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【レポート】稲船敬二やイシイジロウが登壇! 日本発Kickstarterプロジェクトの未来

秋葉原で開催している東京インディーフェス2015。2日目の土曜日には著名なクリエイターによるクラウドファンディングに関するワークショップが行われました。

ゲームビジネス 開発
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秋葉原で開催している東京インディーフェス2015。2日目の土曜日には著名なクリエイターによるクラウドファンディングに関するワークショップが行われました。

登壇者は以下の3名。Nudemakerの河野一二三氏は『鉄騎』や『クロックタワー』で有名なクリエイター。先日、『クロックタワー』の精神的続編『Night Cry』のクラウドファンディングを国内外で行い、資金調達に成功しました。Comceptの稲船敬二氏は言わずと知れた元カプコンの名物クリエイター。2013年にKickstarterで『Mighty No. 9』のクラウドファンディングを開始。日本人としては初の大型資金調達に成功。『Mighty No. 9』は9月についに発売が決定しています。



イシイジロウ氏はチュンソフトやレベルファイブでアドベンチャーゲームの開発に携わってきたクリエイター。昨年、フリーランスとなり、原作を提供したアニメ『Under The Dog』のKickstarterでのクラウドファンディングに関わりました。87万ドルというアニメ史上最大の資金調達に成功しています。

◆見積もりの難しさと発売日延期という問題




最初の話題はクラウドファンディングのメリットとデメリット。登壇者の3名はKickstarterで大型の資金調達に成功しているため、そのメリットが強調されると思わましたが、そうでもないようです。稲船氏によると成功した人が集まると「みんな愚痴っぽくなる」とのこと。お金が集まること自体は良いものの、そのプレッシャーや責任感は非常に重いそうです。

クラウドファンディングの魅力はクリエーターとユーザーの直接のつながりですが、実際に集まったお金はすべてクリエイティブのために使えるわけではありません。商品のプレス、リワードの製作、配送、それらすべてをまかなう必要があります。ディレクター出身のイシイ氏はそれらの計算には慣れていなかったため、苦労したと振り返っています。そして、クラウドファンディングでは単なるデータを納品するプロダクションではなく、製作、発送を行うメーカーとして動かなければならないと指摘しました。

またクラウドファンディング利用時に発売日が伸びてしまう理由について説明されました。ゲーム開発が延期することはインディーでも大手でも珍しくありません。しかしながら、インディーでは延期した分を人海戦術で取り戻すことはなかなかできません。そのため、進捗の様子を大手以上に丁寧に方向し、企画が頓挫していないことを常に説明する必要があると、稲船氏は述べています。

イシイ氏の『Under The Dog』もキャンペーン中は今年中に発送する予定でしたが、来年の春に延期しました。シナリオは完成しており、絵コンテも25%まで進んでおり、今年の夏に新しいPVを公開予定。年内に声優の吹き込みが行われ、ようやく完成する予定です。日本のアニメプロジェクトということで、海外からは期待されている作品。その信頼を裏切らないため、しっかりとしたスケジューリングをする必要があると、振り返っています。

他方、河野氏の『Night Cry』では最初から少人数体制でスタート。予算規模も少ないため、時間をかけず、今年の年末には発売する予定です。予算規模がスケールするのがクラウドファンディングの魅力のひとつです。しかしながら、プロジェクトが大規模になるよりも、ある程度の予算内で開発した方が苦労は少ないようです。

◆ユーザーとのつながりという最大のメリット




次にクラウドファンディングでのメリットに触れられました。稲船氏は銀行でお金を借りるのとクラウドファンディングで資金調達するのはそもそも性質が違うと主張。実際に『Mighty No. 9』は銀行からの資金でも開発できたかもしれないが、クラウドファンディングのお金には遊びたいというユーザーの思いが詰まっていると述べています。そして稲船氏にとっては、その思いはプレッシャーにはならず、自分の作りたいものを作っていいんだという後押しにほかならないといいます。

会社で銀行からお金を借りて作るときは、様々な理由から作りたくないものを作ることもあります。しかしながら、クラウドファンディングは作りたいものを作るというまさにインディーの本質を目指した仕組みだと稲船氏は考えています。もちろん、カプコンで『鉄騎』を作った河野氏や『デッドライジング』を作った稲船氏も作りたいものを作っていたわけですが、現在の状況ではそういった企画は通りにくいといいます。そのため、クラウドファンディングでユーザーから直接支援を集めることで、自分の作りたいものが作れます。これが一番のクラウドファンディングのメリットだと稲船氏は説明します。

またイシイ氏はアニメ業界はどちらかというとBtoBで動いているのに対して、クラウドファンディングでは直接お客さんと向き合えるのがうれしかったと振り返っています。アニメ制作会社はユーザーから直接お金をもらうというよりも、放送局やビデオメーカーからの受託によって成り立っています。クラウドファンディングを通したユーザーとの直接のやりとりは、アニメ制作会社にとっても理想的なものになりうると考えています。

◆意外に大変なリワードの制作




最後にクラウドファンディングを利用する際の注意すべきポイントについて触れられました。稲船氏はとにかくリワードの制作が大変だと述べています。中でも『Mighty No. 9』の直筆サイン入りアートブックには3000以上の支援者が出資。稲船氏は現在、毎日100以上のサインを描いていますが、まだまだ終りが見えないそうです。さらに高額出資者には『Mighty No. 9』の主人公ベックのイラストが添えられます。こちらも一日10枚のペースで描きつづけていますが、描きなれたロックマンと違って集中力がなかなか持たないそうです。いずれにせよ、お手製のリワードの制作期間は見積もりが難しいため、今後、クラウドファンディングを利用する方は注意が必要でしょう。

イシイ氏もリワードの設定に関する注意点を指摘しました。特に危険なのは、お金を集めている他のプロジェクトのリワードを真似すること。というのはそのプロジェクトがリワードのための費用を試算しているかわからないため、真似をした結果、リワード分の予算が破綻することもあります。画集やフィギュアといった物の見積もりも慎重に行うべきで、実際、『Under The Dog』ではフィギュアの値段設定に関して支援者から疑問の声が上がったそうです。現在、それらのリワードの見積もりは再検討された結果、しっかりと支援者に発送できるようにはなっているそうです。

また河野氏は何よりも集まったお金の分配ルールをはっきり決めておくことが重要だと指摘しました。200万程度のお金でも、その分配でもめることはあるそうです。そのため、資金調達を始める前に、お金の管理を考えることは必須だといいます。

◆日本発のプロジェクトとしての責任感




最後にKickstarterにおける日本発の企画としての意気込みと責任感が語られました。河野氏は日本発の企画が2つくらい頓挫したら誰も出資しなくなると海外のメディアが考えていることを指摘しています。そのため、日本代表としても背負うものは大きいと考えています。同じくイシイ氏も対海外で企画を行うと日本代表として扱われると述べています。そのため、チームジャパンとして日本のインディーは協力しながらやっていく必要があると考えています。

最後に稲船氏はインディーゲームの先頭として走っているため、自分がコケると後が続かないという勝手な責任感を背負っていると述べました。『Mighty No. 9』だけではなく、また違った自分の好きな作品をやるためにも必ず成功させなければいけないと意気込みを語りました。

記事提供元: Game*Spark
《Game*Spark》
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