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ココロスコープ&カンガエルートだけじゃない!従来システムやサウンド面もパワーアップした『逆転裁判5』開発陣インタビュー(2)

『逆転裁判』シリーズ6年ぶりの新作となる『逆転裁判5』。開発陣インタビュー第2弾では、新たに搭載された「ココロスコープ」「カンガエルート」をはじめ、パワーアップした従来システムや3DSならではのサウンド面について伺いました。

任天堂 3DS
シナリオディレクター・山崎剛氏
  • シナリオディレクター・山崎剛氏
  • プロデューサー・江城元秀氏
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『逆転裁判』シリーズ6年ぶりの新作となる『逆転裁判5』。開発陣インタビュー第2弾では、新たに搭載された「ココロスコープ」「カンガエルート」をはじめ、パワーアップした従来システムや3DSならではのサウンド面について伺いました。

――新システム「ココロスコープ」についてお聞かせください。

山崎:今回『逆転裁判5』の企画を立ち上げて新しいシステムを考え始めたとき、最初から「心理」というのをやろうと思っていたんです。今まで『逆転裁判』シリーズでは証拠品と証言のムジュンを指摘しながら法廷で戦ってきたので、証拠がすべてでした。そこで新しい要素を入れるなら、逆に証拠と対極にあるもののほうが面白いだろうと。

実際、現実の裁判でも事件でも、関わった人たちの心理や感情というのは重要なポイントだと思います。これまでゲームで扱ってこなかったというところもあり、心理という新しい切り口の法廷バトルを入れたいというのが最初の思い付きでした。

では心理をどうゲーム化するかという話になるのですが、正直すごく大変で二転三転しました。心理というのは目に見えない部分ですし、あいまいじゃないですか。しかしゲームはシステマチックに作らなくてはいけない。そこに落とし込むのは苦労しましたね。

僕が最初に考えたアイデアは、今の形とは全然違いました。探偵パートで証拠を集めるように、登場人物たちの「この人はこういうものが好きで喜ぶ」「この人はこういうものが嫌いだから嫌な感情がでる」という心理情報を集めて法廷に持ち込み、これを使って指摘するといったものです。感情の種類もたくさんあって複雑でした。

しかし『逆転裁判』シリーズのシステムは、複雑ではダメです。シンプルで面白くないといけない。元々「法廷バトル」というシステムがシンプルかつ面白いシステムとして完成しているので、そこに複雑なものを入れてしまうとユーザーの気持ちやストーリーの流れを停滞させてしまう。尋問を解いているときの感覚と同じくらいのペースでプレイできる内容でないといけないということもあり、もっとシンプルにしましょうと。

そこで、まず感情を4つに絞りました。それと証拠品を集めるのではなく、その場で感情と証言のムジュンを突くというポイントに絞り込んでいって「ココロスコープ」が出来上がりました。

江城:「ココロスコープ」のプロトタイプはシンプルに絞り込めていて、遊びとしては分かりやすかったんですけど、奥深さが足りなかったんです。4つの感情と、証言のムジュンを指摘するだけになってしまったんですよ。最初はそれでも面白いと遊んでくれるでしょうけど、複数回となってくるとユーザーは飽きてしまうだろうと。ですので、具体的にどうこうとは言わなかったのですが「浅いから深くして」と伝えて、1回考えて作ってもらったのが 「カプコン夏の新作体験会」で発表した「感情の暴走」なんです。

山崎:感情と証言のムジュンを指摘しようとしても、1つの感情が暴走して感情が見えなくなる。この状態を解決しなくてはいけないというフローを入れたら面白いんじゃないかなと。結果的にとても良い形になりました。
この「感情の暴走」が入ったことで、キャラクターの性質や性格をより詳細に描けるようになったんです。例えば、2話に「天馬 ゆめみ」というキャラクターが登場しますが、彼女は極度の怖がりなんです。しかも妖怪が世の中にいると信じている。そのため、彼女は怖い思いをしたときに恐怖の感情が暴走して、世の中に妖怪がいるかのように見えてしまうというネタを作ることができました。

これにより、彼女は「怖がり」「妖怪を信じている」というキャラクターだというのを、システムとシンクロして表現できたのが良かったです。他のキャラクターに関しても、どういうものにどういう感情を持つのか、どういうところで暴走するのかが重要なポイントになったので、シナリオ側もそれに合わせてネタを考えました。キャラクターを深く掘り下げられるシステムになったなと思います。

「ココロスコープ」の画面は、キャラクターの証言を切り替えるとビジュアルが少し変化します。目には見えない心理をグラフィカルに表現するために、切り替わるときにちょっとしたアニメーションを入れました。これまではテキストを書けば済んでいた部分をすべて絵で描かなくてはいけなくなったので、作業量は格段に増えましたね。

デザイナーたちも、絵を1つ1つ出すとなると「大変だ!」という感じだったんですが、やるとなるとこだわって作ってくれました。1話でも、上からガレキが降ってきているように、少しずつ動かしながら表示して、細かい演出をしっかりつけています。その後の話でも「巧の技」とでもいいますか、細部へのこだわりが活きたものが見れると思います。注目してください。

――「カンガエルート」についてお聞かせください。

山崎:「カンガエルート」は、自分の心の中で推理を組み立てていくというものですね。今までの『逆転裁判』シリーズでは、事件の後半にナルホドくんがピンチを迎えると「発想を逆転させるんだ!」と、今までの事件の情報を整理して新しい発想に辿りつく瞬間をシナリオ上で語っていました。そこをゲームにして、ユーザーにプレイしてもらえないかと考えて生まれたシステムです。ナルホドくんがすごいスピードで考えて結論に至るという流れをイメージしているので、実際の法廷での時間は1秒くらいしか経過していないという、瞬間的な思考を表現しました。

ここは完全にナルホドくんの脳内世界です。その中で事件の情報を整理し、1つ1つ問題に答えていくことで新しい発想に至る部分を再現しています。そのため問題はいくつかあるんですけど、それぞれをテンポよくどんどんクリアして、最後に新しい発想を体験できるようにしました。あえて簡単に解けるものを用意しているので、画面の表現やBGMによるスピード感を感じながら気持ちよく解いてもらえるんじゃないかと思います。

江城:このシステムはユーザーを悩ませたりペナルティを与えたりするような、難易度を上げるものではありません。あくまで今までの『逆転裁判』シリーズの中で、ゲームが勝手に語っていた部分にプレイヤーが介入できるというものです。主人公であるナルホドくんとプレイヤーがよりシンクロできると没入感が増しますから、ナルホドくんの思考を自分で追いかけて体験できるのが「カンガエルート」というシステムだと思ってください。ナルホドくんが逆転の発想に辿りついた時、プレイヤーが「やってやったんだぞ」という気分になれますよ(笑)

――3Dになり、探偵パートもよりパワーアップしたということですが。

江城:探偵パート最大のポイントは、現場も3Dになっているということです。これまでは2Dのビジュアルにタッチして証拠品を集めていましたが、今回は怪しいと思った場所にカメラを寄せたり、自分で机の下を覗き込んだりすることができます。立体視により、本当に調査している感覚を味わいながら、より没入感のあるシステムにできています。

とはいえフリーカメラにして、調べるところはすべて自分で探してくださいとなるとストレスがたまりますよね。あくまでも調べられるポイントはゲーム側で用意していますので、ある程度限定することによる遊びやすさは用意しています。それと「何もないようだ」と返すのが増えれば増えるほど手を抜いたなと思われてしまうので、調べたときのメッセージにはちょっとした会話を盛り込みました。

こうした要素があったので、探偵パートは夏の体験会までずっと出せなかったんです。夏の体験会に向けて探偵パートの体験版を作ってくれと言ったのですが、本編の制作が佳境の時に、何を考えているんだと現場からひどく怒られました。しかしゲーム中の一部分を切り取ってしまうと、先行のネタバレになりますよね。じゃあ新しく話を考えないといけないよね、そうですよねという流れになり、山崎が作ってくれたんです(笑)

山崎:開発チームとしてはネタバレがすごく嫌なので、それを人質に取られたようなもんです(笑)。新しく作らないとネタバレになるよって言われたら、じゃあ仕方ないって。

江城:このバージョンは夏の体験会専用なので、ゲーム本編には入っていないオリジナルのショートストーリーです。会場に来てくださった方はかなりラッキーですね。遊んだユーザーからの反応は「面白かった」というのが多くてよかったです。今後も機会があれば、どこかで遊べるようにしたいですね。

山崎:『逆転裁判』シリーズは、法廷パートと探偵パートで成り立っています。法廷パートが最も面白い部分なので、ゲーム中はしっかり法廷パートを遊んでもらって、探偵パートはあくまで法廷パートの準備としてするっと進んでほしいという希望がありました。そのため探偵パートは、できるだけストレスなくプレイできるように作っています。スピード感を保ちつつキャラクターとのストーリーを楽しんだり、しっかり現場を調べて情報を収集したりできますよ。

――「みぬく」はどう変化したのでしょうか?

山崎:『逆転裁判4』に登場した「みぬく」というシステムは、法廷で使用していました。しかし今回の法廷ではユガミ検事に邪魔されて使えなくなっていますので、探偵パートで活躍します。探す部分はあくまで正面だけなのですが、モデルが3Dになったからこそ表現できた「クセ」「仕草」が入っています。今までとは異なる見え方になっていますので、ぜひ注目してください。

探偵パートは「みぬく」もそうですし「サイコ・ロック」も活用します。ナルホドくんが主人公のパートもあればオドロキくんがプレイヤーキャラのパートもあるので、それぞれの探偵パートで「みぬく」「サイコ・ロック」の特色を楽しむことができます。

江城:例えば『逆転検事』シリーズでは、御剣検事を動かす探偵パートが1つの遊びとして成立していました。ゲームのテンポもつけやすく、ユーザーのテンションを細かく上げていくことができたんです。しかし『逆転裁判』シリーズは、探偵パートのテンションが下がりやすいんです。だからこそ法廷パートでばっと上がる、この落差が楽しみの1つでもありました。しかし、この探偵パートでもテンションを上げて遊べる要素はないかと考えていたんです。探偵パートを上げて、法廷パートをもっと上げればいいんじゃないかと全体的な底上げをしています。自らハードルを上げていますが、探偵パートだけでも十分面白いものに仕上がりました。

――3DSならではというと、サウンドにもずいぶん奥行きがでましたね。

江城:ハードが3DSになって、サウンドの性能もずいぶんパワーアップしました。今回の作曲も岩垂徳行さんにお願いしたのですが、岩垂さんの頭にある曲の構成や広がりを極力DSというスペックで表現するための工夫が必要でした。というのも、これまではフルの音源データのようなものをそのまま使えなかったので、DS用の音源データに置き換えるという作業が発生していたんです。

しかし3DSではそのままの音源を再生可能となったので、ヘッドフォンをしないと分からないような細かな楽曲の編成も100%出せるようになりました。そのため、より奥行きを感じられるようになったと思います。

サウンドを担当した堀山が公式ブログでも書いたのですが、3DS本体のスピーカーでサウンドを聞く時は、曲のバランスや音の厚みがスピーカー向けに最適な調整をした状態で流れます。またヘッドフォンを挿すと、ヘッドフォン向けに自動で最適化にする仕組みを入れました。ヘッドフォンで聞くとまた違う感覚で音楽を聞けるようになっているので、ぜひヘッドフォンも利用してもらいたいですね。

――木槌の音など、SEも新しくしたとお話しされてましたね。

江城:BGMはもちろん、SEも含めて、いわゆる使い回しというものは1つもないんです。すべて作り直したのですが、印象は従来と変わらない、でも本作ならではの要素を入れるというこだわりのSEを作ってもらいました。

山崎:2Dのグラフィックを3Dにしたのもそうですし、SEもそうなんですけど、今回はすべての面においてやりすぎなくらいパワーアップしないといけない。でも、遊んできたユーザーの頭の中にある『逆転裁判』シリーズから大きく変わってもいけないということで、どこを変えてどこを変えないかというのはすごく注力して考えました。

SEに関しても、あくまで元の音のイメージを残しつつ、高音質で良い音にしようと。木槌の音1つに関しても、僕が「ちょっと違います」っていうと「どこが違うんだ」って感じなので、SE担当もすごく苦労していました。ありとあらゆる木槌の音を出してくれて、どれも木槌の音としてリアルですごく良かったんですけど、前と印象が違うものはダメなんです。落としどころを探すのがとても難しくて、非常に苦労しましたね。でも、そのおかげでパワーアップしつつ、元の印象も残っているいい落としどころになったと思います。

江城:コアなファンの方は「もしかして木槌の音良くなった?」とか「ポポポの音(文字の流れる効果音)が、前と少し違うけど、良い音だよね」と反応してくれていたので、作り手としては嬉しかったですね。気づかせないように良くするという所に気づいてくれたというのは、それだけ真剣に聞いてくれたということですから。

――岩垂さんといえば『逆転裁判』シリーズにお馴染みの方ですが、今回はどのようなコンセプトで作曲を依頼されたのでしょうか。

江城:そもそも『逆転裁判5』の開発チームは、サウンドディレクター、グラフィックに関してのアートディレクター、シナリオディレクターなど、ディレクションを専門に分けて作ってきたんです。もちろんチームを運営するディレクターも別にいるのですけど、分業という形ではありません。1つのテーマに対して各ディレクターが集って、例えばシナリオはこういう方針でいきます、グラフィックではこういう演出をつけます、じゃあBGMはこうしたほうがいいよねという意見をサウンドディレクターに伝えて、そこから岩垂さんとのディスカッションが始まるんです。

そして出来上がった曲を各ディレクターが共有して聞いて、もちろん山崎もコメントしますし、アートディレクターからは絵の観点からサウンドに対するコメントが入ります。それをサウンドディレクターがまとめて、岩垂さんとコミュニケーションするという手法を取りました。

山崎:企画を立ち上げた際は東京に来ていただいて、そこで打ち合わせをしました。そのときから「DSから3DSになるので、全体的にパワーアップしましょう」というのが1つ。またナルホドくんが弁護士として復活し、前作から6年ぶりに『逆転裁判』シリーズが復活するということもあり、キーワードは「復活」にしようというのをお話ししました。すべての曲のテーマが復活というわけではありませんが、全体のコンセプトは「復活」としています。

――制作の手法としては珍しいパターンですね。

江城:『逆転検事』シリーズでは、山崎がシナリオとディレクションをしつつ、すべてのハンドリングをしていました。やはりハードも変わって色々とパワーアップしないといけない時、1人のディレクターがすべてをまかなうのは限界だったんです。ですので、だったら例えばグラフィックを3D化するなら、そのためのディレクションをする専用のポジションを作ろうと。もちろんそれぞれが勝手にディレクションをするのではなく、ゲームとしてのコンセンサスは常に取ってきました。

クオリティの目指すべきポイントや方針は僕のほうから出して、クリエイティブに落とし込んでいく段階で各ディレクターが共有します。さらに各ディレクター達がポリゴンモデルを作っているスタッフやアニメを作っているスタッフに指示を出し、形になってきたものを他のディレクターが見て、問題ないかチェックを入れました。1人あたりの作業負荷を軽減させつつ、トータル的なクオリティを上げるという仕組みになっていますね。こうした手法も『逆転裁判』シリーズとは全く違います。

(続く)


8月1日掲載予定:ナルホド&ミツルギにヒゲが生えていた?!シリーズ最大のボリュームとなったシナリオにも注目 ―『逆転裁判5』開発陣インタビュー(3)

8月2日掲載予定:シャチを弁護して無罪を勝ち取れ!クリア後にも楽しめるDLCやタイアップも盛りだくさんの『逆転裁判5』開発陣インタビュー(4)
《近藤智子》

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