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ユーザーが盛り上げるゲーム業界 パッケージソフト、ソーシャルゲーム、eスポーツの将来・・・黒川塾(七) レポート

黒川塾は数々のエンターテイメント業界を遍歴した黒川文雄氏が開催する毎月、恒例のイベント。今回も豪華なゲスト陣が招かれ、「僕らのゲーム業界ってなんだ・・・!?」と題し、ユーザー主体でゲーム業界を盛り上げていく方法が議論されました。

ゲームビジネス その他
黒川塾(七)
  • 黒川塾(七)
  • 黒川文雄氏
  • アメリカザリガニの平井善之氏
  • 元ジンガジャパンの松原健二氏
  • eSportsの普及に尽力してきた筧誠一郎氏
  • 猿楽庁の橋本徹氏
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さて今回のテーマは「僕らのゲーム業界ってなんだ・・・!?」というもの。もともと前々回のゲストであったやまもといちろう氏から、アメリカザリガニの平井氏を紹介されたのがきっかけとなったそうです。そこでまず平井氏から昨年設立された「日本ゲームユーザー協会」について概要と設立の経緯と趣旨が説明されました。

芸人らしいテンポの良いトークで平井氏は設立の経緯を説明しました。きっかけは業界から「ゲームが売れない」といった話題を多く聞いたこと。そこでゲームが売れるために盛り上げるための組織を作ろうという素朴な発想からスタートしたといいます。名前は特にこだわりがなく、「ゲーム盛り上げ隊」でも「ゲーム大好き会」でも良かったそうですが、「協会」は誰でもつくっても良いということを知り、「日本ゲームユーザー協会」を設立したそうです。

実際に平井氏によれば、日本には「ツインテール協会」などといった変わった協会が多数あるそうです。そこでゲームのユーザーがゲームを盛り上げるのなら、メーカーも喜ぶだろうと考え、友人に声をかけ、組織を作っていったそうです。発起人は7、8人であり、最初の活動は「任天堂のWiiUを発売日に並んで買おう」という地味なものでした。それでもメディアの取材を受け、記事になることで話題作りには貢献しました。実際に店頭に並び、並んでいる人同士でコミュニケーションを取るなど、今後もユーザー同士の交流を基本とした活動を行なう予定です。

しかしながら「協会」という仰々しい名前を付けた結果、平井氏のTwitterなどでは賛否両論が投げかけられました。具体的には「お前がゲームのユーザーを代表するな」、「中抜き団体だろ」といった誤解や批判にさらされました。平井氏は確かに会長を務めていますが、別に自身がゲームのユーザー代表ではないし、中抜き団体どころか、ボランティアの集まりであると説明しています。実際に現在のところ、協会には収益などがないため、新しいイベントや企画がなかなか進まないと述べています。

協会の基本的な立場としては、元気がないゲーム業界にユーザーからの応援を行なうことで活性化したいというものです。しかしながら、このゲーム業界の活気に関しては意見が分かれます。ジンガジャパンでソーシャルゲームに関わってきた松原氏によれば、確かにパッケージソフトの売上はかなり下がっていますが、その分、ソーシャルゲームの売上は爆発的に成長しています。またガンホーの『パズル&ドラゴンズ』といったメガヒット作は、今年1月の売上だけでもPS3の250万セールスに匹敵するといいます。

それに対して、確かにソーシャルは売れているものの、従来のパッケージソフトが低調であることを協会は危惧していると、平井氏は述べています。子どもの頃、待ちに待ったゲームソフトを購入して、自転車で家まで帰るときのあの興奮、それを再体験したいといったノスタルジックな気持ちが強いことを平井氏は認めています。そして実際に、協会ではソーシャルゲームやスマートフォンゲームを大きく扱っていないそうです。また橋本氏も平井氏に賛同し、確かにソーシャルゲームのいいところもあるが、パッケージも見捨てたくないという心情には共感を示しています。

そこで黒川氏は筧氏に昨今のパッケージゲームとオンラインゲームのトレンドについて伺いました。筧氏によると、パッケージにしろオンラインにしろジャンルは多様化していますが、対戦プレイや協力プレイといった形でゲームがコミュニケーションとして機能している点は同じであると説明しました。例えば、昨今のヒットタイトルであるモンスタハンターシリーズなどは、パッケージソフトでありながらも、友達との協力プレイがその楽しみの中心です。また先日、SCEから発売されて話題になっているPSVitaの『SOUL SACRIFICE』なども友達とモンスターを狩るというシステムが引き継がれています。

とはいえ、昨今ではソーシャルゲームに慣れたユーザーが既存のパッケージゲームをプレイするのを億劫に感じているという話を黒川氏は取り上げました。また松原氏は、パッケージソフトは今後、ほとんどなくなり、時代はダウンロードに移行すると予測しております。ユーザーの利便性とメーカーの在庫リスクの負担の軽減から考えると、ダウンロードへの移行は当然の流れだというわけです。

それでも平井氏はパッケージやゲーム機そのものへの魅力は捨てきれないと主張しました。確かにスマートフォンなどでもゲームは遊べますが、ゲーム機を囲んでみんなでワイワイ遊ぶというスタイルが今後も残って欲しいと考えています。それに応えて、黒川氏は任天堂のWiiUやマイクロソフトのKinectなどはその流れに乗っていると指摘しました。また橋本氏もダウンロードへの移行は必然でありますが、CDやレコードがあるのと同様に、パッケージソフトの魅力は残り続けるだろうと述べています。

他方、筧氏は形どうあれ、ゲームを通したコミュニケーションが成立すれば、これまでのゲーム文化は存続するのではないかと指摘しています。そのため、日本ゲームユーザー協会はパッケージだけにこだわらず、ユーザー同士の交流に焦点を当てたらどうだろうかと、提起しました。そこから話題は筧氏が取り組んでいるeスポーツに移りました。

■日本からも世界に選手を!世界的に盛り上げるeスポーツと日本の現状
《今井晋》
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