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【CEDEC 2014】良策を連発するはずが公開反省会に・・・サイバーコネクトツー&ドリコム『フルボッコヒーローズ』の成功談と失敗談

CEDEC 2014の2日目となる9月3日、株式会社サイバーコネクトツーと株式会社ドリコムが共同開発・運営するスマートフォンアプリ『フルボッコヒーローズ』についてのセッションが行われました。

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【CEDEC 2014】良策を連発するはずが公開反省会に・・・サイバーコネクトツー&ドリコム『フルボッコヒーローズ』の成功談と失敗談
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CEDEC 2014の2日目となる9月3日、株式会社サイバーコネクトツーと株式会社ドリコムが共同開発・運営するスマートフォンアプリ『フルボッコヒーローズ』についてのセッション、「事前登録者数45万人を獲得した施策『フライングゲットガチャ』 良策を連発する為の異業種協業体制とは!?」が開かれました。

登壇したのは、サイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏、サイバーコネクトツー開発部 ディレクターの小野田一彦氏、ドリコム取締役 ソーシャルゲーム事業本部長の長谷川敬起氏、株式会社ドリコム ソーシャルゲーム事業本部プロダクト部 プロデューサーのまんぞう氏。

講演タイトルを見る限り、コンシューマーゲーム畑のサイバーコネクトツーと、モバイル・ソーシャル畑のドリコムによる協業体制を上手にやった話をするという内容です。ところが松山氏の口から最初に飛び出したのは、「6カ月前に講演の応募をしたが、あれから半年経って状況が変わっている。ぶっちゃけ、うまくいっていない。今現在の真実と、今後どうしていくかをお伝えする」という一言。一転して反省会の様相となりました。

左から、長谷川敬起氏、まんぞう氏、松山洋氏、小野田一彦氏


■「フライングゲットガチャ」は成功した

『フルボッコヒーローズ』は、シューティングとRPGを融合し、敵を倒して爽快感を得られることを主軸にしたアプリ。スタートダッシュが難しい新規IPで、事前登録をできるだけ集めるための施策が紹介されました。ちなみに、この話は成功談です。

最近のスマートフォンアプリでよく見られるパターンとして、リセットマラソンがあります。最初に無料でもらえる有料相当のガチャでレアなユニットを手に入れられるまで、何度もゲームをやり直してガチャを引き続けるというものです。

これを逆手に取り、サービス開始前にガチャだけを回せるようにしたのが『フライングゲットガチャ』です。規定回数のガチャを回した後も、SNSでシェアすると再びガチャが回せるという仕組みで、バイラル効果も狙っています。事前にガチャを回しているため、サービス開始後はすぐにゲームを始められるので、プレイヤーとしても嬉しい仕組みというわけです。

この効果もあり、『フルボッコヒーローズ』の事前登録者数は、新規IPとしては桁違いの約48万件。フライングゲットガチャは1,000万回近くも回されました。この成功を受けて、ドリコムでは「フライングガチャ」として他のタイトルでも導入されます。

この企画が生まれたのは、リリースの2カ月前のこと。ふと話が持ち上がり、長谷川氏に伝えたところ、やってみようという話になり、早速社内のスタッフを調整して実装されました。まんぞう氏は、「他社とやっていると、こういった企画も人探しからやることになる。社内でできれば短時間にできる」と語りました。

また事前のプロモーションにおいては、質のいいコンテンツを重視することも大事だと言います。サイバーコネクトツーが制作したPV動画が2本あり、これを事前登録開始からサービス開始までの間に公開。メディアにも取り上げられ、サービス開始までに間延びしたり、忘れられたりしないようにすることに貢献したと言います。遊ぶ前から飽きられないために、こういった良質なコンテンツを用意したり、SNSでユーザーとのコミュニケーションを構築するなどの施策も取られました。

講演タイトルになっている「フライングゲットガチャ」については、「単体効果はさほど高くないと思っている」とも語られました。何よりも良質なコンテンツを用意して配信し、ユーザーを飽きさせないことが大事だとしています。

リセマラ(リセットマラソン)を逆手に取った「フライングゲットガチャ」


開発においては役割分担を明確にし、ネットワークサービスに知見があるドリコムがサーバー側、コンシューマーの開発経験でアクションの手触りなどに理解があるサイバーコネクトツーがクライアント側を開発するという分業になっています。ただ実際の開発では完全な分業にはできず、両社の思想の違いなどでズレが生じたため、ドリコムのスタッフがサイバーコネクトツーの事務所に出向する形にして対応したのだそうです。

小野田氏は、この異業種間での開発時に発生した問題と対応策について語りました。考え方はあらゆるところで違いがあり、例えばゲームデザインについての考え方では、サイバーコネクトツーがバランス調整のしやすさを考えてレアリティによる強さの差をあまり出さないようにしたのに対し、ドリコムはレアリティが高いほど能力を高くすべきと主張したそうです。結果、両方を作ってモニタリングし、ドリコム側の意見でまとまったそうです。

開発現場では当初、ミーティングでお互いに意思疎通が取れないことが頻発したと言います。中でもスケジュール感の違いは顕著で、ドリコムはリスクヘッジを組み込んだスケジュールを敷いたのに対し、サイバーコネクトツーは想定上最善の流れでスケジュールを組んでいました。他にも様々な思想の違いがあったため、すり合わせに先述のスタッフ出向をしたことに加え、スクラムによるタスク管理で両方のスタッフを一括管理したり、「鉄の掟」として必ず定例会を開催して、問題点を共有するなどしたのだそうです。

最終的に、ドリコムとしては今までなかったネイティブアプリの開発ノウハウ、クライアントサイドの開発知見を得られたと言います。サイバーコネクトツー側も、サーバーサイドの開発を任せてクライアントに集中できたことがよかったと語りました。

『フルボッコヒーローズ』は、難しい初動で約48万の事前登録を集める成功を収め、ビジネス的にも十分な成功を収められるかに見えました。ところが……。

ドリコムのスタッフが出向し、コミュニケーションを綿密に


■サービス開始時の勢いは徐々になくなり……

松山氏はリリースから6カ月経過した現在、売上が伸び悩んでいることを明かしました。「あくまで例えばの話で」と前置きしつつ、サービス開始の初月は売上が1億円を越えていたのが、翌月は8,000万円、次は6,000万円と下がり続け、7月には2,000万円ほどまで落ち込んだと言います。また運営に対するネガティブなイメージが根強いことも挙げていました。

長谷川氏はこれまでの動きを見て、「フライングゲットガチャはうまくいった。事前登録は、よくて3万4万というところが、48万という数字が出せたのは大成功。初月は期待値どおりに大きくスタートできたが、やり方を間違えると6カ月で下がってしまうという1つの事例になった」と語りました。

小野田氏はこの半年を振り返り、「ふがいない。もっとやれると思っていた。イベント運用やユニット追加、お客様を楽しませる要素は毎週それなりに盛り込んできたが、やはりコンシューマー上がりということもあって、半年前はわからないことが多かった。タイムマシンがあったらハンマーで頭を殴りたいほどわかっていないところがあった」とひたすら反省の言葉が続きました。

まんぞう氏は失敗の原因について、「バトルを楽しんでもらうというのが大きなコンセプトだが、1つのバトルを提供するためのコストが大きくなる設計になっていた。週1のイベントを入れるのも大変で、ゲームコンセプトをユーザーにうまく伝えられなかった」と語りました。

この点について松山氏は、「それはリリース前からわかっていた。ユニットイラストカードを発注して増やせばいいと言うものではなく、3Dモデルも必要だし、アクションシューティングなので個性をもったショットを作らねばならない。新たなユニットを追加するたび、家庭用ゲームのマスターを上げ続けるようなもの」と語りました。

それでもこの形を通したのは、「それだけ面白いから。ファミコン時代のような原始的な面白さ、触っただけで気持ちよく、またやりたいと思うゲーム性を届けたかった。面白ければ遊んでもらえるので、それを継続できるものにしていこうとした。それはできていると思っている。日々リリースされる他のアプリ群とは、一線を画すタイトルになっている」と、アプリ自体のコンセプトや完成度には一定の満足を示しました。

これに対し長谷川氏は、「バトルは面白いが、こういう結果になっている背景に、運用コストが高くてやりたいことができないということもある。面白いバトルの体験をユーザーに長く届ける続けるためのコンセプトの練りこみが足りていなかった。レアリティを上げて勝つだけでなく、多様なキャラとプレイングで楽しいものを目指したが、それを実現できないゲームだったことが問題だった」と問題点を分析しました。

これらの話を受けて、松山氏が「次やるの(また一緒にやるのか)?」と問うと、まんぞう氏は「同じような状況でやりたいかというと、やりたくない。ただ、半年で得られた知見でもう1回できるなら、もっとうまくできると思うしやってみたい」と回答。小野田氏も「負けっぱなしは大嫌いなのでもう1回やりたい。今回を糧にして、反省を生かしてやりたい」と語りました。

そんな『フルボッコヒーローズ』は、8月25日より『フルボッコヒーローズX』と名前を変え、再スタートを始めています。内部的には、サイバーコネクトツーが主導で運営するスタイルに変更したり、スタッフの数を大幅に削減するなどしたこともあり、KPIは上昇に転じているそうです。

松山氏は最後に「今から半年後、AppleやGoogleのランキングを見ていただいたとき、『フルボッコヒーローズ』が上がってきてるな、CEDECであんなことを言っていたのに復活したね、といわれるようなアプリにしてみせますと宣言したい」と力強く語りました。

「フライングゲットガチャ」の成功談をするはずが、半年でまさかの反省会へと変わってしまった今回の講演は、さらに半年後どうなるかという気になる話題を残しての終了となりました。やはりスマートフォンアプリは一筋縄ではいかないという教訓を聴講者に残す、結果的には良い講演になったと言えるかもしれません。

スタートは成功しても、その後がうまくいかなかったという講演内容になってしまった
《石田 賀津男》
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