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【CEDEC 2010】アサシン・クリードのゲームデザインと開発プロセス

Ubisoft パトリック・プルーレ氏(Patrick Plourde)によるセッションでは「アサシン クリードのゲームデザイン哲学」と称してグローバルスタジオにおけるプロジェクト進行が語られました。

ゲームビジネス 開発
【CEDEC 2010】アサシン・クリードのゲームデザインと開発プロセス
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Ubisoft パトリック・プルーレ氏(Patrick Plourde)によるセッションでは「アサシン クリードのゲームデザイン哲学」と称してグローバルスタジオにおけるプロジェクト進行が語られました。プルーレ氏は現在、最新作であるPS3/Xbox 360『アサシン クリード ブラザーフッド』の開発を担当されています。

Ubisoft パトリック・プルーレ氏


Ubisoftでは、右脳、左脳型などプログラマー側、アーティスト、ライターなど両方の専門分野を組み合わせなければならない。ゲームデザイナーは論理側もつかさどらなければならないというロジック、ルールが存在するそうです。ゲームデザイナーの中では理論など、優先する人もおり、チェスのようなルールを作る人も好む人もいれば、クリエイティブな人もいるといったことが語られました。

『アサシン クリード』は2007年11月に発売、累計800万本を売上げ、レビューに関しては評価の高いものもあれば、悪いものもあったといいます。その続編となる『アサシン クリード2』は2009年11月にを発売、現在までの累計本数は900万本を売り上げています。最新作である『アサシン クリード ブラザーフッド』は、北米では11月16日、日本では2010年内発売予定。東京ゲームショウ2010でプレイアブル出展される予定とのことです。

プルーレ氏によると、ゲーム制作はクリエイティブな側面、アートであるというのが重要とのことです。アサシンクリードを作るにあたってビデオゲームの定義というものがあり、たとえば舞台だったり、映画だったりと受動的なコンテンツよりも、インタラクティビティがあるゲームでは、プレイヤーの行動によって体験させることが必要となるといったことです。

これはシネマ(カットシーン)のみでプレイヤーに何かを感じさせるということではなく、結果としてどう行動したのか、それによってどういう感情を与えたかというのを重要な要素として捉えているからです。

今回のセッションタイトルでもあり、同氏の携わった『アサシン クリード』の制作では、「自由度」と「マスターアサシンになっていることを体験させる」という2つのテーマを作成し、それに伴いゲームを制作したという例が語られています。

同作の「自由度」とは、広大な都市を砂場のようなものとして作り上げることで、さまざまな可能性のある世界として演出し、当然それらにツールを用意て使って楽しんでもらうというものです。またアサシンクリードでは、自由に探索できるフリーローミングの要素を取り入れ、メインミッションを遂行してストーリーを進めることはもとより、点在するクエストを進めてやりこんだりすることも楽しめるようになっています。

「自由度」という部分で開発チームが重点を置いた部分は、NPC(AI)はアグレッシブにプレーヤーを攻撃してこないというところだそうです。これは、ベルトスクロールタイプのゲームや、シューティングのように常にコントローラーを持っていなければならないという状況下を作らず、プレイヤーが何らかのアクションをしない限り、何も起こらないということを大事にしたからと語られています。結果として、プレイヤーは敵に対してのプレッシャーを常に感じることはなく、自由を体感できるようになったそうです。アンケートなどでも『アサシンクリードは旅行に行ったような気になる』といった回答を得られ狙い通りとなりました。しかし、これは偶然そうなったわけではなく、開発側がプレイヤーに提供している「自由」を感じているからだと語られています。

『NIINJA GAIDEN』と『ミラーズエッジ』を例にあげ、両作はプレイヤースキルに依存するため、ゲームデザイナーの意図した楽しみ方は難しいと語られました


「マスターアサシンになっていることを体験させる」という部分では、プレイヤーの力量ベースでのプレイアプローチを取らないことにしたそうです。プルーレ氏は、テクモの『NINJA GAIDEN』と、エレクトロニック・アーツの『ミラーズエッジ』を例として挙げ、これらのゲームは、インプットの大半をプレイヤーの力量に委ねていると語り、『アサシン クリード』ではプレイヤーのキャラクターがマスターアサシンに感じられるよう、操作の簡略化を行い、またプレイヤーキャラクターは他のキャラクターよりもより俊敏で強い設定にしたと語っています。

たとえば、複数の敵に同時に対峙したとしても、前述のキャラクターの性能によって、マスターアサシンとしての強さを感じ取ることもできれば、コアなゲームプレイとリンクすることで、感情を生みだそうとするシステムが機能したと語っています。たとえば、『アサシン クリードでなく』、FPSなどのシューターであれば、撃つことが楽しくなるようなシステムにするそうです。

『アサシン クリード』では、ゲーム要素の3つを重点に置き開発


次に、ゲームプレイにおける『アサシン クリード』はというと、「Fight」、「Navigation」、「Social Stealth」の3つの要素に重点を置いているそうです。

「Fight」(戦闘)部分では、プレイヤーがさまざまな戦闘をするというだけではなく、勢いを使ってアタックをするといったことも可能。プレイヤーが戦闘をするということはなく、カウンターキルを見せることや、パワープレイに対してフォーカスするアニメーションなどが盛り込み、戦闘をよりエキサイティングに楽しく演出していると語っていました。

「Navigation」(ナビゲーション)部分では、ベニスのマップを例にして挙げられています。同作のベニスは広大な都市であるため、タワーに上り見渡すことでヒントを得るという特徴があるため、複雑になったそうです。これをシンプルなコントロールを盛り込んだり、前述の細かい工夫によって、プレイヤーに感じてもらいたかった自由を体験できたと思うと語っています。また後述のプレイアビリティでこの部分が語られています。

「Social Stelth」(ソーシャルステルス)は、初代『アサシン クリード』から導入されている要素です。これは普通に群衆の中に紛れ、移動をしていれば敵に気付かれないといったものであり、この要素を導入することで、クエストのターゲットとなるNPCや外敵要因などに対してもプレイヤー自身が常にイニシアチブを持って行動することが可能になったと語られています。

ちなみに、フランチャイズタイトルであるからこそ最新作、『ブラザーフッド』でも、新鮮さがあることが大事だと語れました。プルーレ氏は、『アサシン クリード2』では、物語を進めれば全体の80%のスキルを覚えることができるといった要素を盛り込むことで、ゲームの中に新しい体験を提供していけることができたと語っています。

そのため『ブラザーフッド』の新要素としては、これまでの1、2で積み重ねてきた経験を情報としてを共有していくこと以外にも、弟子であるNPC暗殺者のリクルート、トレーニング、スキルを学ばせていくといったことも可能となっているそうです。この要素を盛り込んだことで、NPCもプレイヤーキャラクターと同じスキルを学んでいき、メンバー(NPC)の手助けが必要な時はプレイヤーからの合図を待ち、それを実行するという体験をはじめ、NPCたちが段々と強くなっていくといった1、2にはなかった教える、伝える、そして対象が成長するという過程を体験できるようにしたそうです。

これらのことからゲームの特徴を主となるゲームプレイにきちんと紐付けていくことが重要だと語られています。

次にセッションタイトルの「ゲームデザイン哲学」部分に則した面として、開発プロセスも語られています。

Ubifostはカナダのモントリオール、トロント、シンガポールなど5つの開発スタジオを渡って『アサシン クリード』を開発をしており、時差の関係やスケジュールの調整などもあるため、厳格な制作プロセスを持っているそうです。

世界各地のスタジオで合計すると『アサシン クリード ブラザーフッド』では、450人の開発者が関わっているそうで、プルーレ氏によると、大きなチームを最大限に活用した場合、きちんと作るにあたって偶然に頼ることはできず、高品質なドキュメンテーションのプロセスの作成とプレイテストが重要になると語られています。

ドキュメントの作成については、ゲームデザイナーの人たちの文章だけを信用しないというわけではなく、絵を入れたデザインプロットなどを描くことで、ゲームの要素をしっかりと見極めるようになり、そのドキュメントさえあれば、要素の説明できるようにするといった工夫がされたそうです。

結果として、プログラマーがデザインや仕様書を見て、コーディングを行うことで効率的に作業が行えるるようになったと語られています。

また、高いレベルの詳細をコミュニケーションで取ることはお勧めできないケースもあると語っています。これはゲームデザインを文章化した場合、400ページあったとするとデザインの情報を見つけるだけでも大変なことになってしまうからだそうです。

制作の際に必要なことは、プログラマと話をして、「仕様書がほしいのか?」と聞けばよいし、彼らに対して役にたつドキュメントを作ってやればよい。開発チーム間では、すべての機能について必要なものが、カテゴリで分かれており、アクションひとつにとっても、うまくいくのか行かないのかという質問で進むというようになるそうです。自分が何をしたいのかなど、コーディング部分ではプログラマーにゆだねられていますが、高精度な仕様書を描くことで、結果として特徴をうまく伝えることができるようになったと語られています。

また、ゲームの細かい仕様も同様に、1秒で3メートル走るのか、5メートルなのか、議論されたこともあるそうです。この場合、開発チーム間では、どちらが楽しいのかを話し合う場になったそうです。

そのほかにもプログラマやデザイナーがコミュニケーションを取る方法として、プロセスに対しての意見などには言語の統一が行われています。

具体的には、いきなりドキュメントをプログラマに渡し、ストラクチャーを提示するといったことはなく、すべての企画および仕様などはリードデザイナー、デザイナーのフォローアップ、ディレクターの承認が必要といったプロセスになっており、結果としてこれらに対してはすべてYesかNoで判定され、承認されれば採用されるといったプロセスにしたことで、何度となく会議を開かなくてもよくなり効率的に作業が行われたといったことが語られていました。

このドキュメントおよび承認制により、『アサシン クリード2』では、6カ月で200以上のドキュメントが作成され、再作業が少なく済んだQA(Quality Assurance)もドキュメントを開きゲームをプレイし、ドキュメント通りにいかない箇所があれば、バグとして報告するといったことを行ったそうです。また『ブラザーフッド』では、このドキュメントをアップデートして流用したことで、さらに効率的に作業が行われたと語られています。

結果として、『アサシン クリード 2』では210個のフューチャーを作成。『ブラザーフッド』では2の中から150個を保持したうえ、100個を追加。2では22カ月の開発期間を有したものの、ブラザーフッドでは10カ月の開発期間となったそうです。


開発が進むと、次はテスト環境になります。プレイテストの部分は、ゲームの完成度を高める重要な要素で、これは鏡のようなもので、アイデアとしてはあっても自分の中での考え(頭の中)と現実にできたものを鏡として見ながら調整できると語られています。

プレイテストのプレイログ、それぞれのプレイヤーの経路を記録し、どこが使われていないのかその理由や経緯などを解析しています。


たとえば『アサシン クリード』のプレイテストでは、データトラッキング方式が採用されており、Aというアクションが使っていないといったことが、プレイテストの中でわかるようになっていたそうです。

この結果、普通のゲームであれば、キャラクターが15回も連続して死ぬということは結果としてその箇所は「難しい」ということになるから調整を行うそうですが、「15回死んだが楽しかった」という答えがあった場合、その道筋は正しかったと判断するそうです。

また、ゲーム中に登場する都市「ベネチア」のプレイテストでは、4階建ての建物が登場しますが、プレイテストの際、コアゲーマーとカジュアルゲーマーにこのエリアをプレイさせたところ、カジュアルゲーマーはどうやって町をスムースに移動すればよいかなど、コアゲーマーほどわからないという結果なども出たそうです。プレイヤーがベニスに到達するまでに得たプレイエクスペリエンスによって、対応することができるようになっているだろうという、開発側の思惑とは外れていたことがデータとして立証されました。

この部分は、さらに様々な検証を行い、プレイアビリティの向上にフォーカスを当て、4階建ての建物であっても2階建てのスピードで上れるようにしたことで、カジュアルゲーマーであっても開発側の意図した使われ方となったと語られています。

このような過程を経て『アサシン クリード』は開発され、様々なテストを重ねることで、楽しさなども増していったそうです。

プルーレ氏は最後に「プレイヤーがクリエイターが表現したいものをすべて感じてもらうことためには、ゲームデザイナーは、クリエイティブなアプローチと実務的なスキル、そしてアプローチを進めていくことで、欲しいフューチャーが実装されていく。開発にいたっては、開発チームにしっかりとしたドキュメントを提供する必要があり、プレイテストを活用して、自分の目的が達成できているのかを確認することが必要。クリエイティブなアプローチを作ることで、ゲームをさらに楽しく体験でき、インパクトのある結果ももたらさられる。なにより、プレイヤーにとって楽しんでもらうことが必要で、これらをすべてゲームプレイの中で体験させることが大事」と語っています。
《鬼頭世浪》
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