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「創点 弟子入りプロジェクト」で次世代を育てたいーディライトワークス塩川洋介氏インタビュー

FGO PROJECTクリエイティブディレクターである塩川洋介氏は他にも大学や専門学校などでの講演や講義も積極的に行っている。なぜここまでクリエイターの育成に注力しているのか?現在のゲーム業界を取り巻く環境も含め、話をうかがいました。

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◆ディレクターは絶滅危惧種―「創点 弟子入りプロジェクト」で次世代を育てたい



――昨年から実施されている「創点 弟子入りプロジェクト」や講演についても教えてください。
塩川:
2017年から「創点」というタイトルを付けてイベントをはじめて、これまでに1Dayインターンを2回、独演会という名前のイベント1回、計3回やらせていただきました。これまでの応募総数は400名ほどになっていまして、会場の都合から選考させていただくのですが、倍率は二十倍くらいになっています。そして、現在は東京でしかできていないのですが、全国各地から応募をいただいていまして、とてもありがたいです。応募書類にゲーム創りに対する真剣な想いを書いてくださる方が多く、「ゲームを創りたい」という熱い想いを持っている方々がいろんなところにいるのがわかることも嬉しいです。

――参加者に共通する部分はありますか?
塩川:
ディライトワークスという会社は大きな会社でもなければ歴史があるわけでもないので、「なにがあるんだろう」と興味を抱いていただいているような、好奇心の高い方が多いような印象があります。

――「弟子入りプロジェクト」は名前だけ聞くとドキっとしますが、反響はいかがですか?
塩川:
現在、色々な会社がゲームクリエイターを積極的に採用している中で、ディライトワークスの採用として、どういう事をするのか。他社さんとは異なるメッセージを出さなければ目に留めてもらうこともできないと思っていたので、まずは目を留めてもらうためのインパクトある“言葉”がほしいと思ったんです。だからある意味これも企画のひとつですね。それと先ほど触れたとおり、私はたまたまお手本となる方々と一緒に仕事をさせていただけたからこそ、色々なことを学ばせてもらえたので、そういう場を計画的に作り、提供していきたいと思っています。そうした考えもあって、今回「弟子入り」という強い名前を取り入れました。

――今の所の成果はいかがでしょう?
塩川:
こうした取り組みは、一回で目に見える成果がでるというものではなく、継続的にイベントをやっていくことが大切だと思っています。その中で、同じ業界の方々と話していると、結構このイベントを知っていただいているんです。ということは、それなりインパクトがあったかなと思います。繰り返し継続していくことによって、一つのやり方としてだんだんと良いものにしていけると思っています。

1Dayインターンシップの様子


――イベントはしばらく継続されるんですか?
塩川:
はい、今後も色々なやり方を考えています。次は3月10日に2回目の「独演会」イベントを行います。「弟子入り」という名前だけ聞かれるとよくわからないと思われることも多いのですが、「ゲームを創れる」ディレクターを育てたいという想いでこのイベントをやっています。ディレクターとして必要なことや考え方など、日々が実務で行っていることやノウハウを皆さんに共有させてもらうような内容です。全4回で構成していまして、それがひと周りしたら、また次の事を考えようと思っています。

――イベントで塩川さん自身も何か得られるものがあったのでしょうか?
塩川:
私自身も学ばせていただくことがたくさんあります。イベントなどで自分の考えを伝えるためには、事前に整理整頓しないといけないので、その過程で「なるほど、自分はこう考えていたのか」と気づいたりしながらまとめたりしています。自分の現状を客観的に見るという点でも、とても意義深いと思っています。

他にも、「CEDEC」というゲーム業界の講演イベントにも継続して出させていただいたり、全国各地の大学や専門学校で講義、講演を2010年からやっているのですが、受講いただいた方の延べ人数が2500人から3000人ぐらいになります。こうした取り組みを通じて、ゲーム創りに興味を持ってくれる方が少しでも増えたらいいなと思っていますし、さらにディライトワークスに興味持ってくれる方が増えたら嬉しいです。

――全員集めたらコンサートホールが満員になりますね!そこまで力を入れたいと思ったのはなぜなのでしょうか?
塩川:
まず、ディレクターという仕事をできる人がどんどん増えてほしいと、強く思っています。ディレクターはある種の絶滅危惧種だと思っているんです。そう考える理由としては、昨今の世の中で作られているゲームの数が増えていても、誰かが中心となってディレクションし新しいゲームを生み出したり、仕掛けたりすることは少ないのではないかと感じることがあります。

何かと似たようなゲームを作るときや、何かの続編を作るときに必要なチームの力は、新しく生み出すときの力とは別だと思うんです。そういう環境では、自分が体験してきたように新しいことを生み出し続けることのお手本になる人と出会って、その人がやっていることを間近で見ながら学んでいくという機会が減ってしまうと思っています。そうしたことから、私が経験してきたことを少しでも役に立てたい。そのような考えから、ディレクターを増やすためには“人を育てる”ことに注力するのが一番の近道じゃないかと思っています。

――ディレクターというところにこだわりがあるんですね。
塩川:
外から見るとディレクターという仕事は花形に見えるかもしれないのですが、実際はやる人、やれる人、やりたいと思う人というのは、それぞれ少なくなっているんじゃないかと感じています。おそらくゲーム業界で働く前なら、一本はディレクターをやりたいと夢を持って入ってくると思うんですが……その気持ちをちゃんと10年抱いてほしい。現実が見えてくると、ディレクターってなんでこんなに大変な仕事なんだろう、現場の作業の方が楽しいやって。物を作るのが好きな人が多いからこそ、そういうところに気持ちがいってしまう。

さらに、ディレクターという役割が、何かしらの職種に特化して長くやってディレクターになりましたというような話と、新卒からまだ間もないけどすぐにプロジェクトのディレクターを任されるチャンスがきました、というパターンの二極化しているように思います。どちらもあまり望ましい状況ではないと、最近考えるようになりました。例えばプログラマーやプランナーで経験を積むことは非常に重要なのですが、長年何かをやり続けていたことがディレクターとして直接役に立つかはまた違うかと思います。一方、突然「今日からディレクターだから」と言われ、物を実際に作ったり仕掛けたりすることを学ばないまま立場が付いてきてしまうというと、正しく身につける機会を失ってしまうのではないかという危惧があります。

――ディライトワークスではどのようにディレクターを確立しているんでしょうか?
塩川:
ディライトワークスでは、ディレクター陣しかいないディレクターセクションというのがあるんです。明確なメッセージとして、プランナーとディレクターは違う仕事で、もちろんプロジェクトマネージャーともプロデューサーとも違う仕事ですと。ディレクターはディレクターの仕事で職業なんですというところを、意識して分けています。だからこそ、そのディレクターになる人を少しでも増やしたいという強い想いがあります。

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《タカロク》
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