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【GDC 2009】小島監督が基調講演で語った「不可能を可能にする」ゲームデザイン

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【GDC 2009】小島監督が基調講演で語った「不可能を可能にする」ゲームデザイン
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GDC4日目、KONAMIの小島秀夫監督が「Solid Game Design:Making the ‘Impossible’ Possible」(ソリッドのゲームデザイン:「不可能」を可能にする)と題した基調講演を行い、「メタルギア」シリーズの歴史をたどりながら、自身のゲームデザイン哲学について語りました。

GDCは初参加だと語る小島秀夫氏。


はじめに小島監督は、ある課題を前にした時、不可能だと思ってしまう理由には、過去に経験や前例がないためで、そうしたことがらでも考え方を変えたり、状況が変わることで、乗り越えられると語りました。その上でこれをゲーム開発に当てはめると、不可能だと思われる課題でも、「1:ハードウェアの進化」「2:ソフトウェアの支援」「3:ゲームデザイン上の工夫」で解決できると指摘しました。

課題の解決方法にはハードとソフトとゲームデザインがある。


その後、小島監督はこのセオリーを「メタルギア」シリーズの開発の経緯をたどりながら、実証していきました。

初代「メタルギア」(1987年)の開発は、上司の「アーケードで人気のコンバットシューティングをMSX2で製作しろ」という課題から始まりました。しかしMSX2ではハードの限界から、画面上に表示できる敵兵や敵弾が限られてしまい、ゲームが成立しませんでした。そこで小島氏は「隠れて進む」ステルスアクションを発案、完成にこぎつけました。ハード性能による壁を、ゲームデザインで乗り越えたわけです。

MSX2では表示できるキャラに限界がある隠れて進むゲームなら実現可能だ
初代「メタルギア」を発売ゲームデザインで壁を乗り越えた


続編「メタルギア2 ソリッドスネーク」(1990年)では、同じMSX2でより進化したステルスアクションの製作が課題となりました。そこで「敵兵士の視界の拡大と足音の察知」「ステージの拡大とレーダー機能の追加」「潜入→逃走から、潜入→逃走→回避へとモードを追加」などの変更点を加え、より緊張感のあるステルスアクションを生み出しました。これもまたハード性能の壁がゲームデザインで乗り越えられた例です。

「メタルギア2」でステルスアクションの基本が完成再びゲームデザインで乗り越える


その後MSX2で3Dステルスアクションを開発するという課題が与えられましたが、これは如何ともしがたく失敗。ハードウェアの進化も、ソフトウェアの支援もない状態では、ゲームデザインの工夫だけで壁は乗り越えられませんでした。しかしPSの登場で状況が一変し、「メタルギアソリッド」(1998年)として発売されます。これによりゲームデザイン的にも、袋小路に追いつめられても、足下のダクトに隠れるなど、多彩なステルスが可能になりました。視点も多彩になり、ステルスアクションの魅力が一気に拡大します。シリーズではじめて、ハードウェアの進化が課題克服に貢献したのです。

「メタルギアソリッド」で3Dステルスアクションに進化ハードの進化が大きく貢献


次の課題は「よりリアルなステルスアクションを実現する」というもので、ハードウェアもPS2となりました。しかしPS2の性能では、リアルな表現といっても限界がありました。そこで課題設定を「より臨場感のあるステルスアクション」に修正し、風雨の表現などを実装。60フレームで多彩な動きを可能にしたり、部位損傷や一人称視点での攻撃などの追加もなされ、「メタルギアソリッド2 サンズオブザリバティ」(2001年)となりました。これもまた、ハードウェアの進化が貢献して、壁を乗り越えられた例です。

「2」は世界的なヒットを記録した。PS2での開発が課題克服に大きく貢献した。


「2」の世界的な大ヒットを受けて企画された「3」は当初、新ハードで開発される予定でした。しかしハードは同じPS2となり、新たにゲームエンジンが作り直されました。これによって、建造物以外に自然環境でのステルスアクションが可能になりました。カモフラージュや動植物の補食などの遊びも取り入れられています。これが「メタルギアソリッド3 スネークイーター」(2004年)です。シリーズで初めて、ソフトウェアの支援を味方に、壁を乗り越えたのです。

前作と同じハードで作られた「3」ゲームエンジンの再設計が大きく貢献した。


さて、当初三部作の予定だった「メタルギアソリッド」シリーズでしたが、続編の要望には逆らえず、新作の開発が始まりました。ちょうどそのころ「究極のハード」の存在が噂にのぼりますが、ハード性能に限界があるのは変わらず、「PS3で新しい潜入感覚をもったゲームを作る」ことが最終的な課題となりました。これが「メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット」(2008年)です。その上で本作では、戦場という流動的な環境の中で、自ら状況に介入して遊べるようになりました。再びハードウェアの進化を得て、壁が乗り越えられたのです。

環境への潜入が可能になった「4」PS3の性能のもと、具体的な「課題」を設定


このように、シリーズの成功と、それに伴って出現する「続編」という壁を、まず「現実的な課題」に置き換え、時にはハードの進化、時にはソフトウェアの支援のもとに、ゲームデザイン上の工夫で乗り越えてきた小島氏ですが、自身は「日本の古い世代のゲームデザイナー」だと語ります。ハードの制約をうまく逆手に取り、ゲームデザイン的な視点から不可能を可能にしてきたというわけです。しかし小島氏は、昨今の欧米のゲーム開発はこれとは異なり、ゲームエンジンなどのソフトウェア技術をもとに、ハードの制約を正面から踏破する傾向にあると語ります。ロード時間を体感させずにマップ上を進めたり、すべての建造物を破壊できたり、といった具合です。そして現在のトレンドも、このタイプのものだと分析します。

シリーズの歴史。常に制約を味方に付けながら進化してきた。日本はゲームデザイン、欧米はソフトウェア技術ドリブンで進化。


そこで小島氏は、今後予定されるハードウェアの進化の下に、欧米的なソフトウェア技術の支援と、日本的なゲームデザイン上の工夫をうまく組み合わせて、さらに高みをめざすと語りました。そこでのミッションとは、新しい「メタルギアソリッド」です。その上で「不可能と思われることの90パーセントは可能である。残りの10パーセントも技術とともに可能となる」という言葉で講演を締めくくりました。

ゲームデザイン、言い換えれば「柔よく剛を制す」という、きわめて日本的な手法で壁を超えてきた小島監督。しかし日本と西洋の文化をほどよく調和させる「和洋折衷」もまた、日本の伝統的な手法です。20年以上のゲームデザイナーとしての実績を経て、新たなシフトチェンジを計る小島監督の挑戦はまた、日本のゲーム業界が今日、直面している課題でもあります。はたしてどのような解決法を見せてくれるのか、大きく期待したいところです。
《小野憲史》

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