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【CEDEC 2011】大規模なハイエンドゲーム開発をスクラムで~ディンプスの事例

CEDECの初日、ビジネス&マネジメントセッションの一つとして"アジャイルを飼い馴らせ"というショートセッションが2本実施されました。まずはディンプスの田口昌宏氏と桂卓生氏による「ディンプスによる大規模ハイエンド開発におけるスケーラブルなスクラム導入事例」です。

ゲームビジネス その他
大規模ハイエンド開発におけるスクラム
  • 大規模ハイエンド開発におけるスクラム
  • ディンプス田口氏、桂氏
  • ハイエンド、マルチ、対戦格闘、チームは100名規模
  • スクラムを導入
  • 現場主義による導入
  • 2週間のループ
  • 最終日に振り返り
  • スケジュール管理は当初デジタル
CEDECの初日、ビジネス&マネジメントセッションの一つとして"アジャイルを飼い馴らせ"というショートセッションが2本実施されました。まずはディンプスの田口昌宏氏と桂卓生氏による「ディンプスによる大規模ハイエンド開発におけるスケーラブルなスクラム導入事例」です。

スクラムとは開発工程を2週間程度の期間に区切り反復的に目標設定&レビューを繰り返す開発手法で、ゲーム業界でも導入が始まっています。ディンプスでは未発売の大型タイトル(ちなみにハイエンド機、マルチプラットフォーム、対戦格闘ゲーム)で試験的に導入を始めていて、今回のセッションではその経験が語られました。

まず今回は始めての経験ということもあり、エンジニア(バトル)チームから導入を始めました。チームを担当別に5~9名に分け、2週間毎に目標設定&レビューを行う他、朝会を毎朝15分行い、各人の進捗状況と今後の進行内容を確認します。リーダーとなるプロダクトオーナーはディレクターが着きます。スケジュール管理はMantisやExcelなどデジタルで管理していました。

ある程度の浸透があった所で次にUIチームにも導入が行われます。大部分は踏襲したものの、大きな変更点として、コミュニケーションをより円滑にし管理を簡素化するために、スケジュールのデジタル管理を辞め、紙と付箋紙を用いたタスクボードを導入しました。これにより各人のスケジュールが可視化され、朝会もタスクボードの前で行うようにしたことで、自然とタスクボードが人の集まる場所になっていったそうです。かしこまったミーティングは減り、ラフな話し合いで進む物事が増えたそうです。

効果も徐々に増していきます。2Dアーティストやゲームデザイナーにも導入される一方で、幾つかの新しい取り組みが始まりました。チームの全員で参加して先2週間の作業を洗い出す「プランニング」は過去は管理者が全員分を何日もかかって計画していた手間を劇的に減らしました。またレビューの過程もチーム内で完結するのではなく、他のチームのメンバーも参加できるようにすることでチーム間のコミュニケーションの円滑化が図られました。

キャラクター制作グループでもタスクボードを使って付箋でタスク管理を行い、朝会でのコミュニケーションを強化したところ、各担当パート間での待ち時間の減少という効果があったそうです。

一方でチームが増えたことによる問題点も浮き彫りになります。「別々のチームで同じタスクを行ってしまう」逆に「誰(どのチーム)も手を付けないタスクが生まれてくる」ということです。チーム間を調整する必要が出てきて、プランニングの過程を2階建てとして、前半は代表者のみが参加して全体像を話し合い、後半は各チームで実施してセクション毎を決めるように変更がなされました。

このようにしてディンプスの始めてのスクラムは順調に進んでいるようです。

ただし、全てのセクションで導入されたわけではないようです。背景制作チームは各人のタスクが明確かつ隔絶されている場合が多く、導入は見送られたとのこと。

桂氏は「まずは小さな規模で試してみて、上手く行ったら規模を拡大すればいいし、無理なら辞めればいい」とコメント。チームの一部や、段階的な導入だけでもメリットがあるのではないかと話していました。
《土本学》
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