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「ゲームはいよいよ普遍的な存在になる」角川ゲームス安田氏が語るゲーム業界の2030年

角川ゲームス代表取締役社長にしてフロム・ソフトウェア代表取締役会長の安田善巳氏。もっともアラフォーには「ジャムおじさん」というペンネームの方が有名ではないでしょうか(過去『Beep』などで執筆)。

ゲームビジネス 開発
角川ゲームス代表取締役社長の安田善巳氏
  • 角川ゲームス代表取締役社長の安田善巳氏
  • インターラクト代表取締役社長の平林久和氏
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角川ゲームス代表取締役社長にしてフロム・ソフトウェア代表取締役会長の安田善巳氏。もっともアラフォーには「ジャムおじさん」というペンネームの方が有名ではないでしょうか(過去『Beep』などで執筆)。日本興業銀行、テクモ代表取締役など一貫して経営畑を歩みつつ、今でも「仕事の8割がディレクション業務」と本人が語るように、現役バリバリのプレイングマネージャーを貫いている人物です。

この安田氏が「―特別トークセッション―2030年のゲーム産業を予測するキーワード」と題してOGC2015に登壇しました。セッションはインターラクト代表取締役社長でゲームアナリストの平林久和氏を聞き手に行われ、時間の経過を忘れさせるような密度の濃いトークが繰り広げられました。ここでは安田氏の発言を中心にレポートします。

はじめに「なぜ2030年なのか?」という平林氏の問いかけからスタートした本セッション。安田氏は「5~10年のロードマップは企業や自治体なども作成している。非連続なことが考えられるもっとも近い未来が15年後で、それが2030年だろう」と返しました。そしてアタリVCSやカセットビジョンなど、家庭用ゲーム機の市場が立ち上がったのが1980年とすると、ちょうど半世紀でもあると補足。続いて「ゲームは普遍的な存在になる」「ゲームは応用される」「ゲームの国境が編集される」という3つのキーワードを上げました。

■キーワード(1) ゲームは普遍的な存在になる
安田氏は「ゲーム業界の人間は嫌がるかもしれませんが」と前置きし、ゲームはまだ普遍的な存在ではないと言います。1兆円とされる市場規模も国内GDPの0.2%にすぎず、雇用人口も限定的で、コンテンツ産業にしても漫画・アニメ・ゲームと最後に補足されるような位置づけなのが事実です。しかし、この1年でずいぶんと状況が変化し、普通の女性が好きなドラマを語るような感覚で、常時3~4本のスマホゲームを遊ぶようになってきたと安田氏は語ります。これが2030年になると、人口統計上すべての年代でゲームを遊んだ世代が存在することになります。これをもって安田氏はゲームが普遍的な存在になるとしました。

■キーワード(2) ゲームは応用される
「ゲーム産業は自分たちのノウハウを活かして他産業とコラボするようになります」と安田氏は語ります。ゲームの人に優しく、誰でも直感的で楽しく遊べる点や、集中力を持続させながら一定のことを続けさせる力などは、すでに教育・医療などさまざまな分野で応用が始まっています。安田氏は「認知症予防に散歩とカラオケが推奨されているが、ここに近い将来ゲームが入ってくる」と分析。また俗に第四の産業革命などと言われる「産業のスマート化」の流れに対しても、ゲームは人間のアイディアや想像力によって高い付加価値が生まれる産業なので、もっともその影響を受けにくいと補足しました。

■キーワード(3) ゲームの国境が編集される
ゲームのマーケティングデータは現在、プラットフォーム別に作成されています。これが2030年には「JRPGのあるゲームのプレイヤーが全世界で何千万人いて、その中でスマホ版・ゲーム機版・その他版のプレイヤー数や売上が換算されるといったように、根本的に捉え方が異なってくる」と分析します。その一方で日本は過去10年間、「3Dであること、フォトリアルであること、60FPSであること」など、海外から不利な競争を押し付けられてきたと指摘。2030年に向けてもう一度、競争条件を変えていく必要があるとしました。

実際『ロリポップチェーンソー』の開発中、海外パブリッシャーのワーナー・ブラザース・インタラクティブ・エンタテインメント幹部にプレゼンを行った際、「金髪・女子高生・チアガール」という主人公に対する反応が非常に良く、驚かされたと安田氏は振り返ります。特に「血が出て虹が出る」演出などは、日本人ならではだと言われ、はじめてゲームの国境について意識したというのです。「FPSがアメリカで流行するのは、独立戦争で勝ち取った民主主義という、彼らにとっての『物語』が込められているから」(安田氏)。日本人が持つ価値観とは異なるため、そこが逆に世界とゲーム開発で勝負する際のヒントにもなるといいます。

最後にゲーム産業の課題として人材育成についての議論もありました。安田氏はゲーム産業の未来は楽観視しているとしつつも、「社員の働き方や会社と社員の関係は過去30年間で様変わりしている」として、働いている人が本当に幸せなのか。新しいモノに敏感な人たちが社内でリーダーになり、次の世代を率いていけるのか、老婆心ながら心配になっているといいます。

安田氏は「すべての作業には意味があり、会社としての大きな枠組みの中に組み込まれている」として、個々の社員にそうした全体像を理解させることが大切だとしました。そしてプロジェクトのはじめに、社員に対して今回やりたいことと、会社全体の中での位置づけについて紙に明記してもらっているとしました。その上でプロジェクトの途中で問題にぶつかると、あらためて自分が書いたことに立ち戻ってもらい、改善点について話し合うのです。これを続けていくことで、次第に本人に自覚が芽生えてくるといいます。

最後に安田氏は「自分の考えを持ってプロジェクトにとりくみ、壁をのりこえながら成長してもらうことが大切で、上司の言うとおりにやるとぐだぐだになる。これを続けることで、プログラマーのように専門職とみなされがちな職業でも、ジェネラリストが育ってくるし、育てられると確信している」とコメント。まだまだこれからというところで、残念ながら時間切れとなりました。今後もまた別の機会に続きを聞きたいと思わせる内容でした。
《小野憲史》

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