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【CEDEC 2014】開発会社どうしがガチンコトーク。バイキングとジェムドロップが考える「理想の協業関係」とは?

昨今のゲーム開発シーンにおいて、開発会社に外部の協力会社が係わったり、個人クリエイターが参加する光景は、当たり前となっています。

ゲームビジネス 開発
【CEDEC 2014】開発会社どうしがガチンコトーク。バイキングとジェムドロップが考える「理想の協業関係」とは?
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昨今のゲーム開発シーンにおいて、開発会社に外部の協力会社が係わったり、個人クリエイターが参加する光景は、当たり前となっています(フィーチャーフォンのウェブアプリ全盛期には、社内にエンジニアとゲームデザイナーしか存在せず、グラフィック素材はすべて外注という例も見られました)。しかし、こうした案件では、ともすれば互いが疑心暗鬼に陥ったり、トラブルにつながりやすいのも事実です。



そこでアクションゲームの開発を得意とするバイキングと、昨年起業したばかりのジェムドロップが実際に係わったプロジェクトを元に、互いに「あの時どう思っていたか」を語り尽くすというユニークなセッション「垣根を超えろ!本音で語れ!~開発会社と協力会社/個人契約の本当に良い関係」が行われました。参加者はジェムドロップの北尾雄一郎氏と栗野智行氏、そしてバイキングの尾畑心一朗氏と山村勇一氏です。



バイキングの尾畑氏はもともとカプコンの企画マンとして、『機動戦士ガンダムSEEDD 連合vs.Z.A.F.T.』シリーズなどの開発を手がけたのち、2007年に東京で独立。『ガンスリンガーストラトス』シリーズなど、数々のアクションゲームを手がけてきました。一方でジェムドロップの北尾氏は、トライエースで『エンド・オブ・エタニティ』など、数々のRPG制作にプログラマやプロデューサーとして参加。2013年に独立しています。

バイキングの信条は「方針は明確だが仕様は大ざっぱで、出来る人は尊敬し、駄目な人にはクライアントでも牙をむく」というもの。一方でジェムドロップは「求められる物は作らない、それ以上の物を作る」を合言葉に、お互いにメリットがあると思えば、どんどん突っ込んでいくスタイルです。ともすれば空気を読むことが求められがちな日本のゲーム業界において、かなり異質な社風だと言えるでしょう。

こうしたアクの強い企業同士の組み合わせは、うまくかみ合えば何倍もの成果を発揮する一方で、下手をするとバチーンとぶつかったまま、そのまま二度と交わらない・・・そんな危険性もはらんでいます。パネルディスカッションも、そんな「ガンガン攻める」両社だけに、白熱したトークの応酬となりました。

もともと2008年ごろに共通の知り合いを通して会った尾畑氏と北尾氏。その後、北尾氏が起業について相談したのをきっかけに、気がついたら仕事の話が決まっていたのだとか。もっとも約60名の社員を抱えるバイキングに対して、ジェムドロップは起業したてで規模が違いすぎます。バイキングが受けた案件に対して、ジェムドロップからプログラマが2名参画し、部分受けを行うスタイルで作業が進められました。



ちなみにバイキングはジェムドロップを「優秀なプログラマーを抱えていて、ゲーム開発に誠実だが、ガメツイ(褒め言葉)集団」という印象を抱いていたのだとか。一方でジェムドロップはバイキングを「ゲームデザイナーが絶対的な権限を持っており、百戦錬磨の手段で、ただでは転ばない(良い意味で)集団」という印象を持っていたといいます。つまり「お互いに良く知らない、だけど一目おいている」間柄だったと言えるでしょう。

またバイキングもこれまで、しばしば他の開発会社の部分受けを行ってきました。しかしクライアントによっては、「急に予算が安くなって資金繰りが大変になった」「担当者が勘違いして『貧乏神』になった」「おもしろさに口を出せない座組になっていて、現場のモチベーションが低下した」など、さまざまな軋轢が発生したと言います。そのため、自分たちが発注者側になった時も、相手にこうした思いをさせないことが、結果としてゲームの完成度を上げることにつながることに、早くから気がついていました。

そこでバイキングからジェムドロップへの発注も「まずは様子見」だったといいます。逆にジェムドロップ側は「どんどん土足で踏み込んで提案していこう。キッチリ仕事をして次につなげよう」という前のめりの姿勢だったとか。一方で「最初の仕事なので入金の調整をお願いしつつ、実績としても公開したい」という思いもありました。いわばジェムドロップが「攻め」で、バイキングが「受け」だったといえるでしょう。



バイキングからのオーダーも「敵キャラクターのAIを強化して欲しい」という大ざっぱなもので、特に仕様書などもなかったのだとか。もっとも「目的が明確だったので、プログラムを一気に書き替えるなど、自由にできました」(栗野氏)と話されました。バイキング側も「ソースの解析から始めてもらって、途中から丸投げになっていましたね」(山村氏)と、全幅の信頼を置くようになっていきました。

他に北尾氏が「僕らは家庭用ゲームばかりやってきて、アーケードゲームの経験がまったくなかったので、勉強になりました」と語ると、尾畑氏は「そこはまったく考えていなかった。逆にRPGが得意と聞いていたので、どの程度アクションゲームが任せられるか、注目していました」と回答しました。

このように、総じてバイキング側は「腕前は一流で、自社のやり方とも相性が良く、順調に進められた」、ジェムドロップ側は「提案が通りやすく、自由に作業が進められた。また入金タイミングをかなり調整してもらえた」と、双方がWIN-WINな関係で作業ができたようです。



一方、本案件とは別に2013年末に急遽、新たな協業案件が発生しました。マスターアップ寸前で急遽プログラマが必要になったのです。そのため、ある程度実力がわかっていたジェムドロップ以外には頼めないという内容だったといいます。

そこで尾畑氏は「ゴールと期間だけハッキリさせて、後は自由にやってもらい、報酬面で良い条件を提示すれば乗ってくるはず」と考えました。一方で北尾氏は「前の仕事が収束しつつあり、オリジナルゲームの開発に移行したかったが、まだ体力がなかった。そんなときに短期間で好条件の依頼がきたので、渡りに船だった」と語りました。



ちなみに、その頃には両社の信頼関係がかなり深まっており、バイキングはジェムドロップに新人プログラマのコードレビューをお願いしたといいます。「普通は外注にクライアントのソースをレビューさせたりしませんよね。でも、手が足りなくて・・・。お願いできて良かったです」(山村氏)。「ふだんから全体を見ながら仕事をする癖がついていましたし、バグもつぶして上げたかったので、よかったです」(栗野氏)と、双方の事情が語られました。



その後、二つのケースをもとにディスカッションが行われました。バイキングは協力会社や個人クリエイターに発注する際、「ゴールを明確にし、ステークスホルダーの最優先事項を理解しつつ、各々の個性と実力を把握して、それ以上は計算に入れない」ことを重視していると言います。尾畑氏はこれを「座組を考える」という表現でまとめました。「良い仕事をするのなら座組を考えるべき。座組で7-8割は決まります」(尾畑氏)。

これに対して北尾氏は「なぜクライアントが自分たちに仕事を発注したのか、その理由を自分たちなりに理解することが大事」だとコメントしました。そこを押さえれば、自分たちの強みを活かして、先方のリクエストに応えられるといいます。また両者のメリット・デメリットを意識しつつ、ゴールを共有できれば、そこまでの道のりは各々の得意なやり方に任せるのがベストだと補足しました。



ビジネスの現場では、どうしても業務を発注する側/受ける側という立ち場の違いが発生します。ある局面では発注者側でも、少し視野を広げてみると受注側という状況も、少なくありません。作業がうまく進んでいる間は気にならなくても、ひとたび困難な局面に陥るとネガティブスパイラルに陥ることもあります。そんな中、両社は異口同音に「お互いが良い成果を出すために、使う側・使われる側で良いのか」という問題提起を行いました。ゲームビジネスが多様化し、さまざまな協業関係が発生しうる今だからこそ、重要なセッションだったといえるでしょう。
《小野憲史》
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