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【レポート】ナムコ黄金時代のIPを用いた「カタログIP×GameJam」開催!キーマンに実施の狙いを聞く

バンダイナムコエンターテインメントが実施している「カタログIPオープン化プロジェクト」。一定の手続きをふむことで、『パックマン』をはじめとした同社のカタログIP17タイトルを用いたデジタルコンテンツの制作・販売が可能になるというものです(注釈参照)

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バンダイナムコエンターテインメントが実施している「カタログIPオープン化プロジェクト」。一定の手続きをふむことで、『パックマン』をはじめとした同社のカタログIP17タイトルを用いたデジタルコンテンツの制作・販売が可能になるというものです(注釈参照)



11月6~8日には本プロジェクトの一環として「カタログIP×GameJam」が同社未来研究所で開催されました。会場にはプロのゲーム開発者から学生まで約60名が集結し、個性豊かな14作品を制作。閉会式では優秀タイトルの発表も行われ、盛り上がりました。

◆制作ゲーム一覧


1班:PAC-ROGUE(仮称)→バンダイナムコスタジオ賞


2班:SAVE THE PAC-MAN(仮称)


3班:ニャムコ大戦争(仮称)→Unity賞


4班:Galaga VS. (仮称)


5班:BATTLE CITY TYPE4(仮称)


6班:見たい!会いたい!剥がしたい!(仮称)


7班:ワンダーモモの逆襲(仮称)


8班:PAC-MAN SKY(仮称)→ネオゲーム喫茶876賞


9班:namco Pac Pac(仮称)


10班:STEALTH PAC-MAN(仮称)→バンダイナムコエンターテインメント賞


11班:Amazing4(仮称)


12班:進撃のパックマン(仮称)


13班:劇場版 アドベンチャー オブ ワルキューレ(仮称)


14班:わくわくAKABEIランド(仮称)


◆統合20周年記念が鍵となったIP開放


開催に先立ち、本プロジェクトの旗振り役であるバンダイナムコエンターテインメントの桝井大輔氏と大森大将氏、ゲームジャムの運営協力を行ったバンダイナムコスタジオの湊和久氏に、背景や狙いについて伺いました。

―――今までにない取り組みで、非常に注目しています。まず簡単に自己紹介をお願いします。

桝井: バンダイナムコエンターテインメントの桝井です。カタログIPオープン化プロジェクトの責任者を務めています。

大森: 桝井と同じくバンダイナムコエンターテインメントの大森です。プロジェクトの現場を担当しています。

湊 バンダイナムコスタジオの湊です。今回のゲームジャムで運営周りを担当しています。

―――IPを「開放」するというのは、ゲーム史に残るような大決断だと思うのですが、そもそもどういった背景や狙いがあったのでしょうか。

桝井: 大きく2つの理由があります。2006年にバンダイとナムコが経営統合を行って、今年で10周年になるのを契機に、何かおもしろいことをやりたいという機運が社内で高まっていました。どうせやるなら話題性があって、ふだんやれないことをやりたいなと。その中で弊社のようにIPをビジネスの種にしている会社が、思い切って開放したら、きっとすごいことになるだろうと。それが第一の理由です。



―――実際、リリースを出されたときはビックリしました。

桝井: 弊社には旧ナムコ時代からの有名IPがたくさんありますが、大事にしすぎたあげく、これまで「箱入り娘・息子」になっていたきらいがあると思っています。『パックマン』『ギャラガ』『ゼビウス』・・・社内でも熱狂的なファンがいて、逆に「IPが偉大すぎて変にいじれない」状態になっていました。これだけ多くのファンがいるにもかかわらず、新作ゲームが出せていなかった理由の一つには、そうした「IP愛」があります。

―――たしかに、旧ナムコ黄金期のスターばかりですもんね。

桝井: だったら外部の方のお力やアイディアを借りて、いろんなことに使ってもらった方が、可能性が広がるんじゃないかと。前々から漠然としたアイディアは社内でもありましたが、それがうまく統合10周年という時期と結びついた形です。タイミングが良かった。

―――第二の理由は何でしたか?

桝井: もともと弊社はゲームだけではなく、あらゆる遊びを作ることがポリシーです。新たに「アソビきれない毎日を。」という経営理念をかかげたのも、そうした思いからです。ところが、いつのまにか社員も社会からの目も「バンダイナムコエンターテインメントといえばテレビゲームの会社だよね」という風に、絞られてきたきらいがありました。これを積極的に壊していかなければいけないと考えています。

―――まさに「遊びをクリエイトする・・・」

桝井: そうですね(笑)。そのためにはこれまで弊社とおつきあいがなかったような、異業種の方々とも積極的にコラボレーションしていきたい。そのためにはIPを開放するのが一番だと考えたのです。ゲームだけではなく、ネットにつながるサービスであれば、原則としてOKです。これが二つ目の理由ですね。

―――ホームページではすでに数多くの企画が上がっていますね。

桝井: 「法人・学校法人」「公認クリエイター」「個人クリエイター」という3つのカテゴリーがあり、これまで200件以上の申請をいただきました。うちわけは企業から174件、個人から46件、学校から17件です。そのうち108件が審査を通り、18件がスマホゲームなどに提供されています(11月5日現在)。反響の大きさに我々も驚いています。

―――そうした中で今回、ゲームジャムが開催された理由は何だったのでしょうか?

桝井: 内訳からもわかるとおり、今はまだ企業が中心です。我々としては、もっと個人の方をまきこんでいきたい。その「はじめの第一歩」として何が良いだろうと話をしていたら、現場の開発者たちから「ゲームジャムをやりたい」という声があがってきました。それは良いアイディアだということで、いろいろ準備を整えて実施にいたりました。


ゲームジャム会場の様子

―――準備はいつくらいから始められたのですか?

湊: 5月くらいから準備を始めて、ようやく11月に開催できることになりました。IP開放の話を聞いてから、ちょこちょこと「ゲームジャムやらないんですか?」と社内で声をかけていたら、現実になって感無量です。自分は世界最大のゲームジャム、グローバルゲームジャム2015でもバンダイナムコ会場の運営をさせていただきました。その経験を生かせればと思います。

―――湊さん自身もゲームジャムによく参加されていますしね。

湊: IT系企業では、新サービスや新製品の立ち上げ時にハッカソンやアイディアソンを絡める例が増えています。こちらはゲーム会社なんだから、ゲームジャムくらいやるだろうという思いがありました。

―――ゲームジャムにあわせて、カタログIPの素材(グラフィック・サウンドなど)をかなり潤沢に用意されていましたね。

湊: アーケードのROM(実機)からグラフィックを吸い出して、クリック一発でUnityのスプライトとして使えるように調整しました。ただ当時と今とではデータの「作法」が異なる部分もあり、けっこう手こずってしまって・・・。新作の3Dデータに関しても、開会式の最中まで最後の調整作業が続いていたほどです。なんとか無事開会に間にあったので、よかったです。


Unityで簡単に使える多数の素材が用意された

―――カタログIPに話を戻すと、今回は国内だけの試みなんですよね。

桝井: 海外の方が人気の高いタイトルもあり、お問い合わせはたくさんいただいています。ただ、いきなりワールドワイドでオープン化すると、どんな問題が発生するか予想がつかないので、まずは国内だけに留めさせていただきました。現地にどんな法律があって、どんな問題に抵触する可能性があるかなど、リサーチする必要があります。弊社グループの現地法人ともコラボレーションして、準備を進めている段階です。

大森: 実は「カタログIPオープン化プロジェクト」には専任部署があるわけではなく、桝井と自分ともう一人の3人で、本業のかたわら事務局対応をしています。そのため、リリースを出してから最初の1ヶ月は準備で大忙しでした。現在も、たくさんのご応募をいただいて手一杯な状態ですので、まずは国内で実績を作って、問題点をつぶして、そこから広げていきたいですね。

―――どういった問い合わせや企画申請が多いですか?

大森: いま社会で第一線で活躍されている年齢層、具体的には40歳前後の方々が「カタログIP世代」なので、そういった方からお問い合わせ・ご応募いただくことが多いです。大学や専門学校などでは授業教材むけに使用したいというご提案も多いですね。

―――現在使用できる17タイトルはどのように決められたのですか?

大森:最初に考えたのは「出し惜しみをしない」ことと「できるだけ自由に使ってもらえるようにする」ことでした。もっとも当時の人気タイトルが今のユーザー層にしっかり受け入れられるかというと、そこもまた違いがあると思います。そこで、いろいろなリサーチをふまえて、「絶対に外さない」タイトルを上から順番にまとめて並べました。

―――ということは、今後のIP開放については・・・

大森: まずはこの17タイトルで様子をみてみる予定です。実際、「この17タイトルでカタログIPオープン化プロジェクトが盛り上がらなかったら、何をやってもダメ」というくらいの意気込みですので、引き続き盛り上げていきたいと考えています。

―――今回のゲームジャムで完成したゲームを公開される予定はありますか?

大森: そこはプロジェクト全体のルールともかかわるのですが、アプリの配信を行う場合は事前に公認クリエイターに登録していただく必要があります。その上で有料配信か、無料の場合でも広告をつけて配信していただき、一緒にビジネス化しましょうというルールです。

―――なるほど、そこは開発チームの方針次第というわけですね。ちなみにアプリストアで配信する場合、配信先は国内のみとなりますか?

大森: はい、そうなります。

―――ぜひ実際に配信されるタイトルが出てくることを期待しています。

大森: そこは我々も期待しています。実際問題として、権利処理が複雑化してしまい、何もリリースされないという事態は一番避けたかったところです。そのため企画審査も簡単にしていますし、内容の監修も行わず「公序良俗に反しないもの」であればOKとしています。我々が思ってもみなかったアイディアががどんどん出てくることを期待しています。

―――本プロジェクトがマーケティング部門からの発案だったのに驚きました。本プロジェクトにおける「成功の指標」などはあるのでしょうか? 先ほどのロイヤルティ収入もその一つかと思いますが・・・。

大森: それは最初に説明したとおりで、社内IPの再活用と、新規企業とのおつきあいという二軸があるかと思います。そのうえで、どんどんおもしろいもの、ユニークなものが出てきて欲しいですね。

◆ファン目線で楽しんだゲームジャム


インタビュー後「カタログIP×GameJam」の参加者に話を伺ったところ、「子供の頃にファンだったゲームのキャラクターや素材を使って、新しいゲームが作れること自体がうれしい」「昔に戻って子供の頃の自分に教えてあげたい」という声が異口同音に聞かれました。

ゲームジャム終了後も制作チームによって継続開発の進捗状況がSNSのタイムライン上に報告されるなど、いくつかの作品はリリースに向けて動いているようです。どんなゲームが遊べるのか、今から楽しみですね。期待して待ちましょう!

(注釈) プロジェクト説明:
「カタログIPオープン化プロジェクト」とは、バンダイ・ナムコ統合10周年記念企画として、バンダイナムコエンターテインメントが実施している、ネットワークエンターテインメントのさらなる事業領域の拡大を目的とした取り組みです。

クリエイター登録することで、カタログIP(同社保有のオリジナルIP)17タイトルを使った二次創作が、デジタルコンテンツの領域において可能となります。参加には、クリエイター登録が必要です。作品の公開は日本国内のみとなります。

本プロジェクトの対象タイトルは、以下の17タイトルとなります。
ギャラガ/ギャラクシアン/源平討魔伝/スカイキッド/スターラスター/ゼビウス/ディグダグ/ドラゴンバスター/ドルアーガの塔/パックマン/バトルシティー/バベルの塔/マッピー/妖怪道中記/ワギャンランド/ワルキューレの冒険 時の鍵伝説/ワンダーモモ


(C)BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

記事提供元: gamebusiness.jp
《gamebusiness.jp》
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