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【GDC 2013 報告会】試行錯誤やインタラクションで「学習」するAI・・・三宅陽一郎氏

国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)は4月13日に毎年恒例となっているGDC2013報告会を開催。株式会社スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部にてリードAIリサーチャーを務めるスクウェアの三宅陽一郎氏が報告を行いました。

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国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)は4月13日に毎年恒例となっているGDC2013報告会を開催。株式会社スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部にてリードAIリサーチャーを務めるスクウェアの三宅陽一郎氏が報告を行いました。

東京大学工学系研究科の博士課程出身という日本のゲーム業界では異例の肩書きを持つ三宅陽一郎氏は、IGDA日本にてSIG-AI世話人を務めるなど、ゲームにおけるAIの応用に関するスペシャリストです。今回の報告ではGDCで行われたゲームデザインとAIに関するセッションが扱われました。

■ゲームデザインのための「マキネーション・ツール」とは

最初に報告されたセッションはIGDAの創設者でもあるアーネスト・アダムス氏の「Introducing Machninations」です。「マキネーション」というゲームデザインのための新しいツールを紹介するものであり、IGDA日本の公認本である『ゲームメカニクス』においても触れられています。アダムス氏は三宅氏の友人であるそうで、Facebook上でも交流しており、今回の著作とマキネーション・ツールに関しても日本のユーザー向けのコメントが紹介されました。

マキネーション・ツールの説明は、三宅氏に代わり、アルテピアッツァ株式会社永木英彦氏が行いました。マキネーションはゲームデザインにおけるリソースがどう動くかを視覚的に把握できるツールであり、ゲームデザインのプロトタイピングに非常に有効だといいます。永木氏は実際にマキネーション・ツールを動かすデモンストレーションを行いました。

マキネーション・ツールでは、フローチャートのようなGUIを操作することで、お金や食料、モンスターといったようなゲームの中で動く変数を付け加えたり、調整したりできます。これにより仕様書といったドキュメントに頼るよりも、分かりやすい形でゲームデザインの提示が可能だといいます。リソースがゲームの中で流通するモデルを視覚化できるため、RTSのようなゲームとの相性が比較的良く、永木氏は『エイジ オブ エンパイア』のゲームデザインを実際にマキネーション・ツールに落とし込んだものを見せてくれました。

RTSに限らずFPSのようなアクションゲームでも、弾薬、敵などをリソースとして、戦闘状態になった時の死亡率の判定を加えることでゲーム全体のデザインが把握できるそうです。例えば、マキネーション・ツールを動かして敵の量が極端に下降する傾向にあるならば、弾薬の数を減らすことでゲームバランスを調整するといったチューニングが容易に行なえるということです。

以上、マキネーション・ツールをまとめて、永木氏は最初の導入に時間がかかるものの、マキネーションについての知識がなくても、視覚化されたモデルは誰でも理解できるため、ゲームデザインやメカニクスの把握と説明に非常に有用だと述べています。

■『シムシティ』のゲームデザインとAI研究の展望

次に報告は三宅氏に戻りました。『Diablo III』などでリードデザイナーを務めたStone Librande氏の「Simulating a City, One Page at a Time」というセッションでは、『シムシティ』に関するゲームデザインのメカニズムをポスターで提示されたそうです。このシンプルで一覧性の高い手法は、ゲームデザインの仕様を理解するというよりも、プロジェクト全体のビジョンをチームで共有するために用いたそうです。『シムシティ』に登場するリソース、モジュール、エージェント、パス、ユニット、そしてそれらの動作原理が一目で分かるようにデザインされているそうです。

また本作で使用されたGlassBoxというゲームエンジンについても紹介されました。このエンジンは、ルールをデータ・ドリブンに定義することで、上記のポスターで示されたようなリソースやユニット、マップを加えていくだけでゲームが完成するというもの。Maxisのリードデザイナー、Dan Moskowitzによる「Exploring SimCity」というセッションで紹介されたようです。

GDCのAI Summitでは、これまでの復習となるセッションが続いており、ゲームにおけるAIの応用が既にAAAタイトルで使われているとのことです。その中では「学習」という新しいアプローチが出現しています。

AIにおける「学習」とは、その名の通り、AIが試行錯誤やインタラクションを積み重ねて新たな知識と行動を獲得することです。実際にアカデミックなAIの研究の領域では、学習がメインストリームの課題であるそうです。そのため、現在、アカデミックなAI研究とゲーム産業のAI実装の垣根は壊れつつあり、業界をまたいだ取り組みが行われる可能性があるといいます。

大学院出身の三宅氏自身もそのような潮流のまっただ中にいる人物とみなすことができ、今後のAI研究における産学連携などに期待が集まります。さらに次世代のAI技術は単なるコンテンツとして利用されるだけではなく、データベース制作やゲーム制作全体の技術として応用される可能性があると、三宅氏は指摘しています。
《今井晋》
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