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【インタビュー】インティ・クリエイツ社長が語るクラウドファンディング開発…『Bloodstained』の今後も

『ロックマンゼロ』や『ぎゃる☆がん』、稲船敬二氏の新作として注目を集める『Mighty No. 9』、現在Kickstarterキャンペーン中の『Bloodstained』の開発を担当したインティ・クリエイツの代表取締役社長である會津卓也氏にインタビューを実施しました。

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◆クラウドファンディングによる開発




──新たなチャレンジの1つにクラウドファンディングがあると思うのですが、パブリッシャーからの受託とは感覚が違いますか?

會津:開発という点においては一切変わりありません。クラウドファンディングだからといって締め切りを破ってはいけませんし、クオリティを下げていいわけでもありません。我々はプロフェッショナルとしてクラウドファンディングを行っていますので、集まったお金の中で最適なクオリティ、最適な期間で作るというのは受託と変わらないスタンスです。

大きく違う点としては、クラウドファンディングはバッカーと呼ばれる支援者の皆さんからお金をいただいて作るものなので、バッカーの皆さんに進捗をしっかり報告したり、意見をいただいたりといったコミュニティで開発していくということです。情報をアウトプットして共有することで、自分が投資したお金が正しく使われているとご納得いただくことが大事だと思います。我々が意固地になるのではなくて、「AとBで悩んでいるのだけれどみんなどう思う?」とバッカーの皆さんに共有することで、意見をゲームに取り入れるソーシャル的な要素もありますね。

──設置するゴールの設定や追加などについてはどうお考えですか?

會津:一番重要なのは、達成できないストレッチゴールを設定しないことだと思います。クラウドファンディングでは、プロジェクトの成立条件として設定した最初の金額目標をイニシャルゴール、これを達成した後、追加的な要素や企画を提示して、新たに金額面でのゴールを設定することをストレッチゴールと呼びます。魅力的なストレッチゴールを設定すればたくさんお金はもらえるかもしれません。

でも、もらったお金で設定したストレッチゴールが達成できないというのが一番まずい。昨晩も『Bloodstained』についてミーティングをしており、ストレッチゴールを設定してもすぐにクリアをしてしまう現状について議論をしました。思いつきでゴールを設定してしまってお金が足りない事があってはいけない、一方たくさん取り過ぎてしまっても申し訳ないので、適正なストレッチゴールを適正な位置に入れるということが必要になり協議を重ねますね。

『Mighty No. 9』の時は4億円集まりましたが、集まったお金の全額が開発費に充当できるわけではなく、リワードと言ってバッカーの皆さんに進呈するパッケージやデザイン集など支援額に応じた特典グッズを作るのに全体の25%前後の費用が掛かりますし、運営会社さんへの手数料もあります。その結果、大体集まったお金の6割ぐらいが開発に使えるお金になるのですが、『Mighty No. 9』のように10機種で発売予定だと個々に開発費用が掛かるので予算管理の難易度が高いですね。

──そうしたお金のバランスの取り方は難しいですね。

會津:開発機種が多ければ、その分開発に掛かる費用は機種分増えていきます。例えばオンライン関連は、ハードウェアごとにサーバーの形が違いますので、それに合わせてコーディングやプログラムをしなければいけない。そうなると4機種作る場合、1機種あたりはストレッチゴールで達成したお金の4分の1しか使うことができないので、かなり細かい計算をしてストレッチゴールを設定する必要がありますよね。

──目標の達成によって要素が追加されることを前提に作っていくのですか?

會津:そういうことはありません。これはクラウドファンディングを行うプロジェクトによってコンセプトが違うので変わってくると思いますが、イニシャルゴールを達成した時点でも十分なコンテンツを楽しんでいただけるように設定しています。

ただ、ストレッチゴールを設けることによって、自分の好きなゲームにモードが追加される、敵が追加される、機種が増える──といった、プラスアルファの要素が加わっていくようにしています。我々が作るゲームに何を追加したら面白いだろう、何を追加したらバッカーやファンの皆さんは喜んでくれるだろうかと想像しながら、まだ1も作っていないのにバージョン1.1や1.5を作るつもりでストレッチゴールを設定していっています(笑)。

──日本人の出資率はどのような感じですか?

會津:『Mighty No. 9』『Bloodstained』ともに細かい数字は分からないのですが、日本人はそれほど多くないという話しを聞いています。Kickstarterは、米国で発足し、現在欧米を中心に展開しているプラットホームですので、投資していただける方は、米国とカナダをあわせた北米の方が多くの割合を占めると聞いています。欧州の方々がそれについで多く、中国や中東、オーストラリアや南米の方のバッカーもおりますが、主体としてはやはり北米の方が多くなります。

──『Mighty No. 9』はパッケージ版も販売されますが、Kickstarterのゲームが日本で流通するようなルートはあるのでしょうか?

會津:Kickstarter発のタイトルは、PCゲームの分野で世界最大級のユーザーを擁するSteamで発売されるケースが多いですね。Steamの場合、基本的にはデジタルリリースとなりますが、それにリワードとしてパッケージを付けることもあります。コンソール機で発売する場合はパッケージ販売が基本だと考えがちですが、Kickstarterはインディーズの方が多いので大々的なプロモーションするのは難しい。パッケージの販売をする場合は切っても切れないもので、営業や店舗などの流通が必要になりますからね。


会社として大きな体制を持っていないとパッケージとして売るのは難しいと思います。Kickstarterのプロジェクトとして立ち上がったものは、全てではありませんがデジタルリリースがまず出発点になります。そんな中でも『Mighty No. 9』では、自分たちのゲームをより多くの人に届けることができる、遊んでもらえると考え、パブリッシャーとの提携に踏み切り、パッケージでもリリースするという道を稲船さんが示されました。

──『Mighty No. 9』のKickstarterをやられた中で、苦労されたことなどはありましたか?

會津:『Mighty No. 9』に関しては、あまり大変だったことはありませんでした。稲船さんとのお仕事はずっとやってきていたので今までと変りなく行えました。加えて、バッカーの方々に行程を報告してご意見をいただいて、順調に開発は進みました。苦労したことといえば、各ハードへの移植作業が大変でしたね。弊社はこれまで全世界向け3機種のマルチプラットフォームは開発したことがあったのですが、『Mighty No. 9』は全世界向け10機種と、かつてない規模のものだったので、そういったところでは苦労をしました。

──それだけの機種で展開されるのは、やはり多くの人に遊んで欲しいからなのでしょうか?

會津:そうですね。Kickstarterを行っていると、お金が欲しいからストレッチゴールで機種を増やしましょうということよりも、「このゲーム面白そうだけど僕が持っているハードでは動かない。動くようにして欲しいよ」というまだバッカーになれないけれどなりたい人たちからの要望が来ます。

我々としてもたくさんの人たちに遊んでいただきたいので、出来る限りサポートしたいと考えていて、機種を増やそうとするのですが、増えれば増えるほど開発は難しくなってくる。さらに、そこまでに集めたお金も機種の数で割られてしまう。最初から複数機種で作ることを想定してゴールを設定すればいいのですが、最初は1機種で作りますと提示してある時に機種を増やしてしまうと、今までにバックしてもらったお金じゃ足りなくなってしまうので、機種は計画的に増やす必要があります。遊びたいという人がいればすべての機種で発売をしたいのですが、なかなかそうはいかない。稲船さんは男気ある方なので、議論を重ねた末、全部出そう!ということになりました(笑)。
《まいたこ》
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