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【セミナーレポート】スマホゲームのシナリオメイクはどうあるべきか?Wright Flyer Studios主催の業界交流イベント

グリー株式会社のアプリ開発スタジオ・Wright Flyer Studiosが、スマートフォンゲームのシナリオメイキングをテーマにした業界交流セミナー「Flyers' Lab #1」を開催。そのレポートをお届けします。

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10月20日、グリー株式会社は同社のアプリ開発スタジオ・Wright Flyer Studiosが主催する業界交流セミナー「Flyers' Lab #1」を開催しました。本稿ではそのレポートをお届けします。

「シナリオと演出で命を吹き込む!!」と銘打たれた本セミナーは、「スマートフォン用ゲームのシナリオを作るうえで大切にしていること」がテーマ。株式会社f4samuraiの田口堅士氏、株式会社gumiの今泉潤氏、グリーからは古屋海斗氏が登壇し、具体的な事例を交えながらそれぞれの工夫や取り組みが発表されました。


左から順に田口堅士氏、今泉潤氏、古屋海斗氏

◆今泉氏の講演――50%は定番の要素、残り50%はエゴで作れ!?


まず登壇したのは『ファントム オブ キル』や『誰ガ為のアルケミスト』のプロデューサーを務める今泉氏。「(原作モノではない)オリジナルの作品を作らないと意味がないと思っています」と語る同氏は、モバイルゲームは「ゲームモデルと世界観の組み合わせによるエンターテイメントである」と分析。まだフィーチャーフォンでのゲームが全盛だった時代を例に挙げ、お宝を奪い合うゲームが大ヒットするなか、任侠モノをテーマにしたゲームでは女性を奪い合うという設定にして成功を収めたことを語りました。

ゲームを企画する際は、全体の50%を、そのときの市場感やはやりを取り入れた定番の作りにする一方で、残りの50%はエゴ……つまり自分がおもしろいと感じることをそのまま入れるという独自のバランス感覚を披露。このバランスが崩れてしまったときにかぎって、うまくいかないと実感されているそうです。

また、ゲームのプロモーションをする際は、CMなどの広報展開よりもリアルイベントの実施を重視されるとのこと。これもゲームのシナリオに無関係ではなく、「モノを作る人は、作品を衆目にさらし、そこからのフィードバックを得ないと成長はない」と考えているからだそうです。最後に「スマートフォンゲームのシナリオはストーリーを語るのではなく、キャラを輝かせるためだけにあるべき。それこそが、その作品をひとつのIPとして成り立たせることにつながると思います」と語って締めくくりました。

◆古屋氏の講演――ゲームシナリオはプレイすることではじめて完成する!


次に登壇したのは『アナザーエデン 時空を超える猫』の企画・シナリオ統括を務める古屋海斗氏。ゲームシナリオは「テキスト+演出+ゲームプレイ」で構成されるものであると定義し、開発が用意したテキストと演出に、プレイヤーがゲームの世界を冒険するという体験(ゲームプレイ)を加えることで、はじめてシナリオが完成するのだとしました。

古屋氏は、魅力的なゲームプレイを提供するためのものとして
・プレイヤーの意表をつく
・プレイヤーの想像力をフルに活用する
・システムを利用する

という3つのこだわりを紹介。『アナザーエデン』での実例をまじえながら、順を追って説明していきます。

■プレイヤーの意表をつくために大きなネタを一つ提供
ゲームを快適に遊ぶための親切な誘導は欠かせないものながら、度が過ぎると“作業感”が出てきてしまうもの。ですが、プレイヤーが思い描く以上の展開を用意すれば、それを感じさせずに済むとのこと。その実例として、外伝ストーリー「時の炭鉱と夢を視る郷」が挙げられました。


「プレイヤーの意表をつく」事例。なぜか村の中でだけ、10年以上の時が一瞬で流れ……?

また、古屋氏は「予想外の展開ばかりを入れると逆にインパクトがなくなるので、大きなインパクトがあるネタをひとつだけ入れる」ことと、「ゲームである以上“意表をつく瞬間”は必ずプレイさせることで提供し、自分の手で発見してもらう」ことが大切であると補足しました。

■プレイヤーの想像力をフル活用するためにブラックボックスを用意
長尺のシナリオを実装してゲームが“読みもの”になってしまうと、今度はインタラクティブ性が失われてしまいます、と警鐘を鳴らす古屋氏。ボリュームがあるイベントとインタラクティブ性を両立させる手段は、プレイヤーの想像力を活用することにあると語ります。

実例として挙げられたのは、魔剣士を名乗る女性・ディアドラの人生を描く外伝ストーリー「ふたりの騎士と祈りの魔剣」。企画時にはまず彼女の人生の大枠を設定し、そのうえで、ゲーム内では決して描かない“ブラックボックス”を決定。その部分が浮き彫りになるようなシナリオを実装することで描かれていない部分が想像できるようになり、結果として実装した以上の壮大な物語を感じてもらえたとのことでした。ただし、さじ加減を間違えると説明不足だと感じられてしまうという注意点も併せて言及されました。




「ブラックボックスをプレイヤーに想像させる」というストーリーテリングの図解とポイント

■システムは敵ではなく味方、利用するもの
システムのせいで思うようなシナリオが書けなかったり、それどころか、システムのせいで世界観が崩れてしまいそうになったことがある方もいるのでは、と問いかける古屋氏。「それでも、システムは(シナリオにとって)敵ではなく味方です」と言葉を続けます。

ここで実例として挙げられたのは、『アナザーエデン』で、レベリングや強化素材を集めるのための“周回”場所として用意された「アナザーダンジョン」。その入り口付近には記憶を失った名無しの少女がおり、プレイヤーがダンジョンで周回を重ねると徐々に記憶を取り戻していきます。彼女は何者なのか、ダンジョンと何か関係があるのか……。「ストーリーと切り離された、周回用コンテンツ」という“常識”がプレイヤーたちの中で醸成されているからこそ、むしろ彼らを驚かせるチャンスにできたと語りました。


システムと融合したストーリーは、高い評価を得られたとのこと

◆三者三様の答えが飛び出した座談会


セミナーの第二部は、Wright Flyer Studiosで『消滅都市』のシリーズディレクター・下田翔大氏がモデレーターを務める座談会。下田氏が田口氏、今泉氏、古屋氏らに質問を投げかける形で進行しました。


座談会の進行を務めたWright Flyer Studiosの下田氏

Q.シナリオや演出、ゲームの企画を考える際、着想はどんなところから得るか?

今泉氏:僕は、やはり映像から思いつきます。『ファントム オブ キル』なら「同じ顔をした女の子同士が殺しあっている絵(映像)」が最初に思い浮かんで、それがドラマチックでいいなと。また、アイディアはよくトイレで大をしているときに思いつくので、僕はトイレという空間を大事にしています(笑)。

田口氏:僕は、0から1があまり浮かんでこなくて、「こんなものを作りたい」というアイディアを持つ人に「だったらこんなゲームはどう?」と汲み取って膨らませていくタイプです。

古屋氏:僕は昔からゲーム好きなので、過去に遊んだゲームから着想を得ます。自分がおもしろいと感じたストーリーは、なぜおもしろかったのか? なぜ特定の感情を想起させられたのか? そういうふうに構造を分析して、『アナザーエデン』の制作に活かしています。

Q.何のためにモノ作りをしているか?

今泉氏:僕のゲームを7分遊んでくれた人がいたとします。その時間で勉強もできたと考えると、それはその人の時間を7分間“ムダ”にさせてしまっているということでもあって。だからこそ、ゲームは魂を込めて作るべきだと思っています。作品に込められた僕のメッセージを受け取ったどこかの誰かが、そこから元気をもらってくれるなら……エンタメビジネスに携わる魅力は、それにつきますね。

田口氏:マンションの一室で会社を起こした僕は、ゲームは厳しい生活から抜け出したい一心で作っていましたが、あるとき、ウチのゲームのおかげでニートから抜け出して就職できましたという方の声を聞きまして。それ以来、ゲームを通して誰かを応援したいと考えるようになりました。

古屋氏:想像力などのさまざまなものをゲームで遊ぶことで培えたと思っていますので、同じものをいつかプレイヤーのみなさんに与えられればと思ってがんばっています。僕という存在を育んでくれたゲーム業界に貢献したい、恩返しをしたいと日々思っています。


ゲーム業界に貢献したい、恩返ししたいという気持ちが強いという古屋氏

Q.スマートフォンゲームのシナリオは、今後どうなっていくと思う?

田口氏:まだ未来のことを考える余裕があまりなくて抽象的なのですが、シナリオだけを見せるのではなく、それを組み込んでゲーム全体をどう見せるかにシフトしていくのではと考えています。

今泉氏:いまや豪華なキャストによるフルボイスは当たり前で、さらに『アナザーエデン』の加藤正人氏や『Fate/Grand Order』の奈須きのこ氏のような“レジェンド”クラスの方々も参入してきて、もういくところまでいってしまった感じはしています。ゲームのシナリオは大抵システムを作ったあとに入れますが、いかにその2つを連動させてプレイヤーの心に残る体験にできるかが重要だと思っています。

古屋氏:スマートフォンの「誰もがいつも肌身離さず持っている」という特徴を活かしたシナリオができれば……とはいつも思っています。まだ模索している段階なのですが。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

「よりおもしろいゲームを」と同じ方向を見つめながらも、まったく異なるアプローチや考え方が飛び出した「Flyers' Lab #1」。セミナーは早くも次の開催が決まっており、11月13日の開催が予定されている「Flyers' Lab #2 世界観編」では『SINoALICE(シノアリス)』のヨコオタロウ氏と『アナザーエデン』の加藤正人氏、そして、今回の座談会でモデレーターを務めた『消滅都市』の下田翔大氏が登壇して、ゲームの世界観について語り合うとのことです。


《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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