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「創点 弟子入りプロジェクト」で次世代を育てたいーディライトワークス塩川洋介氏インタビュー

FGO PROJECTクリエイティブディレクターである塩川洋介氏は他にも大学や専門学校などでの講演や講義も積極的に行っている。なぜここまでクリエイターの育成に注力しているのか?現在のゲーム業界を取り巻く環境も含め、話をうかがいました。

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◆目に見えるものに逃げないでほしい



――今ディライトワークスでは、どんなクリエイターが活躍しているんでしょうか?
塩川:
ディライトワークスには今二百数十人のスタッフがいるのですが、クリエイターにはディフェンスタイプの人が多いです。ディフェンスタイプとは、自分の作業に集中してもくもくとやっていくことが得意、職人肌で確実に仕事を遂行するタイプの人です。実行力が非常に高いので、今の会社やタイトルを支えています。ただ、これからやっていきたいことや、会社全体の構成も考えると、もう少しオフェンスタイプのクリエイターが会社に増えてくれると嬉しいなと思っています。

――その“増えると嬉しい”オフェンスタイプとはどんなクリエイターですか?
塩川:
どんな仕事でも、例えばディレクターでもプログラマーでもデザイナーでもそうなのですが、何かを生み出したり、やりたいことで周りを引っ張っていける人です。ある種の攻めであり、攻撃を担えるようなクリエイターがいっぱい増えるといいなと思っていて、そういう人を求めていますね。

――攻撃的な人ですか……。
塩川:
別に人格が攻撃的な人という話ではなくて(笑)。市場に対して何かを仕掛けていく人という意味で、そういう人を求めています。急募です。

――ゲーム業界全体で見ても、そういうタイプのクリエイターが少ないと思われますか?
塩川:
全体数ではすごく少ないと思います。例えばですが、他社の方とアートディレクションできる人が会社に何人いますか?という話をしたんです。そこで「こういう人がいるけど、その人20年アートディレクションやってる」みたいな話で、「全然新しい人が出てきてないんですか?」と聞いたら、「うん」と。結局何かをやりたいと思って“攻め”を担うということは、やりきる責任や、言い出したことを周囲に認めてもらえる能力も必要です。そして、本質的には言い出した張本人なので、結果に対しても責任をもつことになります。

――難しいところですね。そういう中で、今後クリエイターに求められるものは何だとお考えですか?
塩川:
いかに変化に強いかが重要だと思っています。ゲームの多様化も変化も10年前より激しい状況ですし、これから5年経ったらさらに加速しているのではないかと。そんな中で何をやっていればいいのか確証を持って言える人はいないと思いますし、とにかく様々なことが起こることを前提に、何が起こっても耐えうる柔軟性、基礎筋力、基礎体力を特に身に着けておいてほしいと思うんです。

――ではディライトワークスも含めて、ゲーム業界に入ってきている若いクリエイターはどんな方が多いという印象をお持ちですか?
塩川:
講演とかで学生さんと話をすることも多いのですが、“正解”を聞きたがる方が多いと思います。「これで合ってますか?」と。そこで、“目に見えるものに逃げないでほしい”という話をよくするんです。

例えば、データではこう、ランキングではこう、あのゲームではこうで、前作ではこうだったという、目に見えるものがあるんです。でもそれを追いかけ始めてしまうと、物を作る人間として思考停止になってしまう。目に見えていることが理由のすべてになってしまうんです。それだと成長の終わりだと思うので、答えあわせや正解探しをやらないで、とにかく自分で考え抜くっていう癖をつけようと、いろいろなところで伝えています。

――興味深いです。今は色々なデータを取りやすいからこそ頼りがちですが、それではよくないと。
塩川:
エンターテインメントは、ある意味目に見えないところに挑んでいく仕事だと思います。何かをやって確実に成功する方法があるなら、全ての映画が全米ナンバーワンになります。でもエンターテインメント業界の中で特出するほどの歴史や才能など、色々なものが集まっているハリウッドですら、成功するものと失敗するものがある。目に見えるものに縋っても、成功するかどうかは結局どこまでいっても五分五分なんです。だったらやっぱり、それを自分で考えられるようになってほしいですし、自分で創れるようになってほしい。答えあわせの癖がついたら、プロになってからも答えを探し続けるという仕事のスタンスになってしまうので、そういうことはある意味学生のうちから学ぶことが大切だと思っています。

――なるほど。そうした若い人たちを見て、他に思われることはありますか?
塩川:
意外とゲームを創りたいと思ってくれる人が多いと感じます。さきほども変化が激しいと言いましたが、以前とはゲームを取り巻く状況が大きく違っていて、家庭用ゲームもあれば、スマートフォン、インディーズ、VRとデバイスも多様化しています。ゲームってこういうものだという形がなくなっている状況です。それでもゲームという仕事に対して純粋に魅力を見出してくれてくださっている方がいるというのは、ありがたいなと思います。

――確かに、希望している方がたくさんいる印象です。そうした若手クリエイターの育成については、他にも色々と考えられているんでしょうか?
塩川:
個人的には新しいことをすることが好きなので、これからも色々チャレンジしていきたいと思っています。今後は、同じ方々に対して何かしら継続性のある育成施策をやりたいと思っています。独演会も全4回あるのですが、毎回同じ方が来るわけではないので、今後、同じ方に継続的に向き合っていくことによって、単発で講義を行うときとは違う刺激だったり、自分自身の学びがあるのではないかなと思っています。さらに、ディライトワークスだけでやることに特にこだわりはないので、それこそ学校とか、他の会社を含めて、一緒に何か大きなことをやれると面白いかなと模索中です。ゲーム業界に一石を投じられたら良いなと思っています。

――楽しみにしております!最後に、この記事を読んでくださっているゲーム業界志望の皆さんにメッセージをお願いします。
塩川:
ディライトワークスは「ただ純粋に、面白いゲームを創ろう。」という開発理念を掲げています。これは見る人によってはこの言葉の意味が変わってくると思うんです。ゲーム業界にいない方々から見れば、「何であたりまえのことを言ってるんだろう?」と思われるかもしれないのですが、ゲーム業界で何年か働いている人達にとっては、おそらくこの言葉が非常に奇異に聞こえると思います。

今ゲームを作る仕事の中で、“ただ純粋に面白さ”を追求するだけの機会はほぼ存在しません。みんないろんな理由でゲームを作っていくことになります。例えば上司が言っているから、予算がこうだから、納期がこうだから、そういう理由の為にゲームを作らざるを得ないようになるわけです。でもディライトワークスでは、実現不可能と言われかねないある意味青臭い目標を、あえて掲げて、“面白さ”を意思決定の基準としてゲームを創っていく。この言葉をあえて開発理念として掲げているのはそうした理由からです。この言葉が心に響くと感じた方と一緒に働きたいと思いますし、講義や講演でもそういう話をしていますので、機会があれば聞きにいらしてほしいと思います。来ていただけたら、それが嘘ではなく、この人達は本当に面白さの事しか考えずに仕事をしているということが分かると思うので、ぜひそういう機会に参加してもらえると嬉しいです。

――ありがとうございました!
《タカロク》
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