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20周年を迎えた『デュープリズム』を振り返る! 読者から届いたコメントに、開発陣からは喜びの声が─ファンが今できることも聞いてみた【インタビュー】

プレイステーションソフト『デュープリズム』は、今も多くのユーザーに愛され続けているアクションRPGです。今回は本作の20周年を記念し、当時の思い出や開発秘話に迫るインタビューをお届け! どうぞご覧ください。

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◆ファンのコメントと共に『デュープリズム』を振り返る



──これもいただいたコメントですが、思い出深いシーンとしてルウのエンディングを推す方が多かったです。

杉本なるほど。

──クレアと再会したルウが、「うまく話せない、相手の顔をまともに見られない」というリアルな反応で驚きました、といったコメントも。

渡辺「言葉にすればするほど嘘くさくなる」というのは、いまだにシナリオを書くときに悩む永遠の課題ですよね。

杉本カットシーンを担当したプランナーの佐藤弥詠子が、台詞を出さずにカメラと「間」で雰囲気を作る演出を時々入れてましたね。それが効果的だったんじゃないかなと思います。

■佐藤 弥詠子氏
プランナー
代表作:ファイナルファンタジー VIII,XI,XII,XIV

──ミント編のシーンだと「ボコボコよ!」に関するコメント(?)も多かったですね。で、ラストバトルの前に、ミントの「ボコボコよ!」に加えて、マヤが「ボコボコですわ!」と(笑)。あそこは、「やっぱり姉妹だな」って感じる場面ですよね。

渡辺同じ台詞を繰り返してニュアンスが変わる、というのが好きなんですよね。それまでずっと言ってきた台詞が、カッコイイ感じに変わるのっていいですよね。ルウの方も、元々は制限するための呪文だったものを、今度は解放するために使って、みたいな。前振りがあってこその展開とでも言いますか。

杉本マヤの「ボコボコですわ!」は、最後に狙ってたんだよね? 本当はこういうキャラなんだけど、自分を律しているので、ずっと出さずにいて。

渡辺ルウ編だと、そういった面がほとんど出ないのも面白いですよね。おそらくルウ編では、ホテルで殴り合ってる時くらいじゃないかな。姉妹というのも、ルウ編ではずっと言わずにいるんですよ。

──ミント編から遊ぶとルウ編で驚きがありますし、ルウ編から始めるとミント編で驚きがありますよね。

渡辺当時、ザッピングという手法がちょっと流行っていたんですが、「ザッピングは、結局ひとつの話を半分見せるだけだよね」という話になりましたね。見る順番によってネタがバレてしまう状態になるよりは、それぞれ別の話を用意した方がいいかなと。

──そこも、『デュープリズム』らしい特徴のひとつですね。

渡辺最初、マヤはちょっと掴みにくかったんですが、ミントがああいうキャラだったので、その対比として今のようなキャラになりましたね。

──ルウの方で、印象に残ってる場面などはありますか?

渡辺これは、割と最近思い出したことなんですが、ルウとクレアが雪の山小屋で暮らしていますよね、ゲーム開始直後に。あれのイメージは、ムーミンなんですよね。

──おお!


渡辺あくまでの僕の中ではですが、山奥でのほほんと暮らしている感じが、ムーミントロールに通じるものもちょっとありまして。おっとりしていて世間知らずだけど芯が強くて、みたいな。あと、どことなく育ちがよくて、何となくまわりの人に応援してもらえる感じとかも。

──全般的にルウは、どこか品のよさがありますよね。

渡辺たまーにキレることはあるにせよ、そういった雰囲気は保とうかなと思っていました。

(ファンからのコメントを眺めながら)ああ、スカタン号も懐かしいですね。あれは、「スカタン号」という名前にするのが先に決まっていたんですよね。「スカタン号でいいよ」みたいな感じで(笑)。

──「スカタン号」からよく、「スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ」に辿り着きましたね(笑)。いただいたコメントでは、やはりミントとルウの人気が二強ですね。

渡辺ありがたいですね。

杉本差が出なくてよかったね。

──ミントを推す人の中には、「ミント様」と呼ぶ方も少なからずいました(笑)。

杉本開発内ではみんな「ミントさん」と呼んでいましたね(笑)。敬称を付けていました。

──ミント、ルウに続く人気ぶりは、やっぱりマヤですね。それ以外だと、デュークにも声が集まっています。「スターライト・デューク」の印象が大きいようで(笑)。あとは、ベルとの関係性がよくて推す方もいましたね。

渡辺『デュープリズム』に出てくる女の人は、基本みんな強いですよね(笑)。

──確かに(笑)。



渡辺印象に残っているシーンと言えば、ルウ編でラスダンに挑む前にファンシー・メルのところへ行き、「何のために行くの?」みたいな会話をする場面がありまして。そこは選択肢があって好きなように答えていいんですが、最終的に「頑張れ」って言ってくれるんですよ。あそこは、ラスダンに向かう前だったので、どんな選択肢を選んでも「頑張れ」に辿り着くようにとフローチャートを書いて台詞を組み立てました。

ゲームのシナリオを長いこと書いているんですが、究極的には(ゲームは)遊んでもらうためのものなので、プレイヤーの皆さんに「やったるで!」と盛り上がってもらうシナリオが一番ですからね。

──プレイ意欲をかき立てるのが大事なんですね。

杉本それにしても、こんなにコメントをいただけるなんて、ありがたくてたまらないです。皆さんの「好き」が、ここに詰まっていますね。

──ミントはわがままで自分勝手ですから、一歩間違うと嫌われかねない属性を持っていると思うんですが、なのにここまで人気があるのってスゴイですよね。

杉本面白いキャラになりましたね。

渡辺ミントは、書いているうちに「この人は強いから、自分にも他人にも正直でいられるんだ」と気づいたキャラクターでした。

──確かに、ミントの言葉に嘘はないですよね。

渡辺ミントは、欲望にも正直なのでわがままなんですが、基本的には善人なので、いいこと言うのも躊躇いがないんですよね。

──お世辞がないので、ミントに何を言われても信じられます。


杉本コメントを見ていると、動きを褒めてくださる方も多くて、狙ったところに上手く刺さってよかったなと思いますね。あとやっぱり、「ブーツのヒモが……」が多いですね(笑)。

渡辺ベタは大事ですね(笑)。

杉本あのイベントは確か、『ファイナルファンタジー VIII』が終わってチームに合流してきたプランナーの佐藤が最初に作ったシーンなんですよ。面白く演出してくれました。

渡辺ノベルゲームみたいに立ち絵でテキストが流れるだけだったら、全然刺さらなかっただろうなという感じはしますよね。(3Dキャラが)芝居をちゃんとやって、掴むことができたというか。

あとシーンで言えば、エンディング後の町を歩けるというのも印象的でしたね。ラスボスを倒して平和になった世界を歩きたい、という。ちゃんとみんなに、「さよなら」と「行ってきます」をしたくて。

──ラスボスを倒すとエンディングやスタッフロールに突入し、そのままEND表示というゲームがほとんどなので、そこも『デュープリズム』は珍しいゲームでしたね。

杉本前述のプランナーの佐藤はエンディングが大好きで、彼女がプレイした色んなゲームのエンディングを個人的にコレクションしていたほどなんです。そんな彼女から「エンディングの前にセーブをしたい」という希望が出て、セーブポイントを設定しました。

ラスボスを倒してからエンディングまでのイベントは、ほとんど佐藤が担当しました。「エンディングを盛り上げたい」という彼女の強い意志が感じられます。

──個人的な話になるんですが、大事なシーンの前はセーブして、そのデータを保存しておきたいタイプなので、エンディングにセーブできるのはすごく嬉しいですね。今はギャラリー機能があるゲームも増えましたが、当時はほとんどなかったので、手動セーブでギャラリー代わりにしていました。

杉本ギャラリー的な機能は、当時も「あったらいいよね」という話はしましたが、さすがにちょっと余裕がなかったです。

◆ユーザーから、そして開発陣からも愛された『デュープリズム』


──ちなみに、『デュープリズム』のディレクターをされた時、杉本さんはおいくつだったんですか?


杉本23でした。とはいえその時点で勤続5年だったので、そこそこ古株に見られていたのかな。

渡辺あの頃は、5年で古株ですもんね。

──プレステの登場で、ゲームの作り方が変わった時期でしたよね。

杉本そこは、自分にとって運がよかった点のひとつですね。社内にはファミコン時代から作り続けてきたベテランの方もいらしゃったんですが、3Dになって、プログラミング言語もアセンブラからC言語になって、ゲーム開発の経験値が一旦リセットされたような状態になったんです。そこで、当時の我々のような若造も同じスタートラインに立てて、前に出て来る事ができました。本当に時代に恵まれていました。

渡辺無制限に何でも作れるわけではなく、逆に“制限の中で何が出来るのか”だったから、全てに必然性があってバシッとハマッたのかもしれませんね。

さきほどのカボチャの話もそうですが、「こういう設定があるんだよ」ではなく、「こういうモノがあるから、この設定にしていこう」と。その流れで、設定とキャラクターが噛み合っていき、無駄がなくなっていったような感じです。

無駄を作る余裕がなかったから無駄がなかったのかもしれないですけど(笑)、ある意味で“コントロールしきれる物量”だったのかなと思います。まだ、「個人の徹夜でなんとかなる」みたいな(笑)。

杉本『ゼノギアス』で、3Dゲームのノウハウが相当溜まっていたのも大きいですね。ゲーム制作って、2本目、3本目と重ねていくと、どんどん強くなっていきますので。

──『デュープリズム』が生み出されるタイミングとしては、まさに絶妙だったんですね。

杉本ただ、1999年の末って、他社も自社も大作のラッシュで、発売のタイミングとしてはよくなかったかもしれませんが(笑)。

──ライバルが多いタイミングでのリリースでしたね。

杉本小チームプロジェクトなので、当初はあまり大きく期待されていなかったんですよね。投資は最小限に、チャレンジャブルな作品を世に出すという座組だったので。

でも『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』に同梱された体験版をリリースした時に、「『デュープリズム』の体験版がすごく面白い」とネットなどで盛り上がっていただけて、それがきっかけで海外版のリリースが決まったりもしたんです。

そういう流れが開発中にどんどん増えていき、作品への期待値が次第に増していったのが印象的でしたね。

──それまでの積み上げが報われた瞬間ですね。

杉本そうなんです! ですが、発売初日の売上速報で「全然ダメでした」という報告を貰って。ああ、やっぱりこういう結果か、という気持ちにはなりました。ただ、その後にマーケット調査などをしたら、品質に対して認知度がまったく足りていないという調査結果が出たりして。(なので)少し胸を撫で下ろしました。まあそれに、世に出せただけよかったですよね。

渡辺しかも、20年経ってからこういう話ができるなんて、まさかですよ。

──これだけの方々がコメントを寄せてくれるほど、今も愛されていますからね。これは余談になりますが、『デュープリズム』の開発が終わった後は、どういったタイトルに移られたんですか?

杉本残念ながら『デュープリズム』の続編は作れなかったので、私たち2人は『ファイナルファンタジーX』に行きましたし、他の方も『ファイナルファンタジーX』や『ファイナルファンタジーXI』に移りましたね。

渡辺ごそっと『ファイナルファンタジーX』に行きましたよね。

杉本『デュープリズム』について、北瀬佳範さんは好意的に見てくれたようで、うちのチームの人は声がかかりやすかったですね。

■北瀬 佳範氏
第一開発事業本部長、『FINAL FANTASY VII REMAKE』プロデューサー
代表作:ファイナルファンタジー V,VI,VII,VIII,X,X-2,XIII/メビウス ファイナルファンタジー 他

渡辺この前やった『メビウス ファイナルファンタジー』の生放送に北瀬さんと一緒に出演した時には、僕の経歴について「お前、『デュープリズム』出さなくていいのかよ。言っといた方がいいよ!」とコメントして下さったり、「このキャラクターは、渡辺君の『デュープリズム』からの流れを汲んでいるよね」なども仰っていただきました。

──スクウェア社内のクリエイターの間でも、『デュープリズム』の評価は高かったんですね。

杉本ありがたい事に(笑)。先ほど話したように、小規模ながらもちゃんと形として出せたのは大きかったかもしれません。あとは、2D表現を中心にやってきた人たちが、3D表現を見直すような流れにもなった気がします。

渡辺居酒屋で飲んでいたら、松野泰己さんがやってきて「おお、渡辺君!」とか声をかけていただいたこともありましたね。あ、認識してもらえてる、って猛烈に感激しました(笑)。

──ユーザーに愛されたのはもちろん、クリエイターにも響いた作品だった『デュープリズム』。今回は、その20周年を振り返るインタビューでしたが、最後にお二人のお言葉をいただければ嬉しく思います。


渡辺僕らが作ったものですが、もう僕らのものではなく、皆さんのものなんだなって思いますね。もちろん、どのゲームを作る時も、そういう形になって欲しいと思って作っているんですけど。

世の中に送り出して、皆さんのものになり、今も熱意のあるコメントをこんなに下さる作品になるなんて、20年前には想像もしていませんでした。こんな素晴らしい場所にいられるのは、全て皆さんのおかげです。

作中のルウは、結構色んな人に背中を押されていたんですが、本当に皆さんの声に押してもらっているんだなと実感するばかりです。本当にありがとうございます。

──色んなキャラがルウを支えたように、『デュープリズム』も多くのユーザーに支えられているんですね、今も。

杉本カッコイイこと言うなあ(笑)。

渡辺一応ライターですから(笑)。

杉本渡辺君のようないい台詞は出てこないんですが(笑)……20年前に遊んだ時は子供だった方々が、大人になってもまだ覚えていてくれており、記憶に強く残るゲームを作れたことが非常に誇り高いです。当時思ってもいなかった層にまで届き、あの時頑張ってよかったなと改めて思いました。

『デュープリズム』が忘れられないよう、10月14日には自分もTwitterで喋ったりして、ブランド維持の努力はしてるつもりなんです。Twitterに“#デュープリズム“とあったら、それは可能な限り見ていますので、よければ呟いてください。

──本日はありがとうございました!




お忙しい中、今回は2時間もの時間を設けていただき、『デュープリズム』に関する濃密なトークを伺うことができました。また、読者の方々から寄せられたコメントを開発陣に直接届けたところ、大変喜んでいただけました。

今回のインタビューは以上で終わりますが、最後に「『デュープリズム』について、今ユーザーさんが出来ることって何かありますか?」という質問を投げかけたところ、スタッフの方を交えて、いくつかの方法を教えていただきました。

まずは、現在発売中のゲームアーカイブス版『デュープリズム』の購入が、販売実績という形でスクウェア・エニックスに届きます。ゲームアーカイブス版は、PS3/PS Vita/PS Vita TV/PSPでプレイできるので、プレイ環境があり、もう一度遊びたい方はこちらもお勧めです。

■『デュープリズム』ゲームアーカイブス URL
https://store.playstation.com/ja-jp/product/JP0082-NPJJ00384_00-0000000000000001

そして杉本氏の発言にもありましたが、ハッシュタグを通してツイートすれば、開発陣の目に届くかもしれませんし、ファンアートを含めてコミュニティが盛り上がるのも、ユーザー側で出来る活動のひとつです。

活動が必ずしも何かに繋がる訳ではありませんが、当時と比べると今は、ユーザーの声が届けやすい時代となりました。この20周年を機に、『デュープリズム』をプレイした感想や、遊んだ思い出などを、開発陣や同好の士に向けて発信してみてはいかがでしょうか。
《臥待 弦》
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