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【インタビュー】和田康宏の新作『Birthdays』の魅力に迫る!人類を生み出すも絶滅させるもプレイヤー次第

『牧場物語』を手がけてきたゲームクリエイター和田康宏氏(@Yasuhiro_Wada)の新作『Birthdays the Beginning』が、2017年1月19日発売にPS4タイトルとしてアークシステムワークスから発売されます。

ソニー PS4
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『牧場物語』を手がけてきたゲームクリエイター和田康宏氏(@Yasuhiro_Wada)の新作『Birthdays the Beginning』が、2017年1月19日発売にPS4タイトルとしてアークシステムワークスから発売されます。

ジャンルは“いのちをうみだすみんなのハコニワ”となっており、9月15日からスタートした「東京ゲームショウ2016」にも出展。和田氏の新作とあって注目度が高い作品ですが、いったいどんなゲームなのかいまいち分からない作品でもあります。

そこで「東京ゲームショウ2016」に訪れていた和田氏にインタビューを実施。本作の魅力を訊いて来ました。

編集・聞き手・文:栗本浩大(@koudai5511


――本作が発表されたとき、一番驚いたのは和田さんの新作がアークさんから出るということでした。ただトイボックスさんとアークさんは『魔都紅色幽撃隊』で一緒に仕事をされているので、それがきっかけなのかなと勝手に想像していたんですが、いかがでしょうか。


和田:もともとアークシステムワークス社長の木戸岡さんとは20年以上前からうすーく面識があったんですが、弊社の金沢十三男がプロデュース、今井秋芳さんが監督・脚本を担当された『魔都紅色幽撃隊』をきっかけにちょいちょいお会いすることになりまして、ある時に「和田さんも何か作ってよ」と言われたのが始まりです。

ただ最初は「僕のゲームの雰囲気ってアークさんに合うのかな」と心配していたんですが、木戸岡さんは「格闘ゲームだけではなく、もっとアークシステムワークスとしての幅を広げたい」と仰られまして、僕が前々から暖めていた『Birthdays the Beginning』の元となった企画をお出ししたんです。そしたら「難しい」「アカデミックだ」と言われてしまいまして(笑)。


――実は類似作品がなくてまったく想像できていません(笑)。先ほど少し見せていただきましたが、いわゆる環境シミュレーターに近い感じですよね。

和田:そうそう。でもね、僕としてはその段階で“分かりやすく、簡単で、快適”をコンセプトにして企画を練っていたつもりだったんですよ。だから「マジか……」って思いましたね(笑)。とはいえ「企画の根本的な部分はちょっとやってみたら?」「ただこれは難しいから、もっともっと簡単な方向を目指してほしい」とも言って頂け、「予算はこれぐらいね」という……たぶん木戸岡さんのポケットマネーだと思うんですけど(笑)、とりあえず普通じゃない流れで開発がスタートしたんです。

普通は社長が決めてきた話だったとしても、担当者を決めて、その人が決済を取って……と色々あると思うんですけど、そういうのが何にもなく、アークさんの中で知ってるのは木戸岡さんだけという状況でした(笑)。それで1年ちょっと作らせていただいて、去年の忘年会に呼び出されたんです。「ちょっと(作品の)説明して」と。その段階では6割ほど出来てたんで、スマホで撮影・編集して作った資料を忘年会の場で見せました。皆さんポカンとしたと思いますよ(笑)。

つまりは、社長の独断だったわけです。ただ僕は数ある企画の中でも一番作りたかった作品なので、めちゃくちゃ嬉かったですね。


――かなり思い入れのある企画なんですね。

和田:子供の頃って宇宙とか星に興味を持つじゃないですか。僕らの世代だと「ウルトラマン」とかに憧れて、「宇宙って何だろう」と考えていたんです。それから色んなことを夢見たり想像していたんですが、そんな中、本作の原点となる「ドラえもん」のひみつ道具に出会ったんです。「地球セット」ってやつなんですけど、これは小さな地球を作り出して、生命の誕生や進化なんかを観察できる道具です。最終的には人が暮らし始め、その地球の中にも入れるんですよ。それを見た時は小学生だったんですが、メチャクチャわくわくしまして、ずっとその気持ちを持ち続けていたんです。

そして大人になり、『シムシティ』や『シムアース』や『ポピュラス』が出てきました。どの作品も大好で、特に『ポピュラス』にはゲームシステム的に影響を受けたんですが、それらをプレイして「僕ならこうするな」と思ったんですよね。そういった事が積み重なり、本作が生まれました。


――「地球セット」のゲーム版というイメージで、なんとなく想像できてきました。ただまだまだ不明な点が多いので、まずは本作の目的から教えていただけますでしょうか。

和田:本作の目的は“文明を発展させる”ことです。まずは人間を生み出して、次に彼らを増やして、そして文明を作ると。シミュレーションゲームってあんまりストーリーが付いてないんですが、本作には簡単なストーリーがありまして、「訳も分からずこんなところに放り込まれてどうなってるの!?」って状況からスタートします。そしてストーリーが進んでいくと、自分の使命がだんだん分かってくるんですよ。

■プロローグ

わからないことがたくさんあるんだ。
みんなが「知っているつもり」なことはこの未知の世界のほんの一部にすぎない。


光に誘われるように林の奥にあった洞穴の中で目の前にあらわれたのは巨大なキューブだった。
そのかたわらには小さなキューブ状の物体と見なれない姿をした「いきもの(?)」が。
そんなふうにこの不思議な出来事ははじまったんだ……。

――そもそもの話になってしまうんですが、人間も居るんですね。

和田:本作では何もない地球から始まり、人類の文明が築かれるまでを描いています。とはいえ『シムシティ2000』みたいにロケットがドカーンとかはないですよ(笑)。文明的には中世ぐらいです。

――もしかして人類が滅びる可能性もありますか?

和田:もちろんあります。どんな世界が待ち受けているんでしょうね(笑)。

――それメチャクチャ面白いじゃないですか!普通に人類が滅んだ後の地球を見てみたいです。たぶんゲームが発売されたら滅ぼしてしまうと思います。

和田:そういう遊び方もアリですよね。シミュレーションゲームの一番良いところって、「これやったらどうなるんだろ」っていうのが、シナリオとして予め用意されているんじゃなくて、自身が行ったシミュレーションによって導き出せるところだと思うんです。だからやって見るまで分からなくて、それが最高に面白い。

あと面白さでいうと、子供の頃って宇宙や星に対する興味とか不思議を持っていたと思うんですが、大人になるとだんだん忘れちゃいますよね。そんな子供の頃に持っていた好奇心や、それに伴うワクワク・ドキドキが蘇るゲームを目指しています。


――なるほど、本作のことが分かってきました。あと、例えば猫が食物連鎖の頂点に君臨する世界も作れるわけですね。それより上の生物を生み出さなければいいわけですし。


和田:できますね。ただ食物連鎖の順番自体は基本ルールとして固定されていて、現時世界と同じように人間が頂点に居ます。因みに草が豊富にあれば草食動物が増え、草食動物が豊富だと肉食動物が増えるといった感じです。その辺りはシンプルかつ分かりやすくしていますが、あまり気にしなくても問題ないです。

というのも、アカデミックで難しいと言われ続けてきたので、基本的にプレイヤーができることを「土地を作る」だけに絞りました。そしてプレイヤーが気にするのは気温だけでいいんです。少し詳しくお話しますと、土地を高くすれば気温が下がり、低くすれば気温が上がります。これを世界の変化に当てはめると、気温を下げれば氷の世界になりますし、気温を上げれば乾いた世界になるわけです。極端な例ですが、例えば気温をガンガン下げればシロクマが誕生するわけです。あと、雪男(イエティやビッグフット)的な何かが誕生したりするかもしれませんね(笑)。


――そういった生物は確立で誕生するんでしょうか。

和田:確立というよりも“気温は何度で、どういった場所なのか”というのが基本です。例えば「周りに水が豊富で湿っている」とか「水辺から離れていて、乾いて砂漠のようになっている」とかですね。

――さらに生物たちは進化すると。

和田:「ライブラリ」という図鑑がありまして、進化ツリーや進化条件が書かれています。だから、例えば「シーラカンス」を生み出したいから、まずはあの生物を生み出して、進化する環境を整えて……といった遊びができるわけです。ただこれは先ほどお話したストーリーをクリアした後の遊びになります。生物は全部で300種類ぐらい居ますので、そういうのを最初から気にしてプレイすると大変じゃないですか。

なので、まずはストーリーを楽しみながらルールなどに慣れていただき、クリア後にまだ見ぬ生物を生み出す方法を探してほしいですね。友達同士で情報交換してもいいですし、wikiやSNSを見てもいいと思います。あと変な地形も作れますし、珍しい生物が誕生することもありますので、そういうシーンのスクリーンショットを取って、色んな人とシェアしてほしいですね。


――やはりシェアという要素は意識されているのでしょうか。

和田:していますね。タイトルに「the Beginning」と付けているんですが、本作を完成させるために結構諦めたことがあります。例えば季節とか昼夜とかですね。色んなことを削ぎ落として、まずはシンプルかつ面白くなる様に考え抜いたのが今の形なんです。そして僕はその先に繋げたくて、いろんな人に遊んでもらって、いろんな声を頂きたい。そのためにはシェア要素が大切だと考えていますし、それを引っ張る仕事もやっていこうと思っています。

――ではモチベーションという面ではいかがでしょうか。

和田:このゲーム、観察しているだけで面白いんですよ。全ての生き物が違う表情をするので、最終的には図鑑のコンプが最大のモチベーションになると思います。あとキャプチャーという要素がありまして、図鑑に登録させるにはその生物を捕まえる必要があります。最初は楽なんですけど、生物の種類が増えてくると探すのが大変で……。ねずみとか中々見つからないんですよ(笑)。でも見つけると「いたー!!ここにかぁ~~」ってメチャクチャ興奮するんです。この“発見”も本作の面白さですね。


――SLGであり、放置ゲームであり、育成ゲームである……けれど、どれとも違うということですね(笑)。

和田:自分で言うのもあれですけど、相変わらず変なゲームですよね(笑)。なんか他の作品の真似したくなくてですね、「これ良いよ」って言われて作ったらつまらないじゃないですか。だってお店に並んでるゲームが似たようなやつばかりだったら、その似たようなやつが好きなユーザーしか残らないわけで、やっぱり色んなのがあって、色んな人が寄ってくる。その方がゲーム全体良くなると思うので、それのきっかけにしたいなと思ってます。ただ「変なの作っておいて、やっぱり売れてないじゃん」って言われたら悲しいし悔しいので、多くの方にやってもらえるよう努力していきたいです。

――あと面白いと思ったのがアイテム類です。なにやら種を根絶やしにするアイテムもあるようで……。


和田:「絶滅の水」ですね(笑)。あと「不思議壷」というのもあって、壷に生物を入れておくと、好きな時に好きな場所へ連れて行けるんです。これはいろんな使い方が出来るんですが、分かりやすい例だと「この生物のスクリーンショットを撮りたいけど、なんかロケーションが微妙だなぁ」といった時に使います。環境が合わないとすぐに死んじゃうんですけどね。


――それは遊びが広がりそうなアイテムですね。前もって凶暴な生物を壷に入れておき、人類が繁栄した後に投入することもできると……。そういえば、恐竜以外にも絶滅した生物は登場するんでしょうか。

和田:もちろんです。基本的には今ある定説を下に作ってまして、一部オリジナルの要素を入れています。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

和田:またしても変なゲームを作っています。見た目は変わっていて分からないかもしれませんが、メチャクチャ面白いです。友達に借りてでも遊んでほしい……面白かったら買って下さいね(笑)。

また先ほども少しお話しましたが、タイトルに「the Beginning」と付けている通り、本作は『Birthdays 』というタイトルのほんの一歩だと思ってます。実はもっとやりたいことがあるんです。だから皆さんの声を一つでも多く聞きたいです。よろしくお願いします!

――ありがとうございました。
《栗本 浩大》
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