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【CEDEC 2010】果たして3日間でゲームは作れるのか

「CEDEC CHALLENGE」の一環として開催された「三日でゲームを作ってみる」で、『モバゲータウン』運営会社のDeNAメンバー6名が、会場に寄せられたテーマをもとにソーシャルゲームを開発しました。

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「CEDEC CHALLENGE」の一環として開催された「三日でゲームを作ってみる」で、『モバゲータウン』運営会社のDeNAメンバー6名が、会場に寄せられたテーマをもとにソーシャルゲームを開発しました。CEDEC最終日に行われた報告会では、『ゼビウス』の開発者として著名なモバイル&ゲームスタジオの遠藤雅伸氏の司会で事後検証を実施。来場者を交えて、さまざまな議論が展開されました。

「三日でゲームを作ってみた」報告会


ゲームのテーマは初日の午前中に来場者から募集されたもの。DeNA南場智子社長が投票箱から引き当てたのは「プラットフォームウォーズ:mixiとGREEとモバゲーが激しく社員を奪い合って売り上げを競うゲーム」でした。この難題に挑んだ勇者たちは、エンジニアの上田智氏、黒田映史氏、越智峻介氏と、デザイナーの大和涼子氏、サトウテン氏の5人パーティ。途中からUI担当デザイナーの渡部綾歌氏も助っ人に加わり、無事ミッション達成。最終日の配信にこぎつけました。

完成したゲームはD社、G社、m社という3社の新人ディレクターとなって「プログラマー」「プランナー」「ディレクター」を引き抜きつつ、ゲームを完成させて売り上げを競うというもの。社員の顔グラフィックは来場者から希望を募り、写真撮影したもので、いわば「実写取り込みゲー」。プレイヤー間で彼らをお金で「一本釣り」する一方、それぞれ忠誠心も持っており、時には断られることも。まさにソーシャルゲームならではの内容となっています。

完成した『プラットフォームウォーズ』。パロディや実写取り込みが満載の、CEDEC限定ゲームにふさわしい内容だ。


報告会では、はじめに経過報告が行われました。まずテーマが決まると、全員で大枠の仕様について議論を開始。ホワイトボードを前に、1時間半程度で内容が固められます。ゲームのおもしろさの観点から具体的な内容に落とし込むと共に、役割分担などを決定。CEDEC限定ゲームならではの要素として、来場者の写真を撮って顔グラフィックに使う、来場者参加型ゲームにすることが決められました。

この作業と平行して、エンジニアは登録ページやマイページ機能など、とりあえず動く部分からコード作成を開始。あわせてデータベーステーブルも作成していきます。細部の仕様決定はエンジニア主導で行われましたが、これがDeNAのスタイルだとか。デザイナーはゲーム全体のイメージや、キャラクターなどのグラフィックを作成。ホテルに帰宅後も作業を続ける予定でしたが、ネットが繋がらないアクシデントが発生し、初日はそのまま就寝してしまいます。

2日目の午後には、エンジニアは開発機能、スカウト機能など、よりコアな機能を実装。ソーシャル性についても、この段階から考え始められました。デザイナーはイラストに色をつけたり、タイトルロゴなどを作成。渡辺氏も助っ人に加わり、いよいよ作業が佳境に入っていきます。重要ポイントの一つとなる画面遷移の決定では、チーム全員でディスカッションが繰り広げられました。懸案のネット環境もホテルを変えることで対応し、深夜まで作業が続けられていきます。

最終日の午前中には、ある程度動くモノが完成し、エンジニアによってパラメータ調整が行われました。昼前にはデザイナーが作成した画像をあてはめ、コーディングが行われます。そして午後3時には完成! サーバにアップロードされ、遊べるようになりました。配信URLはTwitterで公開され、報告会が開催された午後6時前後では、ユニークユーザーが319人、12万PVを記録しました。

難波社長が開会宣言をする中、ギャラリーに囲まれながら粛々と開発が進む。

エンジニアとデザイナーに別れて開発が進む。画面遷移では両者で議論も


筆者もプレイしてみましたが、「バックマン:80年代のミッキーマウスを開発」などパロディネタが満載で、カートリッジもどこかで見たデザイン。最初は何も考えずにクリックしていくだけで進んでいきますが、途中から開発スタッフが足りなくなり、他社から引き抜く必要が出てきます。ところが開発予算から捻出してお金を積んでも、引き抜きを断られ、思わずムカッとしてしまうシーンも。ゲームもサクサクとプレイでき、気がつけば思わずクリックを繰り返していました。

チームリーダーとしてプロジェクトを推進したエンジニアの黒田映史氏によると「あと1日あればもっといろいろな追加ができたと」のこと。後でエンジニアの面々に質問したところ、Flashによる演出やチュートリアルなどを追加したかったそうです。ストレスと快感のループ演出はゲームデザインの基本。確かにゲーム完成時や引き抜き時などに、Flashによる演出などが入ると、それだけでリズム感が生まれてきます。コンソールゲームとは別物とみなされがちなソーシャルゲームですが、こうした発言からも、土台の部分は同じであることが感じられます。

また個人的にはエンジニアがプランナーを兼ねるという、今回のチーム構成が興味深く感じられました。本作ではゲーム内処理が、ほとんどサーバ側で行われています。これを管理するエンジニア自身がゲームデザインを行い、必要な素材をデザイナーに発注するというのは、なるほど効率的な開発スタイルでしょう。なお同社では初期チームが企画1名、エンジニア1名でスタートするとのこと。端末側の処理が複雑になると専門の企画職が必要になる、ということかもしれません。今後スマートフォンでのソーシャルゲーム開発が一般化すると、今度はここにサウンドスタッフが必要になりそうです。

このほかエンジニアとデザイナーが一緒になって、画面遷移のデザインが行なわれた点も興味深いポイントです。何度もクリックを繰り返すモバイル向けソーシャルゲームでは、いかに不要なストレスを感じさせずに画面遷移をさせるかが、プレイ感覚の向上に大きな影響を及ぼします。こうしたインタラクティブなポイントで作業効率を上げるには、職種を超えたディスカッションが必要だと言えそうです。

司会を務めた遠藤雅伸氏。エンジニアの上田氏、黒田氏、越智氏。デザイナーの大和氏、サトウ氏、渡部氏。


質疑応答ではコンソールゲーム開発者からの質問が多く見られました。ただし、今ひとつ議論がかみ合わなかった印象が残ったのも事実。ゲームのおもしろさを作り上げて、それを軸に開発が進められるコンソールゲームに比べて、ソーシャルゲームではユーザーの反応を見ながら、どんどんアップデートしていける良さがあります。この違いは、実際に開発を経験してみなければ、実感しにくいのかもしれません。

筆者の周囲でも、アイディアの取捨選択に迷うくらいなら、実装して配信し、ユーザーに判断してもらえばいい、という声も聞かれるほど。デザイナーの大和氏も「短期間で開発して、どんどんユーザーの反応が見られるのが、たまらない快感」と語りました。この点をうらやましく感じた開発者もいたのではないでしょうか。

また本セッションのとりまとめを行った、元スクウェア・エニックスの對馬正氏は「コンソールゲームでは3日で作れても、すぐに発売というわけにはいかない」とコメント。実際に配信して、多くの人に体験してもらうところまでたどり着けるのが、モバイル・ソーシャルゲームの良さだと解説しました。また「コンソールゲームの開発者にとって、モバイルゲームは転職対象になっていない。自分たちのスタイルを広く知って欲しかった」とチャレンジに参加した本音を覗かせていました。

アドバイザーの對馬氏。


ちなみに投票箱に残っていたテーマは、ドライブゲーム・シューティングゲームなどの定番ジャンルから、「禿頭のキャラクターが床を滑る距離を競う」などの奇ゲー系、はては「AI」「プロシージャル」など、実現性が疑われるものまで多種多様。その中で図らずもCEDECらしいテーマを引き当てた南場社長の名状しがたい力と、命令一下スタートし、わきめもふらず差乗して、完成させた開発力が、同社の躍進ぶりを端的に表しているのかもしれません。
《小野憲史》

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