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【TGS2017】『信長の野望・大志』インタビュー、奥深いシミュレーションはそのままに、「志」で武将の人間らしさを追求

『信長の野望』シリーズの最新作で2017年11月30日発売予定の『信長の野望・大志(以下『大志』)』。最新作の見どころを『大志』プロデューサー小山宏行氏、ディレクター木股浩司氏にうかがいました。

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【TGS2017】『信長の野望・大志』インタビュー
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『信長の野望』シリーズの最新作で2017年11月30日発売予定の『信長の野望・大志(以下『大志』)』。変わらぬところを残しつつ、時代に合わせて進化し続ける同シリーズの魅力、そして最新作の見どころを『大志』プロデューサー小山宏行氏、ディレクター木股浩司氏にうかがいました。


左:ディレクター木股浩司氏、右:プロデューサー小山宏行氏

◆新システム「志」で武将がより身近に


―――今回の新要素である「志」についてお聞きします。本作で武将それぞれの「志」を入れようと思ったきっかけについて教えてください。


信長の「志」はこちら。天下に向かい邁進する内容。

小山宏行氏(以下小山):『信長の野望』シリーズは大名家が天下統一を競い合うゲームなのですが、もう少しそれぞれの人間性というか、個性を出したいよね、という話になり、それをどう表現するかを話し合いました。そもそも彼らはみんな天下統一を目指していただろうか?と。天下を狙っていなかったとしても、ゲームとしては最終的に天下統一を果たすのが目的ですから、そのような兼ね合いの中で模索し、「志」のシステムが出来上がりました。

―――天下統一を目的にしていない、小さい勢力にも「志」があって、それをこなしていくうちに天下統一を果たしていた、みたいな流れになると。

小山:小さい勢力が天下統一を目指していたか?を考えるより、彼らがどう生き残ろうとしたか、という考えをメインにして、ある程度大きくなって、天下統一もいけると思えた時に天下を目指す、という流れですね。

木股浩司氏(以下木股):弱小大名であっても弱小ながら自分なりの「志」を持っているので、これまで以上に愛着を持っていただけるのではないかと思います。

小山:「志」の効果である特性は初めからすべて解放されているわけではなく、条件を満たして解放していくものもあり、「志」の特性の開放が小目標にもなっています。「志」の特性の開放を進めるうちに、その大名になった気分がより深まるのではないでしょうか。

―――ビジュアルを付けるだけでも大変な作業だと思うのですが、信長のような、わかりやすい史実が残っていない武将から「志」を汲み取るのが難しかったのではないでしょうか?

木股:大変ではありましたが、調べればどんな大名でもそれなりの逸話が出てきます。そこから個性が見えてくるので、楽しい作業でした。小さい勢力とか、光が当たっていない大名の「志」を作っている時の方が楽しいかったですね。

―――ちなみに今回「戦時」と「平時」の2種類のビジュアルが用意されている武将がいるとのことですがこちらも大変だったのではないでしょうか。

木股:平服を持っているのは一部の武将になりますが、細かいところで着替えているのでこまめにチェックしていただければ嬉しいです。戦国武将の場合、鎧に特徴がある人が多いので、鎧を脱いでもその人の特徴が失われない、というところを意識していますね。

◆操作は単純だけど奥深さは健在



―――今回試遊させていただいた体験版での感想ですが、UIがシンプルだなという印象を受けました。例えば商業を発展させていく時もツリー状になっているのでアイコンを見て直感的に選んで指示することができるなと。本作からの初心者でもプレイしやすいよう配慮されていると感じたのですが、その辺のこだわりなどはいかがでしょうか?

小山:シミュレーションゲームと言えば、ずらりと並んだ数値を見て、それを調整するイメージが強いと思うのですが、最近は見た目で分かりやすく、というのは大前提としてあります。もちろん戦国時代のイメージがあるので他のシミュレーションゲームのように自由にはできませんが。その中でも受け入れられやすく、とっつきやすい画面である、というところを探りながらやっています。

木股:一般的なゲームで取り入れられているものを研究するようにはしています。『信長の野望』シリーズは独自路線を貫いてきたというイメージが強いと思うのですが、そこに世界的なシミュレーションや、流行りのゲームで馴染んだUIを意識して、作品に取り込んでいます。

小山:誰にでもわかる=簡単、というわけではないので、操作は簡単だけど奥深い部分は失わないように作っています。

―――操作に戸惑う時間にとらわれない分、じっくりと考える時間が増やせると思いました。特に3カ月ごとに行われる「評定」において、家臣から提案された案のどれを採用するかの「方策」を実行するところでかなり悩みました。自分としてはセオリー通りにやりたいなとも思うのですが、ちょっと変わった意見も取り入れたくなるというか。

小山:自分のやりたいこととか、周りの状況によって「これをやればいい」という正解があるわけではありません。操作としては選ぶだけなのですが、何を選ぶかが悩むところでもあり、面白い要素でもあると思います。

―――弱小大名であったら弱小大名なりの「方策」が生まれるわけですね。それこそ大名の数だけ「方策」が立てられると。

小山:例えば信長で勝ち方を見つけたとしても、それを武田家でやろうとしたときにうまくいくとは限りません。今現在置かれている状況、あるいは何年後かの状況によって変わってくるので、セオリー通りというよりは自分の中で先をイメージしながらプレイしていただくとより面白いのではないかと思います。

◆より精密になった3D マップで合戦がリアルに!



―――『大志』ではより精密な3Dマップが用意され、広さ、地形、属性により綿密な戦略を立てられるようになったとお聞きしました。本作の合戦の魅力などをお聞かせください。

小山:これまでは戦略ゲームなので基本的には戦う前に勝敗が決まっていました。兵力が多ければ基本的には勝つ、という流れであったと思います。今回も兵士の数が多ければ有利なのは当然ですが、戦う場所によって地形的な要素が絡み、一度に出せる兵士の数が限られます。どう兵力を動かすか、そこが腕の見せ所になるかと。

さらには一気に敵の士気を下げることにより一発逆転を狙うことも可能です。もちろん例えば極端に10倍の兵力に必ず勝てるというバランスでもないのですが、少ないからといって必ずしも負けるわけではないと。織田信長が奇襲をかけて今川義元を討ち取った「桶狭間の戦い」がゲームの中でも実現できる、というところとを目指して開発してきました。

―――『志』システムの採用もそうですが、合戦においても「人の心」をいかに扱うかが重要になると。

小山:そうですね。単純に兵力が0になって負ける、というより、奇襲をされたり、待ち伏せされたり、挟み撃ちされたりといった、戦況に与える兵士の「気持ち」を表現したかったので。バランスを調整しつつ、最終的にはより人間ドラマが生まれる戦場を作っていけたらと思っています。

―――例えば、史実にある合戦を3Dマップで再現した場合、文献に残っている兵力が展開できなかったり、逆に少なかったり、なんてことはあるのでしょうか?

小山:史実として伝わる通りの兵力を全て再現することは難しいですね。今回マップをよりリアルに再現しているので、史実として伝わるものを踏まえつつ調整をしています。3Dマップにて史実の要素をうまく再現することができれば、こちらとしても嬉しいところですね。

木股:古戦場と呼ばれるところはだいたいフォローしてあって、「桶狭間の戦い」とか、「姉川の戦い」「沖田畷の戦い」「厳島の戦い」といった、特殊な地形で戦ったり、少ない兵数で勝利した合戦では、それを再現しやすいような設定になっています。

―――兵力を揃え、データで勝つのではなく、史実にあった奇跡を自分の手で再現することも可能であると。

木股:やり方次第では再現できますね。

◆世の中の流れを踏まえて、最新のイメージを取り込む


―――大河ドラマや漫画、アニメなどで戦国ものが多く扱われていますが、そういった他のメディアで定着したイメージからの影響はあるのでしょうか?

木股:影響はありますね。常に新しい知識で、新しい武将の一面をみせることができたらなと。史実で新しい発見があったらどんどん取り入れていきたいと思っています。良い例が今川義元ですね。昔は信長に討たれた中途半端なイメージでしたが、研究が進み再評価がなされ、『信長の野望』でも地位があがっていきました。

また、これまで義理が低いと言われていきた最上義光も謀略は使うけどそれよりも自分の武勇を誇るというか。当時の評価も勇気があって力があって…という感じで。今回は「志」を含めそういった評価についても追及しているところです。

―――史実を再評価しつつ、ゲームとしての面白さも考えて能力を振り分けていくと。

木股:松永久秀などはゲームとしての面白さを考えると今まで通りの能力でいいかなと。いきなりいい人にはならないと(笑)

―――ここ数年で戦国ものの描き方がだいぶ変化したように感じます。有名な武将が天下を取る英雄記から、小さな勢力をそれぞれの立場に置き換えて感情移入しながら観るというか。「志」もそういう流れから来ているのかなと感じました。

木股:それは意識しています。昔だったら「ござる」口調で時代劇っぽく演出するのはセオリーだったと思うのですが、最近では「昔の人も自分と同じ人間なんだ」というところで人間味を出していこうと意識しています。

◆これから『信長の野望』シリーズを始める人に


―――私のまわりではアクションゲームから歴史ジャンルに興味を持った方が多いのですが、せっかく戦国時代に興味を持ったなら天下取りをシミュレーションをぜひ体感していただきたいなと思っています。そういう方に向け、「ここがいいぞ!」というところがあれば、ぜひお伝えください。

木股:表層的話になってしまいますが、昔よりカッコいい武将が多くなりました(笑)昔は一律「髭のおじさん」という印象が強かったと思うのですが、例えば30歳に至らずに戦死したという武将もいたりして。そういう人は若めに描いたり、カッコよかったという記録が少しでも残っていればカッコよくしています。見た目から「この人を使ってみたい」と思っていただけるようなキャラクター作りを心がけています。

ゲームの内容としては、細かく指定しなければならない部分を極力シンプルにし、奥深さを保ったままやり込めるようにしています。戦闘シーンも3Dなので、アクションゲームのような臨場感がお好きな方でも楽しむこともができるかなと。

小山:歴史イベントでも今までは有名な出来事を中心に取り扱ってましたが、今回は武将個人にスポットを当てているのでその武将の人生や人となりがわかるよう演出しています。武将の知らなかった一面を知る機会にもなるのではないでしょうか。

―――自分の思い入れのある人をやってみたり、プレイする中で志を見て気になった人をやってみるのもよさそうですね。

木股:マップで他の武将の「志」を閲覧することができるので、それを見ながら「知らないけどこの人気になるな」って感じて触っていただければ嬉しいですね。

―――武将たちをより身近に感じつつ、そのリアルな追体験が可能になったということで、楽しみにしています。最後に一言、お願いいたします。

小山:前作「創造」は30周年という事で、ある意味集大成として一区切りついた形にはなったのですが、「大志」はこれからの『信長の野望』の将来を見据えた第一歩としてAIにも力を入れています。未来につながるシリーズの第一歩として、完成度の高い作品をお届けしたいと思っていますので、期待してお待ちください。

木股:これまでお話した通り、いろんな面で新しい一面を見せていければなと。ゲームシステムとしても従来のシリーズとは違う新しい面が出せたらと思いますし、武将の面でも新しい一面を皆様にお見せし、歴史の魅力、そしてシミュレーションゲームの魅力を出すことができたらと思っています。

―――本日はありがとうございました。


区切りの年を迎え、新たな一歩を踏み出した『信長の野望』シリーズ。「大志」は最新作らしい試みがさまざまに仕掛けられているようです。これを機にシリーズに触れてみてはいかがでしょうか?

『信長の野望・大志』はニンテンドースイッチ/PS4/Windows PCにて2017年11月30日発売予定。価格は以下の通りです。

【通常版】
ニンテンドースイッチ/PS4版…パッケージ・ダウンロード版ともに8,800円+税
Windows PC版…パッケージ・ダウンロード版ともに9,800円+税
【TREASURE BOX】
ニンテンドースイッチ/PS4版…12,800円+税
Windows PC版…13,800円+税
【GAMECITY&Amazon.co.jp限定セット】
ニンテンドースイッチ/PS4版…51,800円+税
Windows PC版…52,800円+税
《みかめ》

ゲームと歴史 みかめ

ライター・イラストレーター・漫画家。 2011年よりゲームライターとして活動中。 2017年 ゼルダの伝説 30周年記念書籍 第2集ゼルダの伝説 ハイラル百科 ゼルダの伝説 30周年記念書籍 第3集 ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド:マスターワークス 2020年 あつまれ どうぶつの森 完全攻略本+超カタログ 2021年 ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD 完全攻略本

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