、より多くの人に向けて作られた一作なんでですね。プレイできる日が楽しみです。

《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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