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成熟する日本のゲーム開発者コミュニティ・・・CEDECとDiGRA JAPANとIGDA日本、3者の方向性と役割の違いをキーマン三人が語る

ゲームビジネス 人材

左から小野氏、斎藤氏、遠藤氏
  • 左から小野氏、斎藤氏、遠藤氏
  • スクウェア・エニックス テクノロジー推進部に所属する三宅陽一郎氏
  • バンダイナムコスタジオに所属し、CEDECの実行委員会委員長の斎藤直宏氏
  • モバイル&ゲームスタジオ会長で日本デジタルゲーム学会で研究委員会の委員長を務める遠藤雅伸氏。『ゼビウス』の生みの親としても知られる
  • IGDA日本代表の小野憲史氏。フリージャーナリスト。
―――研究者と開発者のコラボレーションはありますか?

遠藤: 現状だとちょっと難しいね。お互いに時間軸の感覚が共有できていない。開発者が1年かけてやるところを、研究者が3年かけてやったり。これがソーシャルゲームとかだと3ヶ月かな。

斎藤: 産学連携などをすると、痛感しますね。僕らはプロジェクトベースが基本なので、いま自分たちが作っているタイトルに向けた技術が欲しいわけですよ。ところが研究室で研究されている技術は、そこまで汎用性がなかったりします。そこで実装に合わせた修正をお願いすると、「1年かかります」とか。僕らとしては、多少ゴマカシでもいいから早く実装したいんだけど。

遠藤: 学会で発表するからには、その研究に裏打ちが必要じゃない? そこが一番の違いかなって。

斎藤: 一方で自分たちの研究成果が製品に応用されたら実績になるので、そこは研究者にとっても、関心が高いところだと思いますが・・・。

―――研究者と開発者のスケール感の違いが改めて浮き彫りになりましたが、今後両者がコラボレーションしていくコツなどはあるでしょうか?

遠藤: たとえば今なら「感覚間相互作用」(知覚のメカニズムを行動心理学の立場から究明していく学問)などの研究分野が、徐々にゲーム開発にも応用されつつあるよね。ああいった基礎研究はゲーム会社単独ではなかなかできないので、狙い目だと思う。

斎藤: そうなんですよね。学の方は産ではできないような、突飛な研究をいっぱいやってくれるので、そこは期待したいですよね。

遠藤: そうそう。ホントに突飛な研究分野から、ゲームに使えるものが突然出てきたりするので。よく研究者から「じゃあ、どんな研究が産業側で必要なのか、教えてください」と言われるし、それもあって「CESAゲーム開発技術ロードマップ」を毎年アップデートしているけど、本音を言えばそれ以外の、ホントに突飛なものを期待しているんだよ。

―――DiGRA JAPANでも、そうした研究の受け皿になっていくのですか?

遠藤: DiGRA JAPANに変な研究が、いっぱい集まってくるのは確かなので。その中から「ホントにこれはすごい」というような研究は、やっぱり応用されていくと思う。

―――CEDECにも学術系の方が参加されていますか?

斎藤: そうですね。聴講者だけでなく、講演者としても公募いただいています。特にインタラクティブセッションなどは、すごく多いですね。また「Co-Located Event」というイベントも開催しています。これはコンピュータエンタテインメント開発の周辺分野にある団体に一日、ワントラックお貸しして、いろいろ講演や発表を行ってもらうものです。そこでは研究者の方々もたくさん講演されています。

―――IGDA日本と学術というのは、どのように関係しているんですか?

小野: IGDA日本と学術系の結び付きは、人材育成が中心になっていますね。たとえばGlobalGameJam(GGJ)では古くから東京工科大学の三上浩司先生に会場から運営までお世話になっていますし、今年の福島GameJamでは高校生向けのワークショップで、実際に南相馬市の学校で集中講義をしていただきました。また実施には南相馬市の市役所や教育委員会の方々にご協力いただくなど、産官学連携が実現できました。このほかIGDA日本のコアメンバーで、青山学院大学の山根信二が福島GameJamをテーマに論文を書いて、国内外の学会で発表もしています。

遠藤: GameJamはおもしろい試みだよね。そして、CEDECやDiGRA JAPANでは、絶対にできないと思う。まずGameJamは研究ではないし、プロのゲーム開発者が直接、切磋琢磨する場所ではない思う。だけど、開発者の成長という要素を考えると、良いと思うんだよね。

小野: 今年のCEDECでも「GGJからプロが学んだこと」というセッションを開催しましたが、GGJはプログラムやゲームデザインといった個々のスキルではなくて、総体としてのゲーム開発体験が得られる点でユニークなんですよね。特にプロの開発者にとっては、リーダー研修などにも向いているかもしれません。

■GDCとCEDEC、DiGRAとDiGRA JAPAN、そしてIGDAとIGDA日本

―――自分がGGJに参加して思ったのは、すごく世界と繋がっている感じがしたことです。各団体とも海外との結び付きがありますが、日本と海外とのゲームシーンの違いなどを感じることはありますか?

斎藤: CEDECとGDCは外側から見るとよく似ているけど、参加している人の意識は違うように思うんですよ。情報共有やコミュニティとった要素は同じだけど、向こうの人たちは自分のアピールや転職といったことを考えながら参加しているかもしれない。CEDECの場合は、どちらかというとボランティア精神が強い感じがします。他の人にこの技術を学んで欲しいし、逆に自分たちも他の技術を学びたいし、もっとみんなでレベルを高めていきましょうよ、という。

―――どちらが良いというわけでもなく・・・

斎藤: うん、日本とアメリカの、開発者としての生き様だったり、会社と人の関係などの違いが、それぞれの性格を形作っている気がします。まあ、あくまで主観なんですが。

―――GDCとCEDECで連携はとられていますか?

斎藤: いちおう毎年契約を行っていて、相互に告知しあうなど、さまざまな協力を行っています。ただ国際化について、そこまで力を注げていないんですよ。もちろんインターナショナルなセッションもあるけど、海外に発信するのは、ほとんどできてないんです。また海外からの公募もほとんどありません。どちらかといと鎖国状態が続いています。

小野: 海外ではCEDECと言っても誰も知らないので、もう少し国際性が欲しいなと思います。

斎藤: 国際性って何でしょう? 講演を同時通訳することが国際性じゃないですよね?

遠藤: たとえば、CEDECでアンケートの結果が良かった講演を、GDCに持っていけばいいんじゃない? 逆にGDCで評価の高かった講演を招待するとか。

―――昔はそういう仕組みもあったんですが、最近はGDC側から見たときの、日本の講演クオリティが下がっていて、なかなか呼ばれないというのが実情ですよね。

斎藤: 確かに以前はありましたよね。そういう話をGDC側としたこともありますが、もっと継続的にやらないとだめですね。それをするとCEDECの宣伝にもなりますし。海外に向けた情報発信は重要だと思っています。

遠藤: 逆にCEDECの海外講演者のセッションで、すごい内容なのに、会場ががらがらだったりすることがあるんだよね。あれは寂しいし、もったいないと思う。

小野: 聴講者からすると、企業の代表で参加するので、直接業務に関係ないセッションに気軽に参加できない事情もあると思うんですよ。だからといって、そういうセッションをなくすのではなくて、そうしたセッションが想定している聴講者に、どんどん参加してもらって、聴講者の多様性を増していきたいですよね。

遠藤: そのあたり、せっかくCEDECは3日間あるんだから、うまいメリハリと見せ方が必要だと思うんだよね。たとえばビジネス系セッションだけで1トラックとって、サミット形式にするとか。今年は『GRAVITY DAYS』に関する複数セッションで1日1トラックとっていたけど、あれは「GRAVITY DAYSデイ」と打ち出しても良かったと思う。

で、話を戻すと国際化だよね。DiGRA JAPANにはDiGRAに対する日本での活動という意味合いもあるんだけど、2007年にDiGRAの東京大会を行ってからは、なかなか連携がとれていないのが実情で、そこはきちんと進めていかなくちゃいけない。また国内のゲームに関係する学会との連携も、海外から日本の研究シーンがどのように見られているのか、という点を意識しながら進めることが大事だよね。

―――本来であれば国内の論文も海外の論文も平等に扱わないといけませんね。

遠藤: その通り。でも世界では日本語で書かれた論文は、それだけで読まれないよね。逆に日本で研究発表大会を行うのに、英語で論文を書くのも・・・という話になる。またDiGRA JAPANでは2010年から年次大会を始めて、今年度は九州大学で開催することが決定しているんだけど、場所選びにも他学会との兼ね合いが必要な場合があったり・・・。そういうのじゃなくて、もっとオープンにしていきたよね。

小野: IGDA日本の国際化における最大の問題は、アメリカとそれ以外の地域で、さまざまな違いがあることですね。大前提として、国際NPO団体の法律って、あるようでないんです。だって国ごとに根底となるNPO法が、それぞれ違いますから。そのため国際的に活動しているNPO団体は、それぞれ法律とは別の内規を作って運用しています。IGDAでは、まだそこのレベルに達していないんですよ。

たとえばIGDAにはIGDAの会員権がありますが、日本でお金を払って会員になったとしても、日本支部に予算が下りてくるわけではありません。これは他の国でも同じ、もっといえばアメリカにある各支部でも同じで、基本的に支部は独立採算制で活動しています。一方でIGDA日本はNPO化を契機に、独自に会員システムを整備していくので、このすりあわせが課題になっていきます。

■意外と簡単な各団体への参加方法
《土本学》

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