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【CEDEC 2016】アナログゲーム国内躍進のワケ―デジタルゲームと相互に影響しあう関係とは

横浜で開催されたCEDEC 2016にて、8月24日、ボードゲームやカードゲームなどのアナログゲームに関するパネルセッションが行われました。東京工芸大学の遠藤雅伸教授が進行を務め、アナログゲームの開発や販売を行っている渡辺範明氏と丸田康司氏が登壇。

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横浜で開催されたCEDEC 2016にて、8月24日、ボードゲームやカードゲームなどのアナログゲームに関するパネルセッション「アナログゲームが熱いって本当?~メカニクスデザインの最前線~」が行われました。今セッションでは、東京工芸大学の遠藤雅伸教授が進行を務め、アナログゲームの開発や販売を行っている渡辺範明氏と丸田康司氏が登壇しました。

■国内におけるアナログゲームの市場概況


まず、丸田康司氏が壇上にあがり、国内のアナログゲームの市場概況が語られました。丸田氏は『MOTHER2』『風来のシレン』といった数々のゲーム開発に従事、その後独立して高円寺にボードゲーム・カードゲーム専門店「すごろくや」を設立。ワークショップやイベントの開催、関連書籍の執筆などアナログゲームの伝道師として活動を行っています。

アナログゲームの定義は「人力に頼るもの」であると語る丸山氏。ジャンルとしては、トレーディングカードゲーム、テーブルトークRPG、ウォーシミュレーションゲーム、ミニチュアゲーム、囲碁や将棋といった伝統的なゲームがあるとしています。また、ボードゲームは、カードを使うゲームの他に『人生ゲーム』『モノポリー』『UNO』などの旧世代型、『カタン』『カルカソンヌ』『ニムト』『ドミニオン』などの近代型があるとしています。

現在の日本におけるアナログゲームの概況ですが、流通しているタイトルは約1000種、年間の新規発行される商用ゲームは300種類にものぼっているのだそうです。その内、ドイツやアメリカなど海外から輸入されたものが8割、国内製は2割ほど。国内製のゲームは、6年前までは数パーセントしかなかったとのことです。


2008年にアメリカで発売されたカードゲーム『ドミニオン(DOMINION)』が、コアユーザーへの普及を後押ししたと語る丸田氏。日本では『マジック・ザ・ギャザリング』からトレーディングカードゲーム需要は高まっており、『遊戯王』や『ポケモンカードゲーム』も多くのユーザーに支持されていました。『ドミニオン』はそれらユーザーを取り込むだけでなく、戦略系ゲームユーザーの指示も得ることができヒットを記録。2009年以降は、日本語版と呼ばれるローカライズ輸入版のアナログゲームの商品流通が急増していきました。現在も、アナログゲームはドミニオン系が国内市場の10%を占めているのだとか。


2015年の市場規模は30~40億円と予想されている。デジタルゲームの1兆3591億円と比べると0.3%と小さい規模ではあるが、アナログゲームの成長は著しい。
 
■国産アナログゲームの現状


続いて、ドロッセルマイヤーズ代表の渡辺範明氏が国内のインディーズ・アナログゲーム事情について解説。渡辺氏は、スクウェアエニックスにて約10年間ゲームプロデューサーを務め、現在は独立してアナログゲームの販売や開発に従事しています。

日本におけるアナログゲームはメーカー主導ではなく、アナログゲーム愛好家によるサークルが中心となって牽引してきました。今日までの規模になったのは、専門店が草の根的に引っ張ってきたことが大きいと渡辺氏は説明します。当初、専門店に置かれていたゲームは、欧州から輸入したゲームの外箱に和訳をテープで貼ったものが主流だったのだとか。現在では、印刷の段階で日本語にローカライズされたものが作られるようになってきており、完全日本語版も珍しくはありません。また、日本の特徴として、市場規模に対してインディーズ作家が多い傾向にあると渡辺氏は語ります。


ドイツのゲームショウで賞を受賞している作品もあるなど、海外のアナログゲームファンに名前が知られている作家が多い。


日本におけるアナログゲーム文化に最も影響を与えたのは、2000年にゲーム研究家の草場純氏によって始められたゲームマーケット(開始当初は中古アナログゲーム交換会)というイベントだったのだそうです。開始当初は創作アナログゲームを販売している参加者は少なかったものの、回を重ねて規模が大きくなるとともに創作アナログゲームの比率も増加していきました。現在、ゲームマーケットの運営はアークライトが行い、総合的なアナログゲームのイベントとして東京ビッグサイトで開催されています。


ゲームマーケットの参加者や出展ブース数は年々大きく伸びている。現在、ゲームマーケットで創作ゲームを制作・販売しているサークルは450を超えるのだとか。

日本国内の動きついて渡辺氏は、デジタルゲームによってゲーム文化が浸透して、潜在的にゲームを作りたい層が増加したためではないかと説明。コミケ等の影響で同人活動が活発だったことで、同人誌と同じく印刷物であるアナログゲームは作り方を想像しやすい環境だったことや、抽象化と見立ての文化がある日本ではミニマル(最小限)な作風への親和性があったのではないかとしています。

アナログゲームの制作は、少人数かつ低予算で作ることができ、作りたいものが作れるという利点があります。システムとデザインを作る人材さえいれば、10万円程で印刷所に依頼することもできますし、厚紙を加工して自分で作ることもできます。個人制作であれば、作家性や作品性も高くなります。アナログゲーム作りは、小説や作曲に近いのだと渡辺氏は述べます。

メカニクスとアートワークだけでできているためにどこまでもこだわることが可能で、創作アナログゲームはゲームデザイナーが育つ土壌にもなっているのだとか。インディーズのアナログゲームは商業のデジタルゲームから見ると小さく見えますが、ゼロからゲームのメカニクスを考案する機会が少ない会社のシステムと比較すると、デザイナーの育成の面では希少であるとしています。


アナログとデジタルのゲームデザインは直接転用できるわけではない。

デジタルゲーム開発者が集まるカンファレンスであえて行われたアナログゲームのパネルセッション。渡辺氏は、デジタルゲームとアナログゲームの関係について、親戚であるが同一ではない、相互で影響しあえる存在だと語っています。今パネルセッションは、デジタルゲームの開発者にとって、非常に興味深いものになったのではないでしょうか。
《Daisuke Sato》
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