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バーチャルリアリティコンテストが岐阜県各務原市テクノプラザで開催〜優勝は腕をアリがはい回るあの作品に!

ここ数年、秋になると岐阜県各務原市のテクノプラザまで出かけている。国際学生対抗バーチャルリアリティコンテンスト(IVRC)を取材するためだ。全国の学生が手作りのバーチャルリアリティ(VR)作品を制作し、日本一を決めるもので、1993年に開催以来、今年で15回目となる。今年も全国32校の教育機関から約40件の応募が寄せられ、企画審査・プレゼンテーション審査・東京予選大会を経て、選りすぐられた4つの団体作品が11月2日・3日の本大会に駒を進めた。

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競技形式の「ロボコン」などとは異なり、IVRCでは審査員による投票形式で審査が行われる。審査のポイントとなるのは「新規性」「技術性」「作品性」「将来性」などだ。つまり審査員の立場によって主観が混じるのは避けられず、ここが面白い点である。今回も一回の審査ではすんなりと決まらず、決選投票の結果、わずか1票差で「虫 HOW?」が「タイムマシーン:ヴェルダン1916」を抑えて総合優勝を飾った。またラバル・バーチャル賞も受賞し、来年度のラバル・バーチャルの招待作品に決定した。

実行委員会委員長を勤める東京大学の舘?教授は、虫が肌をはい回る感覚を実験して、発見したこと。疑似感覚を再現する装置を作りだしたこと。装着感を改善したこと。数種類のデバイスを作り上げたこと。こうした総合的なプロセスが優勝に結びついたと指摘。「皆さんのチームワークと発想に対して敬意を表したい」と講評した。チームリーダーの松尾佳菜子さんは「チームみんなで気持ち悪さの表現にこだわりました。今日は体験者の方から、微妙な笑顔がたくさん見られて良かったです」と会場の笑いを誘い、「フランスでも優勝してきます!」と抱負を述べた。

(左)例年同様に審査員による激論の末、ようやく各賞が決定した(右)IVRC実行委員会委員長の舘?教授(東京大学)


総合優勝を飾ったチーム「たまごちゃん」(優勝旗を持つのが松尾さん)


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IVRC2007 岐阜本大会

総合優勝「虫 HOW?」(たまごちゃん/電気通信大学)

岐阜VR大賞「タイムマシーン:ヴェルダン1916」(タイムマシーン/ESCIN・ESIEA Ouest)

各務原市長賞 「HOP AMP」(ライトフライヤー/筑波大学)

審査員特別賞「風景バーテンダー」(酒豪/北陸先端科学技術大学院大学)
      「Heaven's Mirror」(Stamwoo/東京工業大学大学院)

ラバル・バーチャル賞「虫 HOW?」(たまごちゃん/電気通信大学)

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審査員特別賞を受賞した「風景バーテンダー」について、NTTドコモ総合研究所の福本雅朗氏は「1回体験しただけではわかりにくいが、CG風景をパラメータで自動生成するなど、高度なエンジンを作り上げていた。動作しなかったのが残念。見せ方に、もう一工夫あれば」とコメント。同じく「Heaven's Mirror」について、電気通信大学の稲見昌彦教授は、「新たに1作品が追加され、予選大会から最も進化した。鏡を使ったことで、VR本来の可能性を押し広げた」と受賞理由を述べた。

審査副委員長を勤めたセガ事業推進部の武田博直氏は、「全作品が予選大会より大きく改良されていた点が嬉しかった」と述べた後で、日本のVR作品はデバイス本来の面白さや新規性が前面に出る傾向にあるが、欧州ではメッセージ性を持った作品が多いと指摘。「ヴェルダン1916」のメンバー内に、昨年度のIVRCで来日した学生が2人含まれており、日本的なVR作品の良さを吸収して、自分たちの作品に反映させたとして、欧州・日本の双方の特性が生かされた作品になったと述べた。また「HOP AMP」について、今ではグーグルアースを使えばPC上で鑑賞できることが、VR作品では不可能だったとして、「VRの楽しい原点に立った作品」と講評した。

虫 HOW?/チームリーダー 松尾佳菜子さん(電気通信大学・人間コミュニケーション学科)コメント

(予選・本選と)1位、1位。やばいですね〜。たぶんこれは私の力ではなく、みんなの気持ち悪さ、変態さゆえですね。海外でも、この気持ちが届くように改良します。まず変な虫を調べ、ゴキブリの大量発生を行い……でもフランスにもゴキブリっているのかな?イナゴとかの方がいいのかなあ。彼らが嫌いそうな虫を調べて実装し、「Wow〜!」って言わせたいですね。今は片手しかできないけど、両手バージョンとか、首筋とかも良いかも。とりあえず振動の設置点数は増やしたいです。虫の種類も増やしたい! ゴキブリを加えたのも、制作中にチーム内から、この動きってゴキブリっぽいよね、という声が出てきたんです。じゃあ作っちゃおうかな〜なんて。次はカブトムシとか、毛虫とかもイキたいです。チクチク、ゾワゾワの次は、サワサワ感を出したいですね。

個人的にも「ヴェルダン1916」が優勝を競り合った点に驚かされた。完成度の高さから、優勝旗が欧州に渡るのではないか、と思わされたほどだ。実は今回は会場の関係から、ラバル版に比べて幾つかの仕様が削られていた。まず椅子について、本来は歯医者用の椅子を流用して、上下の移動が体験できた。展示も真っ暗な室内で行い、眼鏡型ディスプレイの隙間から外部が覗けないようにして、より没入感を増す配慮がとられた。さらに実際の火薬を爆発させて集めた煙を流して、硫黄や硝煙の匂いまで演出させていたほどだ。これらが本大会でも実装されていたら、総合優勝を飾っていたかもしれない。技術の新規性云々よりも、組み合わせとソフトウェアの勝利というか、それこそ「デジタルに魂が入った」という感じだろうか。

IVRCにフランス学生チームが初めて参加したのは4年前だ。残念ながら当時の作品は見劣りするものだった。それが短期間で急速にレベルが向上したのには驚かされる。電気通信大学の稲見昌彦教授も、「来年はフランスチームが優勝するのではないか?」と楽しみな様子だった。逆にラバル賞を受賞した「虫 HOW?」のメンバーにもフランス、そして米シーグラフでも日本のVR作品の凄さ(変さ?)を見せつけて欲しいところだ。そして来年度もさらに優れた、まったく新しいVR作品が体験できることを期待したい。
《小野憲史》
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