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【hideのゲーム音楽伝道記】第58回:『MOTHER』 ― 不思議でやさしくて感動的な、メロディを集める冒険。

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【hideのゲーム音楽伝道記】第58回:『MOTHER』 ― 不思議でやさしくて感動的な、メロディを集める冒険。
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インサイドをご覧の皆さま、ごきげんいかがでしょうか。ゲームとゲーム音楽をこよなく愛するライターのhideです。ゲーム音楽連載「hideのゲーム音楽伝道記」第58回目となる今回は、もうすぐ母の日ということで、それにちなんで『MOTHER』をご紹介いたします!


『MOTHER』は、コピーライターや「ほぼ日刊イトイ新聞」の主宰などで著名な糸井重里氏がゲームデザインを手掛けたRPGです。1989年7月27日に任天堂からファミリーコンピュータで発売されました。また、2003年6月20日には、本作『MOTHER』と続編の『MOTHER2 ギーグの逆襲』をカップリングしたゲームボーイアドバンス用ソフト『MOTHER1+2』が発売。2015年6月15日にはWii Uバーチャルコンソールで配信されました。

本作は、現代的な世界観で描かれるRPGです。舞台は、アメリカの架空の田舎町、「マザーズデイ」。この町では、部屋の中の電気スタンドや人形が突如として暴れだしたり、墓場から蘇ったゾンビが人々を襲ったり……といった様々な怪奇現象が続発していました。マザーズデイのはずれに建つ家に住んでいる主人公の少年は、その原因を探り出して大切な人たちを守るため、旅に出ることになります。

『MOTHER』は、糸井氏による軽妙なセリフ回しや、あたたかみとやさしさのある世界観が魅力なのですが、それと並んで非常に大きな魅力となる要素が音楽です。本作の作曲は、ロックバンド「ムーンライダーズ」のリーダーとして著名なミュージシャンの鈴木慶一氏と、『メトロイド』や『ドクターマリオ』などのゲーム音楽や、テレビアニメ版『ポケットモンスター』シリーズの主題歌などの作曲家として知られる田中宏和氏のお二人が担当しました。ファミコン音源でありながらじつに表情豊かな味わい深い楽曲が揃っていて、冒険を盛り上げてくれますよ。それでは、本作の音楽をピックアップしてご紹介していきましょう。

※本作の音楽は、「正式名称が判明している楽曲」と「正式名称が不明な楽曲」があります。曲名については「正式名称が判明している楽曲」のみを記載させていただきますのでご了承ください。

◆『MOTHER』の世界を彩る音楽たち


まずは、タイトル画面で流れる音楽「MOTHER EARTH」です。真っ黒の画面に浮かび上がる、『MOTHER』のタイトルロゴ。“O”の部分にあしらわれた青く美しい地球がゆっくりとまわる様子と、ノスタルジックで心に沁み込んでくるようなやさしい音楽のマッチングが、じつにあたたかみがあって、神秘的な魅力がありますよ。僕は、この音楽が大好きでついついずっと聴きこんでしまい、なかなかゲームを始められないことがよくありました(笑)。

ゲームの開始場所は主人公の家。家の中では普段、ゆったりとした穏やかな音楽が流れて落ちついた雰囲気があります……が、主人公が他の部屋に移動しようとすると、突然ポルターガイスト現象(※)が発生して、電気スタンドが襲いかかってくることに! スタンドと戦う際には、穏やかな楽曲から一転して低音の利いたロックサウンド調の楽曲が流れ、得体の知れない現象の恐ろしさと、それに逃げずに立ち向かう主人公の勇敢さを演出します。

※ポルターガイスト現象…… その場にいる誰も手を触れていないにもかかわらず、家具などの物体が移動したり、物を叩いたり引っ掻いたりといった音が発生する怪奇現象のこと。


家の地下室でとある人物の日記を見つけた主人公は、怪奇現象の原因を探るべく、旅に出ることになります。家を一歩出た瞬間から流れるフィールドマップの音楽が、「POLLYANNA(I BELIEVE IN YOU)」。この楽曲のゆったりとした穏やかな旋律は、やさしくもあたたかみがある『MOTHER』の世界を大いに彩っていますよ。この楽曲は下記の公式PVで聴けますので、ぜひ聴いてみてくださいね!


主人公の旅路の中では、幾度となく敵と遭遇します。その際にはもちろん戦闘曲が流れるわけなのですが、あまり殺伐とはしておらず、ポップなサウンドになっています。特に、ヒッピー風の「おにいさん」と戦う時の楽曲はとってもファンキーなロックンロール調のメロディで、プレイした方は皆ニヤリとしてしまうことでしょう(笑)。ゲーム発売当時に刊行された攻略本『MOTHER百科』(小学館刊)によると、あの『ドラゴンクエスト』などの作曲家として著名なすぎやまこういち氏も、この楽曲には大ウケしたのだそうです。

主人公は、自宅の近所に住む「ピッピ」という女の子が迷子になってしまったことを知り、その子が迷い込んでしまったという墓場へ向かうことになります。迷子のピッピを見つけだした後には、少しのあいだ共に行動することになるのですが、その時から聴けるフィールドマップ音楽「BEIN' FRIENDS」も名曲です! パーティメンバーが2人以上になると聴けるこの楽曲は、心がはずむような明るい曲調で、仲間が増えた喜びや、仲間とともに旅をする楽しさが表現されているように感じますね。この楽曲は、ピッピを助け、墓場を出た瞬間に初めて流れるのですが、暗くてどよ~~~んとした墓場の楽曲から一転明るい「BEIN' FRIENDS」が流れてきて、ホッと安心してワクワクした気持ちになったのが個人的に印象深いです。

やがて主人公は、とある場所に奇妙な洞窟を見つけます。ここで流れる音楽は、思わず鳥肌が立ち、身構えてしまうような恐怖感と神秘的な雰囲気が混ざっている楽曲で、「この先には何かがある…!」と本能的に察知させるような空気感を持っていますよ。

洞窟の奥からとある方法でワープした先に広がるのは、一面に桃色の大地が広がり、桃色の貝殻のような形をした建物が立ち並ぶ、不思議な異世界「マジカント」。ここで流れる音楽「MAGICANT」は、ふわふわとした伸びやかな音色による旋律が非常に心地よく、幻想的な世界観を彩っています。また、マジカントの北には、この地を統治する女王・クイーンマリーの城があります。ここで流れる楽曲「WISDOM OF THE WORLD」は、切なさや深い哀愁を感じさせる、しんみりしたメロディが印象深いですね。詳しくは伏せますが、物語上でも重要な意味を持つ場所です。

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マジカントから戻ってきた主人公は、サンクスギビングという町に到着。この町にあるティンクル小学校で、ロイドという少年に出会うことになります。この小学校で流れる音楽「TWINKLE ELEMENTARY SCHOOL」は、実際の学校で使用される「キン、コン、カン、コン」というチャイムのメロディが楽曲の中に組み込まれているのが特徴的ですね。

ロイドとの出会いの後、とあるイベントで、運休中だった鉄道が再開されることに。ここからは、各街をつなぐ鉄道列車・パラダイスラインに乗り、さまざまな他の街に移動することができるようになります。鉄道に乗って移動する際の楽曲「THE PARADISE LINE」は、アップテンポかつノリノリに奏でられる旋律で、鉄道を高速で走りぬける疾走感と旅情感を演出してくれますよ!

鉄道に乗るといろんな町に行けるのですが、その中でも僕が特に印象深いのが、スノーマンという雪が降る町ですね。ここで流れる音楽「SNOW MAN」は、まっしろな雪に覆われた町の情景に見事にマッチした、寒々しさがありながらもあたたかみのある、幻想的で美しい旋律が素晴らしいです! 『MOTHER』の音楽の中でも個人的に特に好きですね。なお、この町ではアナという少女と出会うことができます。

また、もうひとつ印象的なのが、大陸の北東にあるイースターという町ですね。ここは、大人たちがとある理由によって連れ去られてしまい、子どもたちだけが残って暮らしている……という町なのです。ここで流れる音楽は、残された子どもたちの寂しさを表したような、切なさにあふれるものになっていて、心をえぐられるものになっていますよ。

ゲームの終盤に訪れるバレンタインという町にあるライブハウスでは、主人公たちがステージに上がって歌を歌うというイベントがあります。この際の楽曲「ALL THAT I NEEDED (WAS YOU)」のポップでノリノリなロック調サウンドは、画面越しに見ているプレイヤーも楽しい気持ちにさせてくれるかと思いますよ! なお、この町ではテディというやんちゃな不良少年と出会うことになります。

ちなみに……アドベント砂漠という広い砂漠地帯では、とある条件を満たすことで戦車に乗ることができるようになるのですが、この時の楽曲がムチャクチャかっこいいですよ!! 「本当にファミコンの音楽か!?」というくらい、パーカッション風の音が激しくドコドコと響き渡るハイテンションサウンドが、戦車でガンガン進撃する気分を高めてくれます。これはぜひ、実際にプレイして体験してみていただきたいです。きっとテンションが上がりますから(笑)。

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やがて主人公たちは、ホーリーローリーマウンテンという山を訪れることになります。この地にある山小屋の中では主人公とアナがダンスを踊るイベントがあるのですが、その際に流れる楽曲「FALLIN' LOVE,AND」は幻想的かつ美しい、しっとりとした旋律で、ふたりの大切な時間を盛り上げてくれますよ。

そして、本作を語る上で絶対に欠かすことのできない楽曲が「EIGHT MELODIES」です。本作ではさまざまなメロディが世界中に散らばっており、それを集めてゆくことも大事な目的のひとつになります。1小節ずつすべて違うメロディを8つすべて集め、8小節からなる楽曲ができあがった時、物語上の大きな謎が解けるのですが、このシーンが物語的にも音楽的にもじつに切なくて、かつ美しさに満ちていてとっても印象的です……! 物語と密接に関係している、『MOTHER』を象徴する重要な楽曲だと思いますね。

その後、主人公たちはついに最終ボスのギーグと戦うわけなのですが、彼はキィーーー……キィーーー……ブォォォォン……という奇妙な音を発し、正体がつかめない奇怪な攻撃を仕掛けてきます。「どうやって倒すんだ……!?」と諦めかけそうになった頃、“ある方法”を使って彼に挑むことになるのです。ネタバレを避けるため詳しいご紹介は伏せますが、“音楽に関連している” とだけ言っておきましょう。これはぜひ実際にプレイして体験してみていただきたいですね。

◆サウンドトラック情報



本作の音楽CDとしては、ゲームの発売と同年の1989年に『MOTHER オリジナル・サウンド・トラック』が発売されました。“オリジナル”と書かれていますが、海外の歌手によるボーカライズアレンジ楽曲が大半を占めます(ゲーム中の原曲は、「THE WORLD OF MOTHER」というタイトルで、物語に沿った形のメドレー形式で収録されています)。

本アルバムは、作曲者の1人である鈴木氏がプロデュースを担当。ビートルズのほぼ全作品のプロデューサーを務めたイギリスの音楽プロデューサー、ジョージ・マーティン氏が作ったエアースタジオでレコーディングが行われ、さらにマイケル・ナイマン氏、デヴィッド・ベッドフォード氏といった大物ミュージシャンがアレンジャーとして携わりました。どの楽曲も聴きごたえがありますが、特に、St. Paul's Cathedinal Choir(セント・ポール大聖堂聖歌隊)が歌う「EIGHT MELODIES」は、心が洗われるかのような神々しいまでのあたたかみと美しさがあって本当に素晴らしいですよ。未聴の方はぜひお聴きになってみていただきたい名盤です!

ちなみに、このCDは一時期プレミアがつき、幻の名盤と呼ばれたこともあったのですが、15年後の2004年にデジタルリマスター版が発売され、だいぶお買い求めやすくなりました。こちらには、「THE WORLD OF MOTHER」に楽曲が追加されて尺が長くなったほか、『MOTHER2 ギーグの逆襲』の楽曲「Smiles And Tears」のデモバージョンが追加収録されていますので、今から購入される方はこちらをお求めいただくのがよいかと思います。

◆ゲーム音楽の範疇を超えた魅力があります


1992年に教育出版が発行した小学6年生向けの音楽の教科書『新版 音楽6』には、『MOTHER』の楽曲から「EIGHT MELODIES」の楽譜が掲載されたとのことです。当時としては、ゲーム音楽が教科書に掲載されるというのは異例のことで、まさに快挙と言えるでしょう。

【ちなみに】 ゲーム音楽が教科書に掲載された事例は、他に『ファイナルファンタジーIV』の「愛のテーマ」などがあります。また、今年の高校の教科書には、『ファイナルファンタジーX』の「ザナルカンドにて」や、『ドラゴンクエスト』の「序曲」が掲載されているそうです。実物を見てみたい…!(笑)

鈴木氏と田中氏が紡いだ『MOTHER』の音楽には、単なるゲーム中で流れるBGMという範疇を超えた、大きな魅力があるように感じます。「EIGHT MELODIES」が音楽の教科書に掲載されたという事実も、それを如実にもの語っているかもしれません。『MOTHER』の楽曲群が持っている、素朴で味わい深い、そして心を震わせる美しさは、ひとつの音楽として純粋に素晴らしいです。それに加えて、「世界中に散らばったメロディを集め、そのメロディが物語上で大きな意味を持つ」という、音楽がゲームの内容や演出に密接に関係しているのも特筆すべきポイントですね。

ゲームの内容的にも、『MOTHER』は非常に個性的です。特に、糸井氏が紡ぐ軽妙なセリフの数々はじつに味わい深く、時にはクスッと笑わされ、時にはハッと考えさせられます。たくさんの“遊び心”が詰め込まれていて、あたたかくて、やさしい気持ちになれる、とても素敵な作品ですよ。戦闘後、主人公が勝利した際に表示されるメッセージも、敵を「倒した」という形ではなく、敵が「我に返った」「おとなしくなった」などの表現で、殺伐としていないほのぼのとした世界観なのが僕は大好きですね。

コミカルかつセンチメンタルな物語、他にないユニークな世界観、そしてメロディアスでやさしく美しい音楽――。ゲームを構成する全ての要素が独特で心に残るものだったからこそ、発売から28年という長い年月を経た今でも、『MOTHER』という作品は多くの人に愛されているのではないだろうかと思います。現在のゲームと比較するとやや難易度は高めなところはありますが(特に後半の敵の強さとか……汗)、今も色あせない独特な魅力を持つ作品なので、若い世代の方も、ご興味をお持ちでしたらぜひプレイしてみてくださいね!

今回は『MOTHER』第1作についてご紹介しましたが、続編の『MOTHER2 ギーグの逆襲』や『MOTHER3』についても機会を見つけてぜひご紹介したいと思っています。特に『MOTHER2 ギーグの逆襲』は、個人的には数あるテレビゲーム作品の中でもトップクラスに大好きで愛してやまない作品なので、前編・後編に分けないと記事が長くなりすぎてしまいそうな気がしているほどです(笑)。ぽえーん!

【筆者プロフィール】
 hide / 永芳 英敬

ゲーム音楽ライター&ブロガー。ゲーム音楽作曲家さんへのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事など、ゲーム音楽関係の記事を主に執筆しています。最近は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』ですべての祠をクリアしました。ただ、コログは数が多すぎてコンプリートできる気がしません!(笑)
[Twitter] @hide_gm [ブログ] Gamemusic Garden

(C)1989 SHIGESATO ITOI/Nintendo
《hide/永芳英敬》

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