■勇者の「いいえ」に被害をこうむるローラ姫

「いいえ」で突っぱねる勇者らしからぬ対応は、重要人物から街の住人まで、幅広く用意されています。その中でも最も被害に遭いやすいのは、ローラ姫かもしれません。

囚われていたローラ姫を助け出した場面では、姫がとある事情から力が抜け、倒れてしまいます。そんな彼女に駆け寄る勇者を見て、ローラ姫は「私を連れて帰ってくれますのね?」と訊ねますが、ここでも「いいえ」を選ぶことが可能です。

長い間囚われ続け、体力はもちろん精神的にも追い込まれ、ようやく助かって安堵したと思った矢先に「いいえ」と答える勇者。あまりにもな展開に、姫も思わず「そんな、ひどい……」と呟いてしまいます。

とはいえ、勇者としてもローラ姫を助けないことには始まりません。最終的には歩けぬ姫を抱きかかえます。すると、ローラ姫が「うれしゅうございます」と喜びをあらわとし、「ぽっ……」と顔を赤らめる展開に。「いいえ」で乱れた空気も、無事払拭されたようです。

動けぬ姫を見捨てるかのような「いいえ」発言もなかなかの非道さですが、勇者にあるまじき行動として最大級に問題なのが、ラスボスである竜王とのやり取りでしょう。

竜王と対面した際、戦いを挑むより先に、竜王から「わしの味方になるか?」といった提案を持ち掛けられます。勇者であれば、そんな提案は到底受け入れられるはずもありません。竜王と戦うには「いいえ」を選ばなければなりませんが、これは勇者としてまっとうな「いいえ」です。
一方、竜王の提案を受け入れる「はい」は、まさしく勇者らしからぬ行為です。言葉としては「いいえ」と真逆ですが、勇者らしからぬ返答という意味で、「はい」を選んだ場合の末路も取り上げます。


「味方になるか?」という提案に「はい」と答えても、それだけでは竜王は納得しません。「友情の証として、そなたの武器をもらうぞ」と要求。この提案にも「はい」と答えて武器を差し出しますが、竜王は最後の提案を突きつけます。「ローラ姫を、わしによこせ」と。

ラスボスの味方になると答え、武器はおろか姫まで差し出す。もはや勇者とは到底呼べない所業に、ローラ姫も「そん……な……ひど……い……」と、絶望的に嘆くほかありません。


そんな竜王の甘言に乗り、勇者の道を外れて得たものは──闇の世界でした。何も見えぬ暗闇の中で、竜王の笑い声が響くばかりです。

……という顛末を迎えた直後、勇者は宿屋で目覚めました。「ゆうべはずいぶんとうなされていたようですが……」という主人の発言から察するに、一連のやりとりは夢の中の出来事だったのでしょうか。

しかし、そばにいるローラ姫は「……」としばらく無言のままで、ようやく口を開いたかと思えば「……参りましょう」と、なんだか含みのありそうな反応です。あの夢の一部始終をローラ姫も知っているのか、それとも……。なんとも苦い顛末と言えます。
■勇者らしさが溢れる「いいえ」も!

選択したのはプレイヤーの意志とはいえ、勇者の悪い面ばかりを取り上げるのはアンフェアでしょう。最後に、「いいえ」を選びつつも勇者らしい振る舞いを見せるシーンを紹介します。
ローラ姫を抱きかかえたまま竜王と対決するのも可能ですが、城に連れ戻すこともできます。姫の救出に城内が沸く中、ローラ姫は勇者に問いかけます。竜王に奪われた光の玉を取り戻しに行くのですか、と。

ここで勇者が「いいえ」と答えると、「……ウソが下手ですね」と切り返すローラ姫。周囲に心配をかけないように振る舞っているのだと、暗に指摘します。実際に勇者は、この後ひとりで竜王に立ち向かうため、ここで答えた「いいえ」にそうした意味があると考えても、なんらおかしくありません。
「いいえ」という言葉は、相手の問いかけを否定するため、ネガティブになりがちです。しかし、心配をかけまいとする「いいえ」には、ひとりで戦い抜く強い決意が込められており、まさしく勇者に相応しい一言に他なりません。

本作だけでも様々な「いいえ」が飛び出しますが、だからこそ反応が気になってしまうもの。『ドラクエI』には、今回取り上げたシーン以外にも様々な「いいえ」が眠っています。気になる人は、その目で直接確かめてみましょう。














