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スタンフォード大のヘンリー・ローウッド教授が語る“文化遺産としてのゲーム”

ヘンリー・ローウッド教授

ゲームビジネス その他
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中村:最近は昔のゲームタイトルも、再度脚光をあびてますよね。

ヘンリー:そうですね。PC向けサービスとしては「Game Tap」などがあります。基本はエミュレータをベースとし使用権を得たうえで、月額課金とコンテンツマネジメントをうまく取り入れながらビジネスをしていますね。私の学生もインターンとしてそこで働いています。さすがに任天堂の作品はないのですが、アタリ時代のタイトルから、『ミスト』シリーズのMMOPRG版『Uru Live』まで、さまざまな作品がプレイ可能になっています。このような意味で、Valve Softwareの『Steam』も、同様のアイデアでゲーム配信を進めていますね。コンソール機のXbox Live アーケード、Wiiのバーチャルコンソール、Playstation3のゲームアーカイブスもゲームアーカイブといえます。

中村:ただ、過去の作品にも商業的価値があるとなると、ゲームアーカイブをすることが困難になるのでは?

ヘンリー:開発されたゲームとそれに関わる資料は、書庫に数年間保管するということができます。著作権保護という意味から、このようなことは他のメディアですでに行われています。保存することは大変重要ですからね。つまり、保存は行っておくけど、リリースされてから10〜20年は非公開としておき、この機関以外でそのゲームの再現が難しくなったところで一般公開すればいいわけです。

中村:なるほど。

ヘンリー:商業ベースで開発されたゲームに加えて、ビジネスという文脈以外で開発されたタイトルも利用価値があります。ビジネスから離れた作品であっても、誰かがそれを見て、「自分もこんなゲームを作りたい」と、やる気を起こすこともあるのではないでしょうか。また、文化的側面から言えば、ゲームそのものだけでなくパッケージや説明書なども興味深い文化的遺物となりえます。家族や女性がどのように描かれていたのか、人々はどのようにゲームと関わっていたのか。そういった、さまざまな視点を示すことができるのです。

また、ゲームアーカイブでこれからすべきことは、作品そのものだけでなく、「開発プロセスのアーカイブ化」です。開発者はゲーム開発のプロセスで何をしてきたのか―これが埋められない大きな溝です。現在、何人かの開発者について収集を始めましたが、資料というものがほとんど存在しません。ウィル・ライト氏のメモ、宮本茂氏のメモ、そしてウォレン・スペクター氏のメモなど…。開発プロセスでデザイナーが書いたメモがどのようなものなのか? 開発スタッフと交わした公式文書はどのようなものなのか? 著作権保持者との間で交わされたライセンス契約の内容は? これらは、ゲーム産業の黎明期に、どのような形で発展が進んでいったのかを調査するのに必要となります。もし書類が残っていないのであれば、インタビューをする必要があるでしょう。50年後にゲームデザイナーが貴重な資料として、これらのアーカイブを検索するような未来になればと思います

中村:ありがとうございました!







スタンフォード大学※クリックで拡大画面を表示


インタビュー時、ヘンリー教授は今回のプロジェクトで、『スペース・ウォー(1962)』『Star Raiders (1979)』『Zork (1980)』『テトリス(1985)』『シムシティ (1989)』『スーパーマリオブラザーズ3 (1990)』『シヴィライゼーションI/II (1991)』『Doom (1993)』『Warcraftシリーズ (beginning 1994)』、そして『Sensible World of Soccer (1994)』 をデジタル保存するつもりであると教えてくれました。今後、これらの作品がどのような形でアーカイブされるのか、文化遺産という視点から、商業サービスの方向性とはまた違ったデジタルゲームの保存を目指す動向については、これからも注目していきたいと思います。
《中村彰憲》
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