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成熟する日本のゲーム開発者コミュニティ・・・CEDECとDiGRA JAPANとIGDA日本、3者の方向性と役割の違いをキーマン三人が語る

ゲームビジネス 人材

左から小野氏、斎藤氏、遠藤氏
  • 左から小野氏、斎藤氏、遠藤氏
  • スクウェア・エニックス テクノロジー推進部に所属する三宅陽一郎氏
  • バンダイナムコスタジオに所属し、CEDECの実行委員会委員長の斎藤直宏氏
  • モバイル&ゲームスタジオ会長で日本デジタルゲーム学会で研究委員会の委員長を務める遠藤雅伸氏。『ゼビウス』の生みの親としても知られる
  • IGDA日本代表の小野憲史氏。フリージャーナリスト。
―――ありがとうございます。では、もう少しかみくだいて、各団体の活動内容や対象者についてご説明願えますでしょうか。今度はDiGRA JAPANからお願いします。

遠藤: DiGRA JAPANは学会なので、主たる対象者はデジタルゲームを研究する研究者。それも、できるだけ多くの研究者に門戸を開いて、他の学会では、なかなか論文を発表する機会のない研究者の受け皿になることを目的としています。

たとえば、これまでもデジタルゲームの研究は情報処理学会や日本シミュレーション&ゲーミング学会などがあったけど、これらは自然科学的な領域が対象だったんだよね。しかし、DiGRA JAPANでは自然科学だけでなく、ゲームを文化・現象面で捉えるなど、社会科学的な領域にまで拡大して捉えています。他にもゲームの領域が広がるにつれて、メディアアートなども対象になってきた。

また研究活動・論文投稿だけでなく、 これまで日本のゲーム業界に何が起きたか、きちんと記録していくことも、大きな目的に掲げているんだよ。「それに何の意味があるの?」じゃなくて、ちゃんと文書化して、後の研究者が引用可能な状態にして、積み上げていくことが大事。過去にも公開講座で高橋名人の「名人」としての活動記録や、小島監督や桜井政博さんのゲームデザイン哲学などを話してもらったりしました。

斎藤: CEDECはCESAという業界団体が、業界の発展のために主催しているので、主たる対象者はプロのゲーム開発者ですね。プロがプロのために情報を発信して、コミュニケーションを図る場です。もっとも、ここでいう開発者とは、単にディベロッパーだけでなく、パブリッシャーも含めた、広い意味での業界関係者として捉えています。だからゲームを作るだけじゃなくて、ゲームの情報を発信したり、販売したり、ビジネスとして会社を経営したり、といった講演も対象です。また講演者や参加者は「企業」の看板を背負って参加されているのが特徴です。

小野: IGDA日本が対象とするのは、より広い意味での「開発者」ですね。また、もともと草の根の活動から始まっているので、企業ではなくて、開発者個人を対象としています。そのためプロもアマチュアも研究者も学生も、自分たちが「ゲーム開発者である」と自覚すれば、すべて対象者です。これは日本だけでなく、IGDA全体で共有されている概念です。

またNPOというのは、もともと「社会的ニーズがあるが、さまざまな理由で、誰も実行できないこと」を行うことに存在意義があります。そのため活動もセミナーやイベントだけに留まりません。たとえばCEDECでラウンドテーブルのモデレータや、DiGRA JAPANで運営ボランティアが不足していれば、参加して手伝ったりしています。僕もDiGRA JAPANの公開講座では、何度かお手伝いさせていただきました。

斎藤: まずは、そこからなんだ。

―――団体ごとにメンバーが帰属しているというよりは、それぞれの場があって、そこにいろんな人が、いろんな形で係わっているというイメージでしょうか。

遠藤: そうですね。けっきょく「場」ありきですから。

小野: 一人の人間には、いろんな社会的な「顔」があります。そのため各団体に、いろんな形でかかわるというのは、自然な流れだと思います。

斎藤: 三宅さんも三団体すべてで活動されていますよね。他にもコアメンバーがけっこう重複しているところがあります。

■徐々に広がってきた各団体のミッション

―――確かに人が重複しているところはありますが、一方で各団体のコンセプトやミッションは違いますよね。それぞれの団体のミッションについて、「これまで」と「これから」について教えてください。

斎藤: ゲームの定義がどんどん変わってきているし、ゲームにもさまざまな技術が用いられていますよね。なのでゲームがゲームに閉じこまらずに、広い視野を持ち続ける限り、さまざまな産業の技術が集まってくるはずです。そこでさまざまなコミュニティが生まれて、ひるがえって新しいエンタテインメントが生まれると良いなあと思います。

だからアニメーションだったり、CGだったり、メディアアートだったり、それから最近では出版も大きいですね。そういった分野と、どんどん混ざっていく感じです。その中でも先ほど話したように、プロの専門家が話すので、そこで知見や人材が混ざっていって欲しいと思います。

小野: IGDA日本を立ち上げたのは新なので、僕が勝手なことを言うと誤解を招きかねないんですが、発足当初は「何かスカっとする、おもしろいことをしたい」という思いが、みんなの中で強かったのではないかと思います。それが活動を継続していく中で、本当に自分たちがやりたいことは何かを、改めて考えるようになってきました。

また先ほど斎藤さんが言われたように、ゲームの定義が広がっていく中で、シリアスゲームやゲーミフィケーション、それから福島GameJamのように、さまざまな形で社会にゲームが貢献できるようになってきました。今年から公立中学校の技術家庭科でプログラミングが必修科目にもなりましたよね。こんな風に、これからゲームが産業を超えて、より一般社会に溶け込んでいきます。そんな中で、もっと自分たちも役に立てることがあるんじゃないか、最近はそんな風に考えるようになりました。

―――どちらの団体も、ゲームの定義が拡大していく中で、もともとのミッションも広がりを見せてきたということですね。

小野: そうですね。いま話を伺っていて思ったのは、それをCEDECは産業界であり、プロのサイドから見ている。一方でIGDA日本は草の根的に、一人のゲーム開発者という視点から見ているのかな、という印象を受けました。

遠藤: IGDA日本はまた、勉強会や情報共有といった活動が非常に熱心だよね。GDC報告会などは、たぶんCEDECでもDiGRA JAPANでもできない。

―――同じように、ゲームの定義の広がりがDiGRA JAPANに与えた影響はありますか?

遠藤: 海外と違って、日本では大学に「ゲーム学部」がほとんどないんですよ。だからゲームを学術として研究したい研究者は、まず自分たちが所属する研究領域があって、そこを足場にゲーム研究に切り込んでいくのが主流。その時、研究者が何にゲームをアプライしていくのかというのが、ゲーミフィケーションを含めて、どんどん広がっているよね。そういう意味ではいろんなものが、どんどん出てきているかな。

たとえば夏期研究大会でおもしろかった講演に、芝浦工業大学の小山友介先生による「ソーシャルゲームの行動経済学的解釈」というのがあった。1つのゲームタイトルから売上を最大化するための方法に関して述べたものなんだけど、あんまりおもしろかったんでブログに書いたくらい。これなどはDiGRA JAPANならではの講演かなと思うよ。

―――学会というとゲーム開発者からは敷居が高いように感じますが・・・。

遠藤: DiGRA JAPANはどちらかというと、産業界に開かれた学会という意味合いが強いので、研究者以外でも、普通に参加してもらって全然OKです。一方、これまで発表の場が全然なかった研究者でも、DiGRA JAPANなら発表できるということで、わざわざ来てくれるようになってきた。

特に京都で開催した2011年度の年次大会で、急にレベルが上がったんだよ。最初の講演でいきなり「科学のルールをゲームに:創造科学アドベンチャーゲームの開発研究」という講演があった。あれは、既存のシリアスゲームの批評的な意味合いも含まれていて、その時に「こういうのが出てこないと駄目だ」と思ったんだ。

小野: 東京大学大学院の浅見智子さんの講演ですね。天動説と地動説の議論をテーマにした「それでも地球は回る」というシリアスゲームを自分で開発し、それをもとに調査を行われて、論文にまとめられました。

遠藤: そうそう。彼女自身、もともとプロのゲーム開発者で、それが一度大学院に移ってシリアスゲームの研究をしたという背景があるんだよね。同じように、CEDEC2012でも「ユーザーに中二キャラクターとしての認知に成功したアニメーション・メソッド ~ゴッドイーターから贈るフィジカル中二論~」という講演があったんだけど、あの「中二病」に関する分析は、すごくおもしろかった。ああいった内容なら、DiGRA JAPANでも大歓迎だね。

■活動の「積み重ね」で見えてくるもの
《土本学》

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