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日本法人設立から2年、日本でも普及が進むハイエンドゲームエンジン「Unreal Engine」

ゲームビジネス 市場

日本での採用タイトル(公表済み)
  • 日本での採用タイトル(公表済み)
  • サポートを担当する下田氏
  • 静かな語り口ながら日本のゲーム開発を支えたいという想いが伝わってきた
世界で様々なタイトルで採用されているゲームエンジン「Unreal Engine」。数日後に迫ったGame Developers Conference 2012では次世代機向けの新バージョン「Unreal Engine 4」が発表される予定です。開発元のEpic Gamesは『Gears of War』で知られるデベロッパーであり、その経験を活かしてエンジン開発に当たっています。

日本でも現地法人としてEpic Games Japanが2010年1月に設立。国内での「Unreal Engine」の一層の普及や利用者のサポート拡充に取り組んできました。

今回のインタビューでは同社でサポートマネージャーを務めている下田純也氏にこの2年間を振り返っていただきながら、「Unreal Engine」を上手く使うコツや、今後目指す方向性について聞きました。

―――まず、これまでの国内での採用タイトルを聞かせていただけますでしょうか?

下田: 最近リリースされた『アスラズ ラース』(カプコン/サイバーコネクトツー)や『Infinity Blade Cross』(DeNA/イニス)など既に発表されているタイトルで10タイトルがあります。これに加えて、未発表タイトルが20本程度あり、評価版を使っていただいている会社も50社近くになります。大手パブリッシャーでは大半の会社で、デベロッパーでもある程度の規模の会社さんには使っていただいている状況です。一度使っていただいた会社での評判も良く、グラスホッパーさんやイニスさんでは多数のプロジェクトで「Unreal Engine」を使っていただいています。

―――「Unreal Engine」のニーズはどのようなところにあるのでしょうか?

やはり、世界に向けてある程度の規模の作品を作りたいというニーズですね。当然、世界のAAA(トリプルエー)タイトルと伍していくには高い技術力が必要です。しかしそれは一朝一夕に獲得できるものではありません。そこで「Unreal Engine」を検討いただくケースが多いようです。それに加えて、勉強も兼ねて欧米流の開発手法を体験してみたいというお客さんもいらっしゃいます。徐々に使い手の広がりを感じているところです。

―――下田さんは日本で「Unreal Engine」を利用した第一世代ですよね

はい。私自身はファミコンの時代から約20年間ゲーム開発に携わらせていただいていて、プレイステーション、プレイステーション2、Xbox、Xbox360などプログラマとして多数のプロジェクトに参加して、その中の幾つかはメインプログラマという立場で関わってきましたので開発全般を理解しているつもりです。後半ではマイクロソフトで『ロストオデッセイ』の開発に携わり、そこで「Unreal Engine」に触れました。参加当初は現場で、後半からはプラットフォームホルダーとしての技術サポートのような立ち位置で、そこから「Unreal Engine」とサポートというのが本職になってきています。一応現場を分かった人間がサポートをしているつもりなので、どんどんヘルプをさせていただければと思います。

■無償の評価版でぜひ試用を

―――例えば僕がゲーム会社の担当者だったとした場合、「Unreal Engine」を使いたいと思ったときはまずどうしたら良いのでしょうか?

弊社に連絡いただければ、まずは技術デモをさせていただいて、ご興味をお持ちいただけるようでしたら、無償・無期限で利用できる評価プログラムで実際に「Unreal Engine」を触っていただくことになります。これはソースコードの提供も含めて正規の商用版と同じ機能を有しています。よくあるパターンは、パブリッシャーであれば制作が決定する、デベロッパーであれば契約が決まるまでの間は評価版を使っていただくというものです。評価版は制作物を発表したり販売することは出来ないという制限がありますが、人件費以外は不要でプロトタイプ作りに当てられるのは良い点ではないでしょうか。

もちろん評価いただいている段階でも日本語でのサポートが提供されます。初めて利用される場合は、FPSやTPSしか作れないのでは? というような印象を抱かれてしまうケースがありますが、どういう使い方をすれば「Unreal Engine」で自分たちが思い描いているゲームが開発できるか、訪問でのサポートも含めてレクチャーしています。

―――導入時のサポートで多いのはどんな点でしょうか?

日本のデベロッパーさんはアニメーションにこだわりを持たれている所が多いように感じます。特にアニメ的な誇張表現というのは、「Unreal Engine」が元々リアルな表現を目指したエンジンということもあって少々難しい点があります。サイバーコネクトツーさんとのインタビュー(http://www.gamebusiness.jp/article.php?id=5499)であったようなボーンが拡大縮小するようなものなどです。ただ、やり方はありますので、アドバイスをしたり、サンプルを用意したりして回答させていただいています。

―――今までのワークフローを変えるという点も課題になりそうです

日本法人を立ち上げる前に、私も現場に居たのですが、マイクロソフトやスクウェア・エニックスさんで行われたプロジェクトで、既存のワークフローに「Unreal Engine」を組み込むというやり方をして苦労したことがありました。先のインタビューでも触れられていますが、ゲームエンジンはその使い方を込みで提供させていただいている部分があり、異なる使い方をすると大変な労力が必要になってしまう場合があります。自身の苦労もあり、ワークフローは「Unreal Engine」に合わせて下さいとお願いしています。

例えばステージ作成です。日本の開発現場では、DCCツールでステージ全部を作って、それをゲーム側でインポートして使用するという手法が一般的です。「Unreal Engine」では、ステージのガワやパーツを個別に作成して、それを組み合わせるのはエディター上で行うことになります。モデルを作る部分と、それを組み合わせてゲームをデザインする作業が分離することになります。これにより、構成→テスト→構成という繰り返しが非常に容易にゲームデザイナー・レベルデザイナーの手元でできるようになります。従来通りのワークフローを「Unreal Engine」に適用することも出来ますが、この良さを捨てる事になります。

―――レベルデザインの話でいくと、日本にはレベルデザイナーと呼ばれる職種自体が存在しないというような、日本と欧米のスタイルの違いも表面化してきそうです

そうですね。何かのシリーズを担当してきたようなチームに紹介に行くと、「この部分は誰がやる?」となるケースは多いです。ただ、例えばレベルデザイナーと言ってもレベル制作にも色々な作業があります。弊社の『Gears of War』であれば、同じレベルデザイナーでも、アート寄りで見栄えを担当するスタッフ、ゲームロジックをレベル上に組み立てるスタッフ、パフォーマンス向上などテクニカル面を担当するスタッフという風に分かれます。職種だけでなく、中身の仕事を理解してチーム構成を考える必要があります。

―――上手くいくチームの特徴などはありますか?

やはり「Unreal Engine」で求められるものをワークフロー含めて見極めて、プロトタイプの制作を行ったチームが上手くいっているように思います。その際は、ゲームのプロトタイプだけでなく、制作するワークフローも含めて構築して実験することが、実制作の際に役立つと思います。

―――サポートを行なっていて、引っかかりやすい箇所などはありますでしょうか?

質問が増えるのは、まずはプロトタイプの段階で、「どうやったらこんなゲームが作れる?」というものです。後は開発終盤で、プラットフォームホルダーの審査を通す際に「どういう方法を使えばレギュレーションに抵触しないか?」という相談も多いですね。もちろん「Unreal Engine」でマスターアップしたタイトルは数え切れないほどありますし、我々自身でもゲームをリリースしていますので、どんな相談にも応えられると思います。

―――日本のデベロッパーに人気の機能というのはありますか?

デバック用の機能、パフォーマンスを上げる機能は人気ですね。このあたりは本社で『Gears of War』をハイパフォーマンスで実現するために作っている機能でもあるので、実戦に十分耐えられるものになっていると思います。

■もっと多くの作品をサポートしたい

―――「Unreal Engine 4」の足音も聞こえますが、「3」のバージョンアップは落ち着いたのでしょうか?

基本的には現在も毎月一回、バージョンアップ版がリリースされています。ただ、昨年のGDCで発表したDirectX 11のサポートを最後に、大規模なバージョンアップは減っています。

―――開発中のタイトルではエンジンのアップデートもするのでしょうか?

プロジェクト毎に異なりますが、αやβなどいずれかのタイミングで最新バージョンへのアップデートは止めるケースが大半です。現在はバージョンアップも落ち着いているのですが、過去には多数のアップデートと自社内の変更がバッティングし大変だったケースもあります。ソースコードも公開していますので、自由にカスタマイズが可能なのですが、バージョンアップの問題もありますので、なるべく本体には手を入れずに使うことをオススメしています。

―――独自拡張を進めて後で大変になったケースも多いようですね

ええ。ただ、海外でもバージョンアップを早々に止めて、独自の拡張をゴリゴリ行うケースがあります。例えば『BIOSHOCK』シリーズなどはかなり独自の拡張を入れています。こうしたことは自由にやっていただいても構いません。ただ、拡張を行うとその部分は我々も把握できませんので、サポートが困難になるという問題点もありますが・・・。

―――日本法人ができたことで日本語のサポートが提供されるようになったのは嬉しいですね

現在までに1000ページ以上のドキュメントを日本語化しました。今は逆に数が多すぎて参照性が悪いという意見もあり、インデックスを強化する努力をしているところです。

余り英語に慣れていない開発者の方もいらっしゃいますし、読めるけど質問するのは億劫という方もいらっしゃいます。問題があっても、開発者であれば工夫で何とかしてしまうケースも多くあります。ただ、無理矢理実装してしまうと後で問題が起こる場合もありますし、もっと良い解決法がある場合もあります。そこを気軽に日本語で質問できるようになったというのは大きいのではないでしょうか?

―――日本法人が出来たことで着実に利用が広がっていますね

そうですね。ただ、もっと利用者を広げるのが今後の課題と思っています。

―――具体的な取り組みはありますでしょうか?

まず、昨年末から日本工学院さんで月一回の講義をさせていただいています。対象としているのはCGクリエイター科の学生で、CGをリアルタイムで綺麗に表現するために「Unreal Engine」を使っていただいています。当然プログラムを学んでいる学生もいるのですが、ハイクオリティのレンダリングまでは出来なかったりします。そういう人と組むのも勉強ですが、ツールを使って綺麗に表現するというのも一つの学びということです。

更に新年度からはもっと制作よりの講義も行う予定で、「Unreal Engine」でゲームを作った経験のある学生が増えてくれることを期待しています。ゲーム会社の方でも「Unreal Engine」を使えるエンジニアやアーティストを望んでいるケースも多いようです。

それから、今年は同人ゲームでの利用も伸ばしていきたいと考えています。既に「Unreal Engine」を使っていただいているケースがあるのですが、それをもっと増やしたいと。ゲームを作りやすいような情報や環境はもっと提供していければと思います。

―――下田氏もグローバルゲームジャムに参加されました

やっぱり「Unity」のユーザーが多くて(苦笑)。でも地道に普及活動をやっていきたいですね。

―――ゲームエンジンで競合を考えるとやはり「Unity」でしょうか?

スマートフォンに限ると「Unity」を使うという話はよく聞きます。家庭用ゲーム機になると我々に優位があるように思います。その他、名前を聞くのは国産でシリコンスタジオさんが作られている「OROCHI」や、実際に採用されたケースは無いように思いますがCrytekの「CryENGINE」も検討には挙がるようです。

「Unreal Engine」を使うことで、自分たちが作りたいゲームを素早く作る事ができます。過去にはプロトタイプを制作する前に、エンジン自体を作る必要があるケースもありました。その長い道を飛び越えて、短期間で動くものを構築できる環境を提供しています。また、単に生産性を向上させるだけでなく、実現できるクオリティも圧倒的なものを目指しています。『Gears of War』を作るために全ての技術を結集し、そのエッセンスを集約したものが皆さんに提供している「Unreal Engine」です。また、モバイルでも『Infinity Blade』を作るためにiPhoneを徹底的に研究したものがベースになっています。こうしたものを気軽に利用できるというのが大きなポイントなると思います。

―――「Unreal Engine 4」ももうすぐです

来週のGDCでは関係者にクローズドでお見せします。一般に公開するのは先になりますが、当然次世代機に合わせて登場することになると思います。

―――世代が上がりゲームエンジンの重要性も更に増します

ゲーム機の世代が上がることで求められる基礎体力も上がると思います。デベロッパーは世界的に二極化が進んでいるように思います。『Modern Warfare』や『アサシンクリード』のように莫大な開発投資を行った自社エンジンを徹底的に突き詰めるスタジオと、それから「Unreal Engine」のような汎用エンジンを使って制作を行うスタジオという風に分かれています。日本でもこの流れは変わらないと思います。

―――最後にメッセージをお願いします

お陰様で日本でも「Unreal Engine」の利用が広がっていると実感しています。今後も利用を増やし、サポートとしてもクオリティを落とさず日本のデベロッパーの皆さんを支援していきたいと考えています。日本ならではのゲームがもっと出てきて欲しいと切に願っています。お手伝いしますので、ぜひ声をかけてください。

それから、Epic Games Japanではサポートエンジニアを積極募集中です。単なるユーザーサポートに留まらず、提案型のサポートでゲーム開発現場を支援していこうと考えています。また、韓国のチームでは「Unreal Engine」自体の拡張に携わっているエンジニアもいます。日本でもそうした動きをしていきたいと思っています。ご興味のある方はぜひ連絡ください。
《土本学》

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