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スタンフォード大のヘンリー・ローウッド教授が語る“文化遺産としてのゲーム”

ヘンリー・ローウッド教授

ゲームビジネス その他
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中村:では現在すすめようとしている、アーカイブ活動に関してもうすこし教えてください

ヘンリー:ゲームタイトルだけでなく、開発に関する書類などの収集も始めました。70年代のMUDに関する書類や、Apple用ゲームに関する書類などもです。ゲーム開発者とも積極的に連携を組んでいます。今回GDCに行ったのはその一貫ですね。テキサス大学と連携しているウォレン・スペクター氏(Ultimaシリーズなどを手掛けた著名ゲームデザイナー)も、ある意味アーカイブネットワークの形成を進めています。

これからアーカイブをすすめていくうえで必要なのは、図書目録としてのメタデータをしっかりとすることでしょうか。メタデータを読み取ることで、ファミリーコンピューターやアタリのタイトルでもプレイできるようにしなければならないでしょう。これらのタイトルは仕様などが安定していますが、PCゲームや現世代のゲーム機などは非常に複雑となっています。PCゲームは特に困難です。まずは、“Machinima(マシニマ)”ですね(マシン+シネマの造語。FPSのリプレイ機能などを使って作られた動画を指す)。もともとMODの発展型であるので、MODを開発する際に必要なゲームのサウンドやグラフィックドライバーが、現在のOSに対応しないという問題が出てきます。

また資金面の問題もあります。これはゲームに限らずデジタルメディアの保存そのものについても、まったく宙に浮いている状態です。そのために本格的な展開ができないのです。現在進めるべく動いている2年越しのプロジェクトにしても、まずは10〜20タイトルをモデルケースとして保管を進め、それがモデルケースとなるように私たちが採用したテクニックを他の人にも提案していきたいと思っています。

中村:アーカイブを進めるうえでの注意点は?

ヘンリー:過去の作品となると、重要なデータを収集できないということも起こります。また未来の技術がどのようなものになるか分からない中で、それらの技術に対応しうるメタデータもうまく組み込んでいかなければならないでしょう。メタデータのいくつかを読み込むだけで、すべてのデータを読み込めるようにしなければならないんです。またコストがかかる要因の中にデータの移植があります。あまりにもコストがかかりすぎ、結局いくつかのデータは取り残されるということもありえます。

『DOOM』などのようにコードの断片も起動するかを考えなければならないことが、さらに状況を難しくします。MUD等を考えても、どのパッチのどのバージョンに対応しているのかを考慮したり…ゲームカートレッジの場合も以前は安定的な媒体でしたが、現在は、どのバージョンなのかを考慮しなければなりません。

また、ゲームハードに依存することの懸念もあります。現在、アタリのゲーム機はまだ作動しますが、もうすでにゲームカートレッジもゲーム機も入手困難になってきています。マグナボックス社が出していた「オデッセイ」(世界初のゲーム機)も、動くには動きますが、たった1つのバッテリーが壊れても起動不可能となるような機材がどこまで標準的と言えるのでしょうか…。そのような類の問題です。

それでも、『DOOM』ファイルを動かして利用するほうが、ゲームカートリッジからデータを吸い出すよりよほど難しいですね。今回のプロジェクトでは、すべてのステップにおいてどのような課題が浮上し、何を保存すべきかといった概念的グリッドを確立していきます。ですので、それぞれの時代におけるゲーム機からゲームを取り上げ、アーカイブのステップをドキュメント化していきます。






ライブラリルーム ※クリックで拡大画面を表示


■ますます重要となるゲームアーカイブの意味と意義、開発プロセスのアーカイブ化も


《中村彰憲》
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