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【特集】『東方Project』商業・海外展開の裏側、その背景には時代の変化が

ゲームビジネス インディ

【特集】『東方Project』商業・海外展開の裏側、その背景には時代の変化が
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これまでZUN氏の意向で商業展開は一切行われてこなかった『東方Project』。その状況が一気に変わったのがプレイステーションで展開されている「Play,Doujin!」というプロジェクトだ。

元々は『東方Project』作者のZUN氏が協力する形で「ZUN×PlayStation プロジェクト」という名称で始まったこのプロジェクト、現在は『東方Project』以外の同人作品もリリースし、全ての同人ゲームサークルに商業展開の可能性という名の夢と希望を与えてくれる存在となっている。


今回、その仕掛け人の一人で「Play,Doujin!」を取りまとめるメディアスケープの江崎望氏、そして「Play,Doujin!」で作品をリリースしている、CUBETYPEの響谷ゆろ氏@yuropu)、あんかけスパのチヒロ氏@chihiro_zys)、AQUASTYLE のJYUNYA氏@_jyunya)の4人にPlay,Doujin!の可能性や未来への展望などについて語ってもらった。

企画・編集:栗本浩大(@koudai5511
聞き手・文:風のイオナ(
@ionadisco

◆『東方』のオリジナル作品ではなく、二次創作はどうか



左から江崎氏、響谷氏、チヒロ氏、JYUNYA氏

――自己紹介からお願いしてもよろしいでしょうか。

江崎:メディアスケープ代表取締役の江崎と申します。基本的にはサポートで、イベント等の手配を行って、全体のPRをやらせてもらっています。それと『東方Project』全体を扱うテーマやキャラクターアバターを制作して販売をさせてもらっています。


響谷:サークルCUBETYPEの響谷ゆろです。昨年PS4で『幻想の輪舞』を出しました。今は次の新作『東方紅舞闘V』をPS4とPS Vitaで作っているところです。


チヒロ:サークルあんかけスパのチヒロです。サークルでは主にグラフィックを担当しています。2月にPS4で『東方紅輝心』をリリースし、9月20日には北米で海外ローカライズ版がリリースされました。現在は次回作を制作中です。


JYUNYA:サークルAQUASTYLE代表のJYUNYAです。グラフィッカーとディレクターをやっています。昨年6月にPS Vitaで『不思議の幻想郷 -THE TOWER OF DESIRE-』をリリースしまして、現在はPS4とPS Vita向けに最新作『不思議の幻想郷TOD –RELOADED-』を制作しています。北米では『不思議の幻想郷 -THE TOWER OF DESIRE-』の海外版『Touhou Genso Wanderer』が2017年2月にリリース予定です。

――では「Play,Doujin!」についてお聞きしたいんですが、プロジェクト発足のきっかけは何だったのでしょうか。

江崎:元々はオリジナルの同人ゲームを出していこうと始まったプロジェクトなんですけど、ソニーさんから「『東方Project』の二次創作を出すことはできないか」という話がありまして。それでZUNさんに「オフィシャルに公認された形で、『東方』の二次創作を家庭用ハードでリリースできないか」ということを相談したら興味を示してくださって。

――『東方』のオリジナルタイトルではなくて二次創作に目を付けたと。

江崎:ええ。普通であれば、ZUNさん本人に『東方』シリーズを出してくださいって話になるんですけども、あえて二次創作ってところが興味深かったようで乗り気になってくれました。その後はソニーさんともトントン拍子に進んでいきましたね。

――サークルさん側としては『東方』の商業化っていう展開についてはどう思われたのでしょうか。

JYUNYA:僕的には商業うんぬんって部分は特に気にしてないんです。開発も宣伝も全部自分らでやっているので、実際は以前と何も変わらなかったですね。ただ“リリースする場所が変わっただけ”みたいな。もちろんプレイステーションに出せたのが嬉しかったっていうのはありましたね。

チヒロ:PS4で出せるっていう話が出た時に、まさか僕たちのゲームを出せることになるとは想像してなかったですね。お話を頂いて改めて出せるようになったっていうところからは、同人でやっている時と何も変わらなかったです。心境の変化とかはありましたけど。

響谷:同人ゲームを作っている人たちは基本的にゲーム好きなので、「憧れの家庭用ゲーム機で出せる」となったら手を出すしかないなと。PS4の開発環境がパソコンとあまり変わらないし、開発メンバーも一緒なので、実作業は今まで通りでした。「憧れの家庭用なので頑張って出そう」と進めてきて完成したらパッケージまで出来てしまって。素晴らしくて感動もひとしおってところですね。

――AQUASTYLEさんの『不思議の幻想郷 -THE TOWER OF DESIRE-』はPS4ではなくてPS Vitaでリリースしていますね。

JYUNYA:最初はPS4で考えていたんですが、僕自身がパソコンの前でゲームするのがだるくなっていたこともあって、ソニーさんに「PS Vitaでやりたいです」と言ってみたんです。そしたらどっちでもいいよって言われたので、PS Vitaで出すことにしました。けどPS Vitaは色々制限があり、予想していたよりも大変でした。


幻想の輪舞

響谷:うちも次はPS Vita版が出ます。以前ZUNさんと飲みながら話していた時に「シューティングは大画面で座ってやりたい。携帯機じゃ弾避けは無理だよね」っていう話で盛り上がったことがあって、その時はそれで洗脳されてしまって(笑)。なので、PS Vitaは無いなと思っていたんですけど、AQUASTYLEさんの『不思議の幻想郷 -THE TOWER OF DESIRE-』を見たら羨ましくなったので、次はVita版作ろうということになりましたね。

◆CD-ROM頒布は受け入れられなくなってきている



不思議の幻想郷 THE TOWER OF DESIRE

――PCで展開していた同人ゲームを商業の家庭用ハードに持ってくることの一番大きい意味は何でしたか?

江崎:最近はスペックの高いPCを持っているゲーマーや、同人ゲームを取り扱うショップが減り、同人ゲームを頒布する場所がイベントしかないという状態になってきています。それによって遠方のファンとの距離感ができてしまっている。それを打破する可能性の一つとして、家庭用ハードが使えるのであれば、それはいいことじゃないかなと思いまして。

――家庭用ハードでリリースされるソフトであれば全国どこにいても入手できますからね。

江崎:それに今はCD/DVDドライブを搭載していないノートPCも多いですし、そういう方の場合はそもそもCD-ROMというメディアが使えない。じゃあUSBメモリをメディアにしてゲームが頒布できるかというと、そういうわけにもいかないですし。

──同人ゲームをイベントやショップで販売しても、すでに使っているPC自体がそのメディアに対応していないってことは出てきていますね。

江崎:そうなんです。“頒布するメディア自体がユーザーに受け入れられていない”という状況が始まっていて、残った道はスマホか家庭用ゲーム機なんですが、スマホは市場的に厳しい上に機種依存も激しく、実際売るとなってもマーケットプレイスが大手に占領されていて、僕たちのような同人サークルが今から入るのは難しいんです。であれば、まだゲームにお金を払ってくれる人がいる家庭用ゲーム機はまだまだ行いけるんじゃないかと。だから、そこに行くのが自然な流れの様な気がします。最近インディーデベロッパーさんが家庭用ゲーム機でゲームを出しているのも、そういうことだと思うんですね。そこに同人ゲームが入ってきてもそれは不思議じゃないのかなと思っています。


幻想の輪舞

――そういった状況の中で『東方』を始めとする同人ゲームを出せる場所があるなら、どんどん進出していくということですね。

江崎:そうですね。ZUNさんも最近その許容範囲が広がってきていて、その中の一つに同人ゲームの進出も含まれているのかなと。最近はゲームセンターの『東方』プライズの解禁もありましたし、少しずつ『東方』の商業展開が広がってきていて、ZUNさんもそろそろ商業でやってもいいと思っているのかなと思います。

――「Play,Doujin!」という場で商業展開に参加しているサークルさん達へは、どのように声を掛けていっているのでしょうか。

江崎:サークルさんに開発力があって、PS4の開発環境に対応できるかはもちろん、付き合いのあるサークルさんも色々見させてもらいつつ、ソニーさんからの「このタイトルいいんじゃない?」って要望を元に声を掛けさせて頂いたりとかですね。最初に「ZUN×PlayStation プロジェクト」を発表した時のPVに選んだのはAQUASTYLEさん、領域ZEROさん、苺坊主さんの3サークル。その後参加頂いたCUBETYPEさんはフットワークの軽さと新しいことにすぐ挑戦できるということでテーマ化、リリース、メディア化全て一番乗りを果たして頂きました。

JYUNYA:江崎さんから開発力があるってお話がありましたけど、初めてだったので当時は何も考えてなかったんですよ。「とりあえずやってみよう」くらいで。で、ゆっくり開発していたらCUBETYPEさんが後から参加してきて「ウチはもう出すけどそっちはまだなの?」と言われたので、「じゃあ出す、6月には出す!」って。そんな感じでお互い煽り合っているんです(笑)。


響谷:今JYUNYAさんから煽り合っていたって話がありましたけど、お互いマジに煽っていたと思うんで(笑)。そういう意味では良いライバル関係ですね。同じ組織ではないけどいい刺激になるんですよね。サークルは別々だけど「Play,Doujin!」という枠の中で一緒にやっている良い仲間だなと。

江崎:サークルさん同士の繋がりって、企業同士の関係とは違うんですよ。ウチは「同じ看板の下に皆で集まりましょう」というゆるい関係でやっていますし、パブリッシャーの黄昏フロンティアさんとも広告等でお互いキャンペーンを組んでいこうと言っています。企業というよりは同じ「Play,Doujin!」の協力関係ということで、あまり縦割り的なものをせずにやっていますね。実際情報公開に関してはフリーダムというか、専用サイトを内部的に持っていて、内側のコミュニティをしっかり作ってやりとりしています。

――他にはない面白い関係が築けていますよね。ちなみに現在「Play,Doujin!」に参加されているサークルさんはどのくらいなんですか?

江崎:参加表明済みのサークルさんだけで13サークルです(2016年10月現在)。最近は外部から「参加できますか?」ってお話をいただくこともあります。やっぱり機密保持の関係である程度の実績として、同人で完成品1本はリリースしている等の条件はありますが、それに適合するのであれば「やってみましょうか」と割と緩くOKを出しています。その上で、実際できるのであればプロダクトにし、やっぱり難しいということなら今回は白紙に戻しましょうと。そこはもうダメ元で気張らずにチャレンジ頂けるようにしたいんです。ある程度ソニーさんのレギュレーションにも適合するようにとは言っていますが、過度に締め付けないのは一つの方針ですね。

――サークルさんをまとめるという意味では普通の会社組織や団体とも違うわけですが、メディアスケープさんとしてもパブリッシャーとしてやっていくのは初めてだったと思うので、大変だった部分はあったんじゃないでしょうか。

江崎:普通なら難しいのかもしれませんが、全員が同人ゲームという枠の中で育った人間ということもあって、今のところは意思疎通しやすいです。逆に難しさよりは楽しさや、忙しさの中に喜びを感じている状況ですね。


不思議の幻想郷 THE TOWER OF DESIRE

――サークルさん側としては先ほど家庭用ゲーム機向けに商業展開することになっても今までと特に変わりはないという話がありましたが、周辺の状況や気持ち的に変化が出てきた部分があるとしたらどんな部分でしょうか。

JYUNYA:開発だけに絞っていうならば、PCで作って出力する機種が違うだけで作り方は全く変わらないので、いい時代になったなと思います。むしろ、同人PC版にあった「僕のお父さんのPCでやったんですけど動きません」とか、「最新のPCなんだけど動きません」という問合せへのカスタマーサポートがいらなくなったのは変わったというか楽になった点です。PS4やPS Vitaなら全員動くというのが前提なんで。

──同人とは言えユーザー対応は大変そうですもんね(笑)。

JYUNYA:気持ち的な意味では「雑誌で見たよ!」とか、「ニュースサイトで見たよ!」って言われるようになったことですね。マニアックな趣味でしかなかった同人ゲーム制作が露出して、見られて、お店ではPVが流れているって状況を見ると、自分たちが今凄く注目されているんじゃないかって(笑)。日の目を浴びている感じが凄く嬉しくて、モチベーションが上がり、気分が良かったっていう変化はあります。


東方紅輝心

チヒロ:同人では“同人をわかっている方”がゲームを買っていくので、面白い面白くないって感想は全てサークルや作者に直接来るんです。でも「Play,Doujin!」によって『東方』に詳しくない方がプレイすることも増えてきているので、プレッシャーを感じることが出てきました。同人ゲームって「好きなものを作ったから見てくれ!」っていう気持ちで出すんですけど、家庭用ゲーム機で出すことによって「独りよがりじゃなくサービス精神を出していかないといけないな」と気持ち的に変わってきましたね。

響谷:ウチでは新作を出すたびにエゴサーチをするんですけど、同人でPC用に出していた時は年齢層が高かったんです。それに対して家庭用ゲーム機で出した後に色々と調べてみたら、中高校生が凄く増えたなと。濃い層から薄く広くの層まで届くのは、家庭用のいいところだなと思いましたね。

――そういえば現在「Play,Doujin!」に参加されているサークルさんは全て法人化されていませんよね。例えば今後、サークルさんが法人化したとしても「Play,Doujin!」での扱いは変わらず、といった感じでしょうか。

江崎:変わらないと思います。仮に法人化されてもそれは構わないと思っています。「Play,Doujin!」に参加されるタイミングではサークルさんであった方がいいと思いますが、開発する側の思いの方が大事ですね。もし法人化したいというサークルさんが出てきた時は、それをどうやって実現できるかを柔軟に考えられたらと思っています。

――確かにサークルさんだけで実現できないものを、実現するっていうテーマもありますもんね。

江崎:日本における法人システムの関係上、なかなか個人では家庭用に手を出せません。その壁をどう越えるか、ということに対して出した結果が、ウチが代表になるというシステムです。今のところそれで上手く回っていて、今後どう変わるかはありますが、今みんなの作りたいものを大事にするにはこれだというところですね。

《風のイオナ(シティコネクション)》

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