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JRPG新境地―イメージエポック御影氏が語る・・・中村彰憲「ゲームビジネス新潮流」第16回

JRPG――いつごろから、このような形で日本のRPGが呼ばれる様になったのでしょうか?すくなくとも筆者が米国留学時代、『ファイナルファンタジーVII』のトレイラーを店頭や劇場(!)で見たときは、そのような括りで日本制RPGが捉えられた事はありませんでした。

ゲームビジネス 開発
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―――では、ゲーム業界の未来を示す次のキーワードはなんでしょうか?

多人数ですね。How Toと言う意味では、恐らく完全同期型RPGやアクションゲームというのが一度は通る道だろうと。つまりこれからは「ネットワーク」だと考えたんです。コンシューマゲームとオンラインゲームの流通をうまく共同体に出来れば次世代のオピニオンリーダーになれるということです。09年後半ぐらいからそれについて話していました。当時は、PS3がちょうど盛り上がってきたので、スタッフの多くが「これからはどう見てもPS3でしょう」という声もあがったんですが、PS3で一番面白いのはハードそのものよりは、ネットワークのセッティング率が高いことだと。ここをうまく活用しないとダメだよという話をずっとしてきました。今、ようやく時代のニーズと僕の考え方、そして社員の考え方のマッチングが出来たんです。

そこでイメージエポックがパブリッシャー宣言したときに、アンドロイドもやります、ブラウザーもやります、コンシューマもやります、ただし、コンシューマゲームに完全同期したブラウザー、つまりワンポット戦略でやらせていただきますと発表したんです。この戦略を推進する理由は、21世紀のビジネスは、ワンオンワンではないと思っているからです。日本が、アメリカが、ヨーロッパ―がではなく日本もアメリカもヨーロッパも融合してひとつになるという考え方です。市場がアメーバ式になっていく。そのような中で、ウチとしてはデジタルコンテンツという括りにおける総合エンターテインメントの提携を取り込んでいくという考えを示したんです。モバイルやオンラインをやらないという判断は企業の死活問題になるでしょう。

あと、若い力が今業界には必要なのですが、それが出てこない。僕たちは多くの人材を採用していますが、ほとんどが中途採用者です。まだまだすぐには新卒から頭角を現してリードをするという人が生まれてくることはないでしょう。これがまず危機的状況です。若い人たちも育てられる業界全体のライフサイクルが必要です。ですが、大学で教えている学問も現場と乖離していますし、現場の技術も21世紀にあってないんです。

―――なかなか、シビアですね

こうやってドライに話をしてはいますが、実は僕、ゲーム作るのめちゃくちゃ好きなんです。ゲーム業界に対する愛着も凄まじく感じていてなんとかこの業界を元に戻したいという気持ちがあります。だから、僕は、学問が人にまんべんなく物事を教えることが出来るように、普通の人が分かるゲームビジネスの「教科書」を作りたいと思っているんです。つまり、イメージエポックは大きい会社(※将来成長した際の仮定の話)だけどここはウチでも模倣出来るかもと思われるようになりたいんです。小さな所の話で言えば現時点での弊社の『ルミナスアーク』的ゲーム開発だったり、10万本を売るシステムだったりは他社も真似られますから。そのように日銭を稼ぎ若い人たちが成長していけばいいなと思っています。

―――ではゲーム業界を改めて活性化していきたいと?

ただ、再建は出来ないと考えます。これは経済全体においても東アジア以外のアジアや新興国の台頭と経済のグローバル化にともなく先進国の低迷が叫ばれているのと同じように欧米日市場におけるゲーム業界の低迷する中で日本が7~80年代(ゲームで言うと80~00年)のように急成長するということは無いのではなないかと。ゲーム業界においても。まずこれを前提にして作品づくりに取り組まないとならない。多くの人はこの話を聞いても半信半疑でしょう。でももし、僕が10年以内にこの会社をそこそこの規模にすることが出来れば、「あ、イメージエポックの哲学だよね」となる気がするんです。まずそこにしなくちゃいけない。僕はこの考え方を21世紀序盤のビジネスとして、如何に畑に種をまいておくのかということが僕の40歳になるまでのミッションだと思っています。そこをうまくやることによって、今厳しくなっている中小企業も含めて救えるようなビジネスモデルをゲーム業界に根差したいなと思っています。ただ既存のゲーム業界で標準となっているビジネスモデルは序々に衰退すると思います。これは既存の会社がというより全ての産業がたどる経緯なので。ただ沢山の会社の経営者方々が今まさに立ち上がり始めているので次の「ゲーム」という産業は非常に面白くなるのではないかと期待しています。

―――では、イメージエポックとしての展望は?

これまでの話は、御影良衛のもっている仲間の実力で実現出来ることを話してきました。経営は、夢を語れるポエマー(詩人)と具現者とで成り立っているのですが、イメージエポックの中で僕はその双方の役割を担わなければなりません。これまで語って来たことも30年という人生を賭してやらなければならない課題なんだと思うようになりました。今、僕のやってきたことは、20代で種まき、30代で旗揚げ、そして40代で収穫祭なんだと思っています。結局、自分の人生で種まきが出来るのはせいぜい2回、普通は1回だけだろうなと。このまいた種を20-30年でどう作品として大成するかということが自分が最も関心を持っている課題です。

―――では、いずれはゲーム業界のリーダーになるのが目標なんですね?

う~ん別に僕じゃなくてもいいと思いますが、誰かやらないといけないでしょうね。次世代のリーダー。そもそもゲームって何なのでしょう?世界ではじめて生まれたロールプレイングゲームは人間の脳がプラットフォームでした。Facebookも人の脳から生まれています。「ゲーム」という言葉を使った瞬間、日本人はコンシューマゲームを想像してしまいがちです。欧米の人ならPCゲームだったり、韓国はオンラインゲームだったり-固定観念でゲームを連想しまうと、次の想像が出来なくなってしまうのではないでしょうか?僕たちの社名はその次を考えるために「イメージエポック」としているんです。つまり「想像の新世代」なんです。個人のリーダーというよりリーダーになれる企業が増えて産業が活性化して楽しそうですよね!




JRPG宣言を端緒とした今回のインタビュー。御影氏と話を進めていくうえでその真意は非常い深く、業界全体をも活性化したいという強い志のもとに熟慮したうえで発せられた宣言であるということが明らかになりました。29歳と若い経営者ながら、ここまで真剣に業界やそれを取り巻く世界を見え据えている御影氏のこれからの活躍を心から期待しつつ、イメージエポックのコンシューマやウェブといった領域の垣根を越えた展開に活目していきたいと思います。
《中村彰憲》
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