■『零 ~月蝕の仮面~』

先ほど触れたWii向けのリメイク作『零 ~眞紅の蝶~』は、Wiiで生まれ変わった『零 ~紅い蝶~』でしたが、その作品に先駆けてWiiに初上陸を果たしたシリーズ作がありました。それは、完全新作の『零 ~月蝕の仮面~』です。
『零 ~紅い蝶~』を含むシリーズの第1弾から第3弾までは、登場人物など作品同士に直接的な繋がりを持っていました。一方、『月蝕の仮面』は登場人物や舞台が一新されており、Wiiで初めて本シリーズに触れる新規プレイヤーにとって、これ以上ないほど適した作品でした。

本作の舞台は、離島に佇む廃病院。ホラー作品の定番ともいえるロケーションを、懐中電灯の細い明かりだけを頼りに進んでいく恐怖。この探索に唯一無二の臨場感を与えてくれたのが、Wiiならではのデバイスである「Wiiリモコン」でした。
Wiiリモコンは、従来のコントローラーのように両手で保持するのではなく、テレビリモコンのように片手で持ち、先端を画面に向けて使います。この動作が、作中で懐中電灯を構える仕草とリンクし、圧倒的な没入感を生み出しました。

視点の左右移動はリモコンを左右に傾ける必要があったため、実際の懐中電灯の挙動と完全に一致するわけではありませんが、それでも当時の技術で臨場感を可能な限り高めようとした工夫は、『零』シリーズに新たな体験をもたらしました。
ただし、本作には見過ごすことのできない深刻な問題点も存在しています。Wii版の公式サイトにも注意書きがある通り、特定の場面でゲームが停止する致命的なバグをはじめ、残念ながら複数の不具合が残っているのです。
ゲームが止まってしまう不具合は回避策こそありましたが、収集要素であるリストがどうしても埋まらないなど、プレイヤーの努力では対処できない問題もありました。そのため、作品自体は十分に魅力的でありながら、画竜点睛を欠く仕上がりであったことは否めません。
そうした問題を乗り越えて登場したのが、2023年に発売されたリマスター版『零 ~月蝕の仮面~』です。グラフィックの劇的な向上はもちろん、「フォトモード」の搭載や新規コスチュームの追加など、オリジナル版を遊び尽くしたユーザーにとっても嬉しいパワーアップを遂げました。
ユーザーを悩ませた不具合も無論解消されており、まさにファンの望みが叶ったリマスター版となりました。ニンテンドースイッチ、PS5、PS4、Xbox Series X|S、Xbox One、Steamと多くのプラットフォームで、『零 ~月蝕の仮面~』の完成された姿を楽しむことができます。
■『零 ~濡鴉ノ巫女~』

2014年9月に発売されたWii Uソフト『零 ~濡鴉ノ巫女~』は、『零』シリーズにおける完全新作の中で最も新しい作品です。
Wii Uに登場した本作はシリーズ初のHD化を遂げ、その恩恵を受けたグラフィックの進化は目を見張るものがありました。特に本作のテーマである「水」の表現や、濡れた衣服の質感などは、生々しい恐怖と艶やかさを伴って表現されています。

しかし、Wii Uというハードとの組み合わせがもたらした最大の恩恵は、グラフィックの向上だけではありません。怨霊と相対する『零』シリーズは、恐るべき存在から逃げ惑うだけでなく、「射影機」と呼ばれる特殊な機器を駆使して対抗することができます。
この射影機はカメラのような形状をしており、作中のキャラクターはこれを両手で構え、レンズ越しに怨霊を捉えます。従来の作品では、この動作を一般的なコントローラーのボタンやスティックで行っていました。

もちろん、そうした操作でもプレイ上なんら問題はありませんが、Wii Uに標準搭載されている「Wii U GamePad」の存在が、射影機の操作に革新的な没入感をもたらしたのです。画面とコントローラーが一体化したWii U GamePadを手に持つことで、プレイヤーは実際に射影機を構えているかのような感覚で、『零 ~濡鴉ノ巫女~』を楽しむことができました。
かつての『月蝕の仮面』が「懐中電灯をかざす」体験を再現したのに対し、『零 ~濡鴉ノ巫女~』では「射影機越しに異界をのぞき込む」という新たな没入感を実現。しかも、GamePadのジャイロセンサーに対応していたため、実際に本体を傾けてアングルを調整するといった操作も可能になり、これまでにない一体感を味わえるようになりました。
描画表現の進化と、Wii U GamePadによる射影機を模した操作性。こうした強みを持っていた本作は、シリーズの転換点とも言うべき作品ですが、残念なことにWii U自体の販売台数が振るわず、相対的に本作は多くの人へ広まる機会を逃してしまいました。
しかし、2021年10月にリマスター版『零 ~濡鴉ノ巫女~』が登場したことで、本作の魅力に触れる機会が改めて訪れ、その真価が広く知られます。
プラットフォームもニンテンドースイッチ、PS5、PS4、Xbox、Steamと多岐にわたり、誰もがアクセスしやすい環境が整いました。また、Wii U GamePadで表現した臨場感は、スイッチの携帯モードによるプレイに引き継がれていると言ってもいいでしょう。
ちなみに、射影機さながらの携帯モードによるプレイは、リマスター版『零 ~月蝕の仮面~』や、最新作の『零 ~紅い蝶~ REMAKE』にも受け継がれました。前者はスイッチ、後者はスイッチ2の携帯モードで遊ぶことで、射影機を実際に使うかのような臨場感を楽しめます。
先日発売された『零 ~紅い蝶~ REMAKE』を筆頭に、現在のゲーム環境では計3本のシリーズ作を最新ハードでプレイすることが可能です。
シリーズ屈指の人気を誇る『紅い蝶』、新規でも入りやすい『月蝕の仮面』と『濡鴉ノ巫女』、これらが手軽に遊べるようになった現状は、これからシリーズを初体験したい人にとっても適したラインナップと言えるでしょう。
一方、シリーズの原点である第1弾『零 ~zero~』や、初期3部作の締めくくりを飾った『零 ~刺青ノ聲~』については、いまだ現行環境で遊ぶ手段がありません。これらの名作がアクセスしにくいままという現状は、非常に残念です。

また、ニンテンドー3DSで展開された外伝的作品『心霊カメラ ~憑いてる手帳~』も、現行環境下ではプレイできません。こちらの作品は、『濡鴉ノ巫女』よりもひと足先に、射影機による操作感の再現に挑んだ意欲作でした。粗削りな部分もありましたが、可能性を感じさせるポテンシャルがあっただけに、このまま埋もれてしまうのは惜しいばかりです。
2021年のリマスター版『濡鴉ノ巫女』のリリースを皮切りに、本シリーズの過去作は着実に、そして順調に現代へと蘇ってきました。この勢いを止めることなく、まだ見ぬ他の旧作たちの再登場を願うとともに、25周年という節目を迎える『零』シリーズの「完全新作」を待ち焦がれるばかりです。

その期待を叶えるには、『零 ~紅い蝶~ REMAKE』やリマスター作を存分に味わい、この唯一無二のホラーシリーズを応援し続けることが唯一の道でしょう。ファンはもちろん、シリーズが気になっている未経験者も、「今遊べる『零』」をお見逃しなく。














