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【レポート】インタビューSUDA51 vs Game*Spark in 神戸電子専門学校

セミナー終了後、グラスホッパー・マニファクチュア須田剛一氏に単独でのインタビューに応じていただきました。「誰?」な方GDCの押しかけインタビューあたりもご覧ください。

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【レポート】インタビューSUDA51 vs Game*Spark in 神戸電子専門学校
  • 【レポート】インタビューSUDA51 vs Game*Spark in 神戸電子専門学校
セミナー終了後、グラスホッパー・マニファクチュア須田剛一氏に単独でのインタビューに応じていただきました。「誰?」な方は GDCの押しかけインタビューあたりもご覧ください。


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――こういった講演にいらっしゃることばしばしばあるのですか?

たまにありますね。去年神戸電子専門学校さんにお話をいただいて、その際学生さんにかなり近い距離でお話できたので、「ああこれは毎年やるべきだな」と思いました。それで今年2回目来た次第です。

――非常に漠然とした質問になりますが、手応えのようなものはありましたか?

じゃんけん大会は盛り上がりましたね(笑)
※公演終了後、GhMグッズを聴講者にプレゼントすべく開催された情け無用のrock-paper-scissors。なお、こっそり記者も参戦したものの初戦敗退でした。

――今日は『KILLER IS DEAD』のお話をディープにおうかがいしてしまいところですが発売直後ですのでそれはさておきます。

本日の講演で、若手の育成について強調されていました。いわゆる「須田ゲー」は数多くリリースされてきましたが、タイトルごとに関わっている度合いは変動していらっしゃるようで、どこからともなく「須田は社長業がメインになってしまった」だなんて声が聞こえてきたりもします。たとえば『KID』では少なくともスタッフロールではプロダクション以外の肩書きは「ストーリー」になっていました。

GhMの独自の遺伝子を受け継ぐためには、後進の育成が欠かせないでしょう。そのために、このような取り組みに参画されているというと考えてよろしいでしょうか?


まず、『KID』については脚本は僕がやっています。

そして、後進のことももちろん考えています。生え抜きということにこだわるわけではないのですが、若いスタッフをしっかり成長させて、自分たちのゲーム創りというものを教えこむ人材育成をしたいですね。そこで、いわゆるコアチームをより強くしていきたいと考えています。やはりスタジオの特徴や文化というものはあります。その点については、丁寧にヒトを育てていったほうが、当然ながらGhMのモノづくりを理解・修得しやすいですしね。

さらに、長い間、数年ではなく5年10年、20年、あるいは100年、GhMを担える人材を育てるというのは常に意識しています。それができた年、できなかった年、いろいろあります。様々な反省があります。一方、今回のように学生にたいし話をする機会を得られるというのは、近い距離感からスタートできます。これは大事にしたいところです。

――『KID』でいうとディレクターの新英幸さんがかなり前に出てアピールされたりもしていました。それを見て、「もしかして今回は須田ゲーじゃないのか?」と警戒しながらプレイし始めたのですが、やはり"This is GhM"、"This is SUDA51"を感じました。組織作りと言葉にするのは簡単ですが、GhMはそれに成功しているのかなと今回の講演を拝聴して感じ入ってしまいました。

まあ『LOLLIPOP CHAINSAW』も『Shadows of the Damned』もそうなのですが、新には実際の現場ディレクターとして参画してもらっていました。今回はより中心となって創ってもらった形ですね。

――逆に、今回の講演の中でもちらりと「現場に戻る」的な発言がありましたが、これは具体的にどのタイトルでということはありますか?

特定のタイトルについての話ではありません。これから創るものすべてについてです。

――もっとゲーム創りに、再び関わっていく、と。

これまでも関わってはいたのです。それが間接的になっていたのです。現場のプログラマに直接指示を出すことがめっきり減っただとか。週一とか週何回か程度のフィードバックに留まってしまっていました。ディレクターやプロデューサー、リーダークラスとはよく話をするのですが、各スタッフの席の隣に行ってああしようこうしようというのが減ってしまっていました。それを元に戻したいのです。ゲームのチューニング周りは今もやっているのですが。

時間的・場所的な問題もあるのですが、会議室でやるもんじゃないな、というのが今の結論です。なんとなく思ってはいたのですけれども。

――もっと開発者と膝つき合わせて、ということですね。

そうです。

――そういったスタンスは『月極蘭子のいちばん長い日』あたりから採用されますか?

あれは開発がクリスピーズさんとDigital Works Entertainmentさんです。GhM自体は直接的に開発にはかかわっていません。

――では、須田さんによる世界観構築という関わり方でしょうか?

映像面とコンセプトが主です。定期的にクリスピーズの片岡さんと打合せをしています。

――プロモーションムービーを観たとき、サイドスクロールの感覚こそ『TOKYO JUNGLE』っぽいものの、演出のテイストからはGhMのDNAを強く感じたので、いったいどういう開発体制なのだろうと思っていました。

開発は片岡さんが中心です。

――話題を少し『KID』の方へ。スタッフロール最後にバーンと「ストーリー: 須田剛一」と出るわけですが、今回は物語をすべて書かれたのですか?それとも大枠のプロットの部分ですか?

全部ではありません。まず通しのプロット・脚本を書いて、演出の部分で穴のあるところを埋めたりします。途中で追加したミッションもありますからね。山口雄大さんや牧野圭祐さん、そして新の3名でリレーしながら補足していった形です。

――ところどころ『killer7』を彷彿とさせるような演出が見受けられました。内容・表現、端々に感じるところがありました。やはり須田さんの中で"killer"の系譜として思うところがありましたか?

んー。あまり同じじゃあないんですよね。どちらかというとアクションゲームですから、アクションのパートとパートの中間を演出でしっかりストーリーで埋めて伝える必要と意味合いがあるわけです。アドベンチャーゲームとしてのストーリーと、アクションゲームとしてのストーリーはまったく違うものです。

プレイヤーがアクションする前後の表層の部分での演出になるわけです。その裏側、さらにもう一段階裏側、というものを物語で伝えるのはジャンルの性質や仕組み上難しいところがありました。「アクションゲームとしての物語」という質感を強く持っていました。

――そうやってご説明いただくと、なんとなく分かる気がします。浜田山のあたりとかでしょうか。ああいう見せ方は『killer7』では難しかったのかな、と。

ただ、表現にかんするギミックのパーツには須田さんらしさを感じました。たとえば字幕がゆらゆら揺れることとか、最初にチェスのシーンが挟まれることとか。


あれは全部スタッフのアドリブです。

――えっ。アドリブなんですか。

そうです。チェスもね、見て「ああ、こんな演出にしたんだ」って思いました。

――初っ端にチェスや国家など『killer7』を彷彿とさせる用語が並んだので「おお、killerで行くんだ!」と感じたのですが、別段そういう意図はなかったと。

あれはスタッフがやってくれました。とくに演出は山口雄大さんなので、気を利かせてふくらませてくれたということですね。

――素晴らしいです。もはや「言うまでもない!」といった状態ですね。

あと字幕にかんしては、『killer7』でフォントやエフェクトをやっていたプログラマーが途中から参加してくれて、彼がやってくれました。それで揺らしました(笑)

――でも、「殺」や「死」のデコレーションはありませんでした。

あれは全部一個一個僕が指示を出していましたから。丁寧にやらないとできないです。あのへんは当時のスタッフの手癖がなければなりません。

――今回講演にあったオフショアについてですが、これはプログラミングですか?

プログラミングとレベルデザインと絵、まあ基本的には全部です。

――それでも意思疎通はできましたか?

苦労はしましたね。教えながらやるというのも同時並行でやっていましたから。当時タイにあったグループ会社へ人員を送り込んで製作してもらって、できあがったものを投げてもらってこちらで組み上げるというようなキャッチボールです。

すべてを振ってまるまる一個上がってくるということでは、絵素材については安定感がありました。そこは指示書に近いものが存在しますからね。

他方、レベルデザインについては「『KID』はこういうレベルの方針でいきます」というゲーム全体のマインドがしっかりしていなければなりません。そういう部分の理解と、さらにUnreal Engineの理解、プログラマの技術、それぞれのコンビネーションになります。これはそう簡単にうまくいくものではありません。相性もありますしね。

――それでもオフショアしたというのは、もちろんメリットがあってこそです。どのような利益がありましたか?「これは効いた!これはオフショア抜きでは無理だった!」というような部分はありますか?

物量です。一番の理由は物量をしっかり稼ぐためです。そこで結果を出せなければオフショアの意味もありません。

――最後に、ベタなのですが次の作品のイメージ・構想について語れる範囲でお教えいただけますでしょうか。

「もうちょっとまってください」ってところですね(笑) イメージ……イメージかあ……

――先ほどのお話を総合すると、iOS/Androidなどスマートフォン対応もしつつ、コンソールでマルチプラットフォームで、そしてUnreal Engineを使った何か……?

わかんない……わかんないなあ。でも、次のプラットフォームですからね。現場と技術を成長させなければならないことは確かです。そのためには時間も必要です。技術カーブを見ながら対応するというのが今のタイミングです。技術を踏まえてゲームを創るわけではないですが、そこから生み出されるイメージもありますから。そういったことをいつもいろいろ考えています。

――と、いうことは、言葉を変えるとPlayStation 4/Xbox Oneをターゲットとした新作を考えていらっしゃると。

それもなんとも言えないところですね(笑) 次世代はしっかりやっていきたいなと思っています。

――「次世代特有の要素も含めた新しい遊び」と。ありがとうございました。


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――『KID』まだ2周目途中なんですけれど……

もう2周目いったんですか。なんとまあ。

――買ってその日にいきました。

あれは結局どう解釈すればいいんですか?アレは○○が△△なんですよね?で、■■■■■■が▲で。じゃあ、▽▽は誰だったんですか?


▽▽は●●●ですよ。

――あ、▽▽が●●●。やっぱり。ということは▽▽が奪われたというミッション自体がxxのメタファーだったということになるわけですか。

んー。どうだったかなあ……。みんなで組み上げたからなあ……。

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須田剛一VS学生編へ続きます。
《Gokubuto.S》
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