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【CEDEC 2014】ゲーム業界における起業・・・4人の社長が赤裸々に語った「起業一年目の通信簿」

CEDEC2014初日の2日、「起業一年目の通信簿」と題されたパネルディスカッションが行われました。本講演は過去数年内に起業したゲーム関連会社の社長たちがこれまでの苦労を振り返り、起業のための準備や心構えを議論するという内容です。

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CEDEC2014初日の2日、「起業一年目の通信簿」と題されたパネルディスカッションが行われました。本講演は過去数年内に起業したゲーム関連会社の社長たちがこれまでの苦労を振り返り、起業のための準備や心構えを議論するという内容です。

ジェムドロップ 北尾雄一郎氏2Dファンタジスタ 渡辺雅央氏
ヒストリア 佐々木瞬氏架け橋ゲームズ 矢澤竜太氏


まず司会の北尾雄一郎氏から順に登壇者の紹介が行われました。北尾雄一郎氏はジェムドロップ株式会社の代表取締役です。1996年にゲーム業界へ就職し、日本一ソフトウェア、トライエースを経て、2013年5月にジェムドロップを設立。北尾氏はプログラマ出身ですが、現在はプロデューサーをつとめ、社内には企画やデザイナーも在籍しています。受託開発とオリジナルを半分ずつ手がけていますが、起業したきっかけはオリジナル作品を開発してユーザーまで直接届けたかったからだそうです。

佐々木瞬氏は株式会社イニスのエンジニアリングマネージャーを経て、2013年10月に株式会社ヒストリアを設立。起業したきっかけは、前職のプロジェクトが終わったところで貯金も溜まっており、起業する良いタイミングがおとずれたからだそうです。長年、Unreal Engine 3を使用していた経歴があったため、Unreal Engine4が登場したタイミングで会社をUnreal Engineの専門集団としてまとめ上げました。

渡辺雅央氏は株式会社サイバーコネクトツーに15年つとめ、合同会社2Dファンタジスタを設立しました。前職の環境は恵まれたものでありましたが、インディーゲームという新しい波を見て、自分もゼロからスタートとして何か残してきたいと思い、起業を決意したそうです。起業のきっかけとして一番大きかったのはGDC参加も含めた2週間の北米旅行だったそうです。様々なデベロッパーや大学を訪れて刺激を受けたといいます。

矢澤竜太氏はローカライズ会社、フリーランスゲーム翻訳者を経て2013年から日本と海外の橋渡しを目的にした架け橋ゲームズを立ち上げました。会社としては設立しておらず、元同僚のザック・ハントリ氏と共に2人で活動を行っています。現在、Unity Technologies Japanのゲームパブリッシング部門のパートナーとして活動しています。



さてここからは登壇者の1年を振り返った「通信簿」が発表されていきました。登壇者には合計4つの質問が投げかけられ、それぞれ自己申告で「はなまる」か「さんかく」を選ぶという形式になっています。

最初の質問は「旅の仲間は集まりましたか?」というもの。起業において一番苦労することとして良い仲間や人材を集めることといいますが、一年を振り返って良いチームを作ることができたのでしょうか。



架け橋ゲームズの通信簿は「はなまる」でした。小さな組織からスタートすることを決めており、最初から2人だけで当分やっていこうと決めていたそうです。スピード感と専門性が売りであるため、専門家に任せられることは外部にまわしてコンパクトな組織を運営していくそうです。

一方、2Dファンタジスタの通信簿は「さんかく」。誰と一緒に仕事するのかに対するこだわりを強すぎるため、集まった人材には非常に満足しているものの、なかなか人が集まらないことを反省しているそうです。とはいえ、あえて小さな規模の会社を選んだため、これからも「この人と仕事がしたい」ということを重視して仲間を集めていく予定です。

ジェムドロップも最初は人を集めるのに苦労しましたが、結果として目標には達成したので通信簿「はなまる」です。仲間集めのポイントとして、お金をかけない、人とあって話をすることを強調。求人広告は一切使わず、新卒採用は自分から学校に行って学生と話をするそうです。また登壇者の会社と合同で企業説明会を実施したそうです。現在は小さな会社で働きたい学生も増えているため、かなりの応募が集まったといいます。

二番目の質問は「初仕事は順調に決まりましたか?仕事はうまくとれていますか?」という経営者には少し辛い内容のもの。ジェムドロップは初仕事から途切れずに仕事が得られ、通信簿は「はなまる」です。うまくいった理由として、独立する前に小規模デベロッパーの社長の方からいろいろな話を聞けたことが大きいと北尾氏は語っています。

ヒストリアの佐々木氏は初仕事を前職の会社からいただいたそうです。週三日でできる内容であったので、残りの二日を使って起業準備したそうです。その後は戦略的にUnreal Engineの専門集団としてアピールしていった結果、多くの仕事が舞い込んだそうです。いわゆる一点突破型の「ランチェスター戦略」であったかもしれないと振り返っています。

架け橋ゲームズだけは通信簿は「さんかく」でした。というも、立ち上げて4ヶ月くらいまったく仕事がなかったそうです。最初の仕事はインディーゲームのローカライズであり、それがUnityの仕事につながりました。今は安定して仕事ができており、ニコニコ生放送などで海外インディーゲームの紹介なども行っています。

三番目の質問は「進捗どうですか?」というもの。各社示し合わせたように「駄目です」という回答が返ってきました。架け橋ゲームズの矢澤氏は一番、つらい時期はパンの耳を食べて飢えをしのいだという壮絶なエピソードを紹介。独立するまでの移行期間の仕事をうまくコントロールできなかったことが原因だと振り返っています。



2Dファンタジスタとヒストリアはオリジナル作品を思ったほど作れなかったことを振り返っています。2Dファンタジスタの渡辺氏は当初、年に10本オリジナルを作ろうと意気込んでいたものの、結果として2本しか作れませんでした。ヒストリアの佐々木氏は当初、オリジナルがやりたかったが、他の仕事が増えてできなくなってしまったと振り返っています。とはいえ、現在はUnreal Engineの仕事が軌道に乗り、講演やコンサルなどにも力を入れているそうです。

ジェムドロップの北尾氏は、人材と仕事の確保のタイミングが合わないことが一番の問題だと指摘しました。仕事を先に取るか、人材を先に取るかということは、経営者にとって難しい問題ですが、そのバランスをうまく取ることが重要となります。また受託開発と並行して自社開発の作品を作る予定が、受託で精一杯になってしまうこともあります。

最後の質問は「次の学期に頑張る事は決めてますか?」です。これには各社、「はなまる」でこたえており、明確なビジョンを持っているようです。



ヒストリアはUnreal Engine4の専門集団として強化していくとともに、自社でゲーム開発するために人を増やしていく予定であるそうです。ジェムドロップはオリジナル作品を開発してユーザーまで届けるという原点を忘れないまま、規模を拡大していく予定です。2Dファンタジスタは対照的に会社の規模は7、8人をマックスとしながらオリジナルのゲームを作っていくそうです。架け橋ゲームズは日本初のコンテンツを海外に持っていくことが目標です。

質疑応答では「オフィスはどうしているのか?」、「起業するのとフリーランスでいるのとメリット・デメリットは?」といった実践的な質問が投げかけられました。来場者も多く、ゲーム業界における起業に対する関心の高さを感じました。
《今井晋》
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