―――マルチプラットフォームならではの苦労というのはありましたか?
世取山: まず、プロデュースの観点からですが、マルチプラットフォーム対応の難しさというのは『II』の時とあまり変わりません。1機種より2機種、2機種より3機種の方がハードルが高くなります。さらにそれぞれ異なるゲストキャラクターを有効にプロモーションしていくのは、今も昔も変わらず大変ですね。
松元: 開発の面でいうと、『II』の場合は家庭用の前に業務用がありました。そこを土台にして、まずPS2向けに開発していき、ゲームキューブとXboxでも動くようにしていくという流れでした。今回はハードが両方とも新しくなって、あれもこれもと、8割くらいをスクラッチで作り上げたので、苦労は当然・・・(笑)。
岩永: 『II』はだいぶ移植のイメージだったんです。今回は『III』から引き継げた部分もありますが、メンテナンス性を上げよう、ということでプログラム自体も大幅に書き直しています。(前回の「DEVELOPER"S TALK」でも触れた富澤氏の携わっている)バンダイナムコゲームスの社内ライブラリを活用して描画部はかなり楽になりましたが、新しいハードをチームとして初めて経験したので、どこまで作りこんでいけばいいのか、という点では手探り状態でした。幸運にも、その線引きで大間違いをすることはなかったので、今完成することができましたが。
―――マルチプラットフォームでゲームを開発する上で、そういった社内ライブラリやミドルウェアの果たす役割は大きいのでしょうか?
岩永: 自分たちの忙しさと違うところで作業が出来る人たちが居るというのはとても心強いことです。確かに隣で一緒に開発しているわけではないので、コミュニケーションの面ではやはり難しい部分はあるのですが。全部自分達で作っていると、いざとなると急に不安になる瞬間があるんです(笑) 社内ライブラリやミドルウェアを使えば、少なくともその部分がきちんと動く、という安心感があります。
―――ADXはどこで活用いただいたのでしょうか?
柿沼: BGM全般とデモや、オンメモリで流す尺の長いジングルなどで利用しました。ADXは5.1chで出せるので、それが必要なシーンにも使いました。
中鶴: ゲーム側でコントロールが必要な個所はオンメモリで、そうでない箇所はストリームという使い方になりますね。社内ライブラリでもサウンドはサポートしているのですが、沢山のストリームを流すとなると実績のあるADXを使った方が、という判断になりました。
―――開発前からADXの採用は決まっていたのでしょうか?
岩永氏 |
松元: ADXを導入してから実際にゲーム上で動くまでの時間が短く、その点は非常に助かりましたね。
―――サウンドはディスクの中でどのくらいの容量を占めているのですか?
松元: 1/3くらいがサウンドです。中鶴が音質に厳しいのでビットレートが下げられないんです(笑)。キャラクターの数が多いので、それにともなってサウンドの数も増えて、開発中盤には毎日、何百メガバイト単位で増えていったので、本当にディスクに収まるかと、怯えていました(笑)。
―――次世代機では5.1chが必須になりますよね
中鶴: デフォルトで光デジタルのポートがありますし、映像の表現力が上がっている中で、音がステレオのままでは映像の表現力についていけないと思うんです。それに『ソウルキャリバー』チームは比較的新しい事が好きなんです。日本だとまだまだ家庭に5.1chの環境が揃ってないというのは事実としてあると思いますが、『ソウルキャリバー』は海外も強く意識したタイトルですし、『エースコンバット6』などウチの他のゲームで5.1chを実現している時に、ここでステレオという選択肢は有り得ないと思いますね。
―――従来の音作りと比較すると作業時間は・・・
中鶴氏 |
柿沼氏 |
(※)ステレオはL、Rの2チャンネルだが、5.1chはL、R、Center、LS(リア左)、RS(リア右)、LFE(サブウーファー)の6チャンネルとなる。
柿沼: 5.1chのデバッグは大変でした。2chしか出ていないのか、5.1chで出ているのか、普通のスピーカーやヘッドホンでは確認できないんですよね。サウンドチームのブースには可能な限り環境を揃えました。それが無理な人にも疑似的に5.1chを再現できるヘッドホンを用意して確認していました。最終的には音響設備の整った社内のサウンドルームで確認するようにはしていたのですが。
(最後に中鶴氏にサウンドルームを見せていただきながら音作りについて聞いています。最後までどうぞ!)