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『モンスターハンター:ワールド』龍結晶の地はどうやってできた?柱状節理から読む大噴火の痕跡【ゲームで世界を観る#12】

地質学者は「地球のシャーロック・ホームズ」。僅かな痕跡から地形の成り立ちを解き明かします。

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『モンスターハンター:ワールド』龍結晶の地はどうやってできた?柱状節理から読む大噴火の痕跡【ゲームで世界を観る#12】
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古龍が織りなす生態系の不思議と、ダイナミックな大自然の営みを描いた『モンスターハンター:ワールド』。シリーズ久々の据え置き機&PCということもあり、新大陸の行く末を巡るスケールの大きな物語が展開されました。

舞台となった「新大陸」には様々なバイオームが存在していますが、その中でも異質なのが「龍結晶の地」です。一見して自然にできたとは思えないような、規則的な石柱と結晶でできているその場所は、純度の高い生命のエネルギーが満ちる場所でした。およそ自然では見慣れない直線的な造形のため、人為的に作られた場所なのではないかと思ってしまいますが、これは歴とした自然が作り出した地形です。その過程を知ると、むしろ人為など自然の前には全く及ばないことを悟るでしょう。

いかにもファンタジーにありそうな光景ですが、この六角形の岩石が並ぶ地形を「柱状節理」と言います。火山から流出した溶岩、特に玄武岩が冷えて固まる過程でできる特殊な現象で、イギリスの世界遺産「ジャイアンツ・コーズウェイ」や、国内では兵庫県の「玄武洞」で実際に観ることができます。

具体的には溶岩が流れた場合、地上の空気によって急激に冷やされ、その多くは流れた形状のまま固まります。途中で樹木を巻き込んでいると、その樹の型を取るように、表面の樹皮が写し取られた状態で空洞ができます。ポンペイの石膏像と同じようなことが起きるのです。

溶岩が数十メートル以上溜まった場合、表面部分の熱が奪われてもなお中心部分は冷え切らず、数年にわたって予熱を帯びたままになります。それがゆっくりと冷えていくと、徐々に収縮してひび割れが少しずつ入っていきます。周囲を完全に密閉されて安定した状態なので、均一かつ物理的に安定する形である六角形のヒビが崩れないまま成長していきます。これが柱状節理ができる原理です。

ひび割れは冷える面から内側に向かって伸びていくので、冷える面が曲がっていると柱状節理も曲がってできていきます。そのため、これがあるところには斜面や谷間などの地形があったと推測できます。溶岩が普通に固まる表面と内側の柱状節理のサンドイッチであると覚えましょう。この構造は地脈回廊でも確認できます。

そして、この柱状節理を観るときに想像してもらいたいのが、この柱状節理が途切れず伸びていた分だけ、「一度」にそれだけの量の溶岩が溜まっていたということです。複数回になると、その間には節理のない冷却面が残ります。

龍結晶の地ではそびえ立つような岩壁にもこの柱状節理が確認できますが、かつてこの地を飲み込んだ大噴火が想像できるでしょうか。それこそ新大陸を壊滅させる、あるいは新大陸を作り出すほどの規模だったに違いありません。ゾラ・マグダラオス撃退作戦が失敗していたら、それに匹敵するほどの爆発が起こっていたのでしょうか?

もう一つこの場所で特異な地形と言えば、古龍の生命エネルギーの結晶です。さすがにこれはファンタジーの産物だろう、と思いきや、これがなんと最近になって実物が発見されたと言うから驚きです。

これが実物の結晶洞窟の映像です。メキシコのナイカ鉱山で2000年に発見されたこの洞窟は、熱い地下水の中に溶けたミネラル分が60万年かけてゆっくりと成長してできたもの。中は気温50度、湿度100%の過酷な環境で、探索するには巨大なクーラーを背負わないと熱中症で死んでしまうでしょう。水や風の浸食が起きる地上ではあり得ない光景です。

有史以来地球上で人間が探索できた領域は浅い表面に過ぎず、光の届かない地下洞窟や深海はほとんど未踏と言ってもいいでしょう。今日もどこかで命知らずの調査団が冒険を繰り広げているのです。

劇中では新大陸の壊滅を防ぐために奮闘する調査団に対し、古代竜人は「滅びるのが定めならば受け入れる」と言っていました。個の生命からすれば生き延びようとするのは当然なのですが、時に地上の生態系を根こそぎ焼き尽くすようなマグマの大噴火は、地球上で実際に何度も起こりました。文字通り洪水のように溢れ出る「洪水玄武岩」という地形がその痕跡で、シベリア・トラップを形成した噴火はペルム紀大絶滅の原因だとされています。

前述のジャイアンツ・コーズウェイも、北アイルランドからスコットランドまでの一帯を覆い尽くした噴火であると分かっています。しかももう一度同じ規模の噴火が起こったため、柱状節理の二段重ねという珍しい地形になっています。

日本においても、今最も注目を浴びている「西之島」では、噴火前に存在していた陸地は数少ないカツオドリの繁殖地でした。しかし、2013年以降の噴火で完全に飲み込まれ、生態系としては完全な「ゼロ」になってしまいました。それでも数年後に再びカツオドリが訪れ、溶岩の上で繁殖活動を始めています。新しい生態系の第一歩という貴重な瞬間を記録することができました。小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」と呼ばれるほど離島独自の生態系が発展しています。この島を観察することで、離島の環境に生命が根付くプロセスを確かめることができるのです。

西之島に続けて、今年8月には同じ小笠原の「福徳岡ノ場」で海底火山が噴火、こちらも新しい島に成長する可能性があります。日本の間近で新島誕生、しかも二つ続けてという奇跡的な瞬間を私たちは迎えているのです。

映画「ジュラシック・パーク」には“Life will find a way.(生命は必ず道を見つける)”という言葉があります。何度滅びようともそのたびに、僅かな生き残りから生態系が新たに創り出されるダイナミズム、それが大自然の驚異を生み出す原動力なのです。

参照:

「世界遺産」ジャイアンツ・コーズウェイとその海岸 ~ 驚異の石柱海岸 北アイルランド -TBS

令和3年度西之島総合学術調査(9月調査)結果概要について -環境省

《Skollfang》

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