任天堂はWiiリモコンでより精密に動きを検知する「Wii Motion Plus」を、マイクロソフトは“コントローラー無しでのゲーム”を提唱した「Project Natal」を、ソニーはプレイステーション3用モーションコントローラーの試作機を公開。
動きへの取り組みがゲーム業界全体へ広がったこととなります。
身体を動かしてゲームをする。1980年代から追求されてきたテーマですが、家庭用ゲーム機でここまで大規模に追求されるのはこれが初めて。極めて大きな可能性を秘めており、現行機で対応できるため、ゲーム機のライフサイクルを延長する効果すら指摘されています。
分かり易い、という点も見逃せません。グラフィックの進歩はゲームを遊ぶ人間にすら体感しづらいものとなりつつありましたが、身体を動かしてゲームをすることは誰にでも分かる新しさです。しかも、豊富なソフトウェア資産を背景にした既存ハードにわずかな投資をすることで手にはいるのです。これは買う側からすると大きな安心です。もしもモーションコントロールがダメでも、既存のソフトで遊べばいいのですから。
これまでの革新の多くは、ハードウェアサイクルが切り替わる際に新機種のゲーム機を新たに購入することによってもたらされてきました。ハードウェアサイクルが切り替わる時とは、ユーザー側からすると「どれを買っていいのか」分からない時期です。加えて、制作ノウハウが一度白紙に戻るため、ソフトウェアの質も大きく変化します。つまり「何を買っていいのか」すらも分からないのです。この荒野に耐えられるのはアーリーアダプター(新商品を早期に買って試す人々)とゲームマニアのみ。技術的側面の強いグラフィック強化を目玉に五里霧中で新たな荒野へ投げ出されるのですから、先細り傾向が言われるのも仕方がない部分があるのではないでしょうか。
手軽で誰にでも分かる、大きな革新。買い換えを促すことなく手に入る未来。
これはゲーム業界、特にソフトメーカーにとって大きなチャンスではないでしょうか。
懸念がないわけでもありません。
WiiやニンテンドーDSではカジュアル系への一極集中が問題となり、これを質の低下と捉える意見も存在します。『Fallout3』のエグゼクティブ・プロデューサーであるTodd Howard氏や『The Conduit』のクリエイティブチーフであるEric Nofsinger氏は「何も知らない子供を相手に一儲けするゲームでWiiが行き詰まらないかと心配する」「パブリッシャーはWiiが儲かりそうだというので慌ててそちらへ向かっている」と発言しています。「Wii」を「モーションコントロール」に置き換えれば現状の持つ可能性が分かります。モーションコントロールの時代が来た、しかし出たのは似たような低品質のものばかり……となりかねないのです。
動きでゲームを操作することで、うまくすれば機械操作に抵抗感を持つ世代すら新たなユーザーにできるかも知れません。買い換えすることなく手に入る新たな未来は、新たな安定期をゲームにもたらす可能性があるのです。
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