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【China Joy 2013】現地パートナーと二人三脚・・・ランド・ホー!上海スタジオ訪問

ゲームビジネス その他

青木信幸氏(左)と徐一旻氏(右)
  • 青木信幸氏(左)と徐一旻氏(右)
  • 青木信幸氏(左)と徐一旻氏(右)
  • 青木氏のデスク
  • 上海スタジオの風景
  • 上海スタジオの風景
  • 上海スタジオの入るビルの風景
  • SEIOSOFTの玄関
  • SEIOSOFTの建物入り口
中国進出で苦戦が続く日本企業。2013年5月のグリーによる中国オフィス閉鎖も記憶に新しいところです。1年前には同じく楽天が中国検索サイト大手の百度と提携を解消。日中間のビジネスの難しさを改めて知らしめました。歴史認識に領土問題と、固有のカントリーリスクも存在します。「これからは中国市場だ!」が、いつの間にか「中国市場はこれからだ!」にトーンダウンしている感もぬぐえません。

そうした逆風にもかかわらず、2012年7月に上海スタジオを開設したのがランド・ホー!です。同社は1999年に起業し、コンソールゲーム・モバイルゲーム・テレビ番組制作を柱に成長。近年では、ユービーアイソフトのダンスゲーム『Just Dance』の開発受注をはじめ、海外大手との取引経験が豊富な企業としても知られています。はたして、上海スタジオがどのように運営されているのか、China Joyにあわせて取材してきました。

ランド・ホー!の中国進出は上海晟欧軟件技術有限公司(SEIOSOFT)との提携を通して行われました。同社は経理ソフト「勘定奉行」で有名なオービックの子会社で、社内には数十人のエンジニアがずらり。上海オフィスはその一角にあり、東京からモバイル制作部リードプログラマーの青木信幸氏が室長として派遣され、SEIOSOFTのエンジニアと共にモバイルアプリの開発を進めていました。

それにしても、中国のシステム開発企業と日本のゲーム会社による提携という、ちょっと珍しいスタイルです。SEIOSOFTで副総経理を務める徐一旻氏は「これまで日本のクライアント向けに、日本向けの製品しか作ってこなかったが、競争の激化で利益率が下がっており、より付加価値の高いソフト開発が必要。ゲームなら世界中に発信できる」と提携の目的について語りました。

きっかけは人を介しての紹介でしたが、ランド・ホー!側でも以前から中国進出の機会をうかがっていたと言います。まずはアプリの中国向けローカライズを数本手がけるところからスタートし、徐々に様子を見ながら、2012年7月に業務提携を結ぶまでにいたりました。青木氏は「まずは日本向けアプリのオフショア開発を行うところからスタートし、ゆくゆくは中国市場向けにアプリを展開していきたいですね」と抱負を語ります。

「もともと海外でゲームを作ってみたかったし、ある程度のキャリアがあって、独身の者が他にいなかった」と青木氏は赴任の理由を語ります。これまで『ダービータイム2』(PSP)、『名探偵コナン 探偵力トレーナー』(DS)、『もふもふ牧場』『宇宙戦艦ヤマト(復活篇)バトルカード』(モバイル)などの開発に携わりました。そこから上海スタジオに赴任し、現在は自らが日本語版のディレクターも務めた『アルパカ天国』の中国語版ローカライズを手がけたところ。他に数本のラインが進行中で、早く中国向けにアプリを現地開発して販売したいといいます。

開発チームは9名で全員がプログラマー。20代後半から30代前半で、日本のアニメやゲーム好きが集められました。彼らを統括するのがマネージャのキョウ氏で、長くオービックで中国側担当部長として活躍し、日本での滞在歴も長いベテラン開発者。ランド・ホー!との業務提携にあわせて呼び戻され、新たに青木氏と開発メンバーの橋渡し役となりました。青木氏も「キョウさんに頼る点が大きい」と、高い信頼感を寄せています。

ちなみにプライベートでは中国語を特訓中という青木氏。もっともプログラマー同士、開発言語でのコミュニケーションは取れるとのことで、現在はUnityやCocos 2d-xなどの講習を実施しながら、ゲーム独自の高速化技術などのノウハウも学ばせているとのことでした。もっとも、これから本格的にアプリの現地開発が進んでいくと、プログラマーだけでは足りなくなります。その際は現地の他の開発会社と、業務提携することも視野に入れているとのことでした。

もっとも、日本と中国では文化もビジネス監修も違います。徐氏は「中国では、まだまだクランチタイムに一気に徹夜して作るようなところが残っていますし、日本と比べて閉鎖的なところがありますね」と言います。そこで重要なのは「郷に入っては郷に従え」の精神で、お互いの文化や慣習を尊重すること。また歴史問題や領土問題などについては「心理的なしこりは、仕事には影響しない」と答えました。

「ビッグプレイヤー同士が提携すると、お互いに自分のやり方を変えたくないので、えてして失敗します。弊社はゲーム会社ではないので、ゲームの作り方はわからない。一方でランド・ホー!は中国のビジネスがわからない。現在は開発提携に留まっていますが、これから中国向けにアプリを展開していく段階になると、より両社の関係性を高める努力が必要になっていくと思います」と徐氏は説明します。

一方で青木氏も「中国向けのローカライズやカルチャライズでは、現地の考えをどんどん取り入れている」とのこと。あるアプリでは、キョンシー風のキャラクターや、中国風の衣装が必要だという中国側のニーズに対して、日本側のアーティストにデザイン画を発注し、素材を制作してもらって組みこむなども行われました。またテキスト翻訳も社内のスタッフが担当したとのことです。

また現在はPCオンラインゲームが圧倒的な中国市場も、これからはモバイルゲームが逆転するのでは、という可能性が示唆されました。「PCゲームは若者中心で、16歳から30歳くらいが中心層です。一方でモバイルゲームは、より幅広い年齢層がプレイします。これまでモバイルゲームのプレーヤーは、農村から都市に出てきた出稼ぎ労働者が中心だと言われてきました。日中働きづめで、夜にケータイくらいしか楽しみがない層向けの娯楽というわけです。これがスマホの拡大で大きく拡大する可能性があります。手元にスマホがあると、つい遊んでしまいますしね」(徐氏)

中国にいきなり現地スタジオを構えるのではなく、現地の非ゲーム業界の会社と業務提携を結んで進出するというスタイルは、これまで見られなかった新しいスタイルだといえるでしょう。「中国進出には信頼できるパートナー探しが最重要」などとよく言われますが、その点でも興味深い間柄といえそうです。今後どのようなアプリが中国向けにリリースされていくのか。また、その中から日本に逆輸入されるアプリがあるのか、楽しみです。
《小野憲史》

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