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令和に新作ファミコンカセットを自作!その知られざるテクニック&80年代カルチャーを「桃井はるこ」「なぞなぞ鈴木」らが語る【インタビュー】

「むっく」さん、「なぞなぞ鈴木」さん、「桃井はるこ」さん、「永野希」さんにインタビュー!オリジナル新作ファミコンゲームを、カセット込みで自作するという、驚きのプロジェクトの内容のみならず、ファミコンゲーム開発の意外な難しさやノウハウにも迫ります!

ゲームビジネス インディ
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オリジナルの新作ファミコンゲームを開発し、さらにカセットまで自作する!

声優番組『ちょうみりょうぱーてぃー』にて、そんなクラウドファンディング企画が始動したのが2021年5月。目標金額を150万円に設定していた同プロジェクトは、最終的にはその金額を優に超え、2倍以上となる350万円近くの支持を集めました。

そうしてマンガ家「むっく」さんを中心に、開発が始まったオリジナルファミコンゲーム。こちらには“元祖アキバ系女王”の「桃井はるこ」さんほか、ゲーム音楽家「なぞなぞ鈴木」さんが30年ぶりにファミコンサウンドに関わるなど、そもそもの主旨のみならず、クリエイター陣もゲームファンにとって大変注目なプロジェクトとなっています。

「どうやってファミコンカセットを自作したのか?」「ファミコン音楽の意外な難しさとは?」「30年前のファミコンゲーム開発現場の実態とは?」……そんなファミコン開発の裏話から、8bit音源にまつわるゲーム音楽トークまで。先述の3名に加わり、シンガーソングライターで番組出演者の「永野希」さんの4名へ実施したインタビューの様子をお届けします。

【インタビュー参加者 ※敬称略】

  • むっく……マンガ家。『ちょうみりょうぱーてぃー』ではツイッター掲載用の4コママンガを担当。ファミコン化企画では、ゲーム開発、カセット製作などすべての作業をこなす。

  • なぞなぞ鈴木……コナミとトレジャーで活躍したゲーム音楽家で、現在は桃井はるこ、永野希が所属する株式会社ライト・ゲージの社長を務める。

  • 桃井はるこ……声優、シンガーソングライター、マルチクリエイター。「ちょうみりょうぱーてぃー」ではゲストキャラクター「シナモン」を担当。

  • 永野希……シンガーソングライター・女優・マルチクリエイター。「ちょうみりょうぱーてぃー」のレギュラーキャラクター「しょうゆ」を担当。元「Little Non」のボーカル。

【『ちょうみりょうぱーてぃー』とは】

「調味料を擬人化する」というコンセプトのもと、声優・吉成由貴が発案した3人の擬人化キャラクター「マヨネーズ(CV:吉成由貴)」「ケチャップ(CV:藤川茜)」「しょうゆ(CV:永野希)」が活躍するプロジェクト。番組ではトークあり、対決企画ありのバラエティ豊かなコーナーを繰り広げる。2018年より楽天TVと響ラジオステーションにて配信中。

▲『ちょうみりょうぱーてぃー』番組収録風景。左より藤川茜さん、吉成由貴さん、永野希さん。番組内では実際にメンバーがゲームをプレイした。

◆まずは実際にファミコンカセットを自作したことについて、製作秘話やファミコンカセットの意外な秘密に迫る!

――「令和の時代にファミコンゲームをカセットごと自作する」というインパクトのある企画ですが、どのような経緯でスタートしたのですか?

むっくもともと同人活動の一環としてオリジナルのファミコンカセット『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』を自作していたんです。それで『ちょうみりょうぱーてぃー(以下、ちょみぱ)』の公式4コママンガの担当を打診された時に、雑談の中で「ちょみぱのファミコンゲームを作ったら面白いですね」と提案しました。

永野『ちょみぱ』のメンバーがこの企画について知ったのは、2019年9月に秋葉原で開催した公開収録イベント の時でした。サプライズ発表だったので、私もなりちゃん(吉成由貴)も茜ちゃん(藤川茜)も本当に驚きましたね。令和の時代にまさかのファミコンカセットですよ! イベントではモモーイ(桃井はるこ)が楽曲制作として参加することも発表されたのですが、モモーイと鈴木さん(なぞなぞ鈴木)には先に話が行っていたみたいですね。

▲ゲーム『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』。「とらのあな」にて販売中。
▲『ちょうみりょうぱーてぃー』のファミコンカセット。上段がパッケージ、下段左が通常カセット、右が金メッキバージョン。

――イベントでは、多少、形になったものが公開されていましたよね。そもそもむっく先生はなぜファミコンカセットの自作をはじめたのですか?

むっく一時期、昭和レトロ玩具を自作できないか考えて、まずビックリマンシールから着手しました。それからファミコンカセットまで至ったのは、マンガ家のRIKI先生が『キラキラスターナイトDX』を自作していたり、海外でNES(ファミコンの海外名称)の自作文化があったりした影響ですね。2018年頃のことです。

桃井 同人ゲームの界隈はアツいですよね。つい先日もフランスのお子さんが作った『KUBO3(キュボ3)』という同人ゲームが話題になっていました。秋葉原には「BEEP」や「家電のケンちゃん」というお店があって同人ゲームならそこで手に入るんですよ。

――そのような方々は一般的に、どうやって作っているのでしょうか?

むっく僕の場合は、まずプログラムをオープンソースの開発ソフトで作ります。それで組めば、ファミコンに対応したデータが作れるんですよ。基板は設計ソフトを使って自分で設計し、中国の業者に発注しました。電子部品は市販のもので十分です。基板が届いたらハンダ付けして組み立てを行います。

桃井 私、むっく先生の『ぽるんちゃんのおにぎり大好き』を持ってますよ。音楽もよくできていましたよね。

むっく独学で音楽をやっている身としては、本業で、しかも昔から憧れの桃井さんに褒めていただけるのは大変嬉しいですね。

▲『ちょうみりょうぱーてぃー』のカセットの大まかな内部構造。

――開発を進める上で、”ファミコンらしさ“は意識されましたか?

むっくそれが、ファミコンのスペックに合わせて作ると、意識しなくても”ファミコンらしさ“にしかできないんです(笑)。一応、意識して作ろうとは考えていましたが、その必要すらなかったですね。

――『ちょみぱ』メンバーの3名は、”敵キャラ“の案出しと”楽曲制作”にも一部関わっていましたね。実際に形になったものを見ていかがでしたか?

永野はじめはカプセルトイで売っているような、操作もグラフィックもシンプルなものを想像していました。ところがその想像をはるかに越えるゲームができて感動ですよ! 信じられます? すべてむっく先生がおひとりで作られているんですよ!

桃井 80年代のファミコンゲームは操作性の不便さとか、説明不足で何をしたらいいか分からず戸惑うことが結構あったんです。でも『ちょみぱ』のゲームは洗練されていて、その意味ではちゃんと令和のファミコンゲームになっていました。その一方でスペックとかサウンドの趣は私たちが懐かしいと感じる、いわゆる美化された80年代になっているので、ファミコン世代はもちろん、世代じゃない人がプレイしても面白いと思います。

むっくでも容量の少なさにはとにかく悩まされましたよ。特にグラフィック。まず色数が少ない、一度に使える色の量も少ない、一度に表示できるキャラクターの数にも制限がある。例えばひとりのキャラに3色しか使えないので工夫しないと成立しません。

▲ゲームのスタート画面。確かに限定された色使いだ。

むっく楽曲を作るにあたっては当時の音色やテクニックを研究しました。ファミコン音源は制限が厳しいと思われがちですが、矩形波×2、三角波、ノイズ、DPCMと全部で5ch使えるので、表現力が高く面白いのです。特にDPCM(サンプリング音源)が使えるのがありがたく、作曲の自由度を高くしてくれています。今回のゲームでは、声やドラムの音にDPCMを使って、個性的で楽しい曲になればと心掛けました。

――音楽と言えば、やはり注目なのは「なぞなぞ鈴木さん」が参加されていることですよね。

鈴木ファミコンに関わるのは30年ぶりくらいですよ。自分でもどの音が鳴るのか分からなくなってて、「3つだったかな、2つだったかな?」という状況からだんだんと思い出していきました。番組のイメージソングが現在2曲あり、そのどちらものんちゃん(永野希)が書いて僕もディレクションしましたから、その流れもあってオファーをいただいたのかなと思います。

――実際のところ、どういった作業をされたのですか? 桃井さんは昨年、ランティスさんの企画で制作された楽曲「転売ヤーをぶっとばせ!」がベースになっているとお聞きしました。

桃井 どの作曲作業でも最初にmidiデータを作るので、そこからファミコン用に音数を減らして提出しました。ベースとコードと主メロ(リズム)を残し、あとはすべて削った感じですね。

むっくそれを元に、僕がファミコン用のデータとしてプログラミングし直しました。

桃井 最初はファミコンカセット用の音楽制作ソフトをむっく先生が送ってくださったんです。でもかなり操作が難しくて思うようにいかず、それならと元となる音楽データをお渡しして、アレンジと打ち込みをお任せする形にしたんです。以前、むっく先生にお会いした時に、音楽もご自身で作られていたと伺っていたので心配はありませんでした。

――普段の作曲とファミコン音源ではやはり感覚が違ってくるものなのですか?

桃井 ファミコンの音の要素は主に音楽と効果音の2つがあるのですが、効果音で音楽が消えてしまうことを計算して作らないといけないんです。そうなると最後はむっく先生に音を整えてもらわないといけなくなるので、元のデータからアレンジしてもらおうと思ったんです。

永野私も普段の楽曲制作と同じようにデモ音源を作ってMP3で提出しました。むっく先生からは「この面ならこういうアレンジはどうですか?」とアイデアをいただき、すごくいい形でコラボレーションできたと思います。

――吉成さんと藤川さんも楽曲制作に参加されていますよね。

永野私はしょうゆちゃんのステージを担当、なりちゃん(吉成由貴)はマヨネーズちゃん、茜ちゃん(藤川茜)はケチャップちゃん……という形で、それぞれ担当キャラクターに沿った音楽を作りました。なりちゃんは鼻歌のイメージ、茜ちゃんは「『悪魔城ドラキュラ』みたいな曲」といったように曲のイメージだけむっく先生にお伝えする形です。

桃井 私ものんちゃん(永野希)の曲を聞いたけどすごかった。『桃太郎伝説』的な感じというか、祭囃子っぽい楽曲だったよね。

永野作業をしていた頃は世の中が「お祭りを自粛します」というムードで、ライブやイベントも思うようにできない時期だったので、この楽曲を聞いて皆さんに元気になってもらえればいいなと思いました。やっぱり楽しいことといえばお祭りですよね。ですから、お囃子でメロディーを作り、和太鼓の音も打ち込みました。ちなみにタイトルは「しょうゆは何でできている」で、実は歌詞も考えてあります(笑)。

――鈴木さんは30年ぶりに作業されていかがでしたか?

鈴木この時代にファミコンゲームをカセットで製作する……、当初はネタ企画だと思って軽く考えていたんですよ。ところが話が進むうちに、クリエイターとしてはなかなかに大変なボス面を担当することになり、だんだん困惑していきましたね。

桃井 ボス面はどう大変なんですか?

鈴木プレイヤーがもっとも攻略に手間取る、滞在時間が長くなるステージです。どちらかと言えば不吉な音も使うので、滞在が長くても苦痛にならないような構成が必要だと考えます。例えばボスだからと言って派手にし過ぎると……、プレイ以前に音楽で疲弊してしまうケースも生じます(笑)。

桃井 そのお話、めちゃめちゃおもしろいですね。

鈴木それを回避するには、メロディーラインの構成上で、「これメロディーなの?」という部分も作ります。戦っている間に鬱陶しくならない秘訣と言うか……。むしろ雰囲気だけで戦える方が飽きないかなと。「あれ!? どんな曲だったっけ!?」でもいいと思うのです。私はそういう感じでプレイするのが好みです(笑)。あと今回は、途中にオーケストレーションを入れて、戦っている間に少し休めるような構成にしてみました。

むっく鈴木さんとのやり取りでは、細かいところで色々な要望やアドバイスをいただきました。例えば少ない音数で表現する構成の仕方が大変参考になりましたし、音色や音量バランスなどかなり細かいところまで教えていただいて勉強になりました。ファミコンの作曲をされていた方からご教授いただける機会は滅多にありませんし、非常にありがたく貴重な体験でしたね。

鈴木ファミコンは聴こえやすい音域とか各パートのバランスもあって、曲によってそれぞれ工夫が必要なんです。今回は音楽プログラムの打ち込みもむっく先生なので「すみません、あと半音上げて確かめてもらえますか?」とかグリスのお願いやビブラートのお願いだったり……。細かすぎますよね、恐縮です。

桃井 ほんの少しのバランスで成立しなくなってしまうということですよね。

鈴木そうなんです。例えばアンサンブルを組むとして、キーを変えてちゃんとベースの音が聴こえるようにしないと、曲によってはアンサンブルが成立しません。DTM上ではなく、実機とのすり合わせなので環境が整っていないと難しいです。今回はそのジレンマで……。

むっく先生には申し訳ないし、かと言ってもっと詰めないと、自分も納得出来ないしで……。やっぱり普通に曲を作ってそのままお渡しして、むっく先生にファミコンアレンジをお任せすれば良かったなと反省しています(笑)。桃井の楽曲、むっく先生のファミコンアレンジは凄く良い感じです!

永野私も、なりちゃんや茜ちゃんの曲がすごく素敵に仕上がっていたので、「もっとふんわりしたものを提出していれば、むっく先生がもっと素敵にしてくれたかも」と、ちょっと思いました(笑)。コラボでできた曲はもちろんいいものではありますけど、隣の芝生はやはり青かったです。

――完成形が見えてしまっているだけに、ついこだわりたくなるんですよね。難しいです。

鈴木伝え方もそうですが、むっく先生が持っているドライバの能力もわかりませんでしたし。

永野ドライバで違ってくるんですか?

鈴木違いますね。当時でも汎用のドライバと各社が独自開発していたドライバでは表現できる範囲も違いました。ギターの奏法(チョーキングやビブラート)も試行錯誤して、夢中で楽しんで打ち込みしていました。完成した時の満足感と言ったら(笑)。

桃井 NESの『Rollergames』ですよね。凄いんです、ゲーム音源なのにちゃんとハードロックっぽい感じの曲なんです。

鈴木この企画もはじめはネタ企画だと思って気楽に構えていたのに、そういう自負も思い出し、ファミコン時代の心意気と、技の全てを忘却している現実とのジレンマが大変でした(笑)。

次ページでは「ファミコンカセットの拡張性」と「80年代ゲーム製作現場」についてトーク
《気賀沢昌志》

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