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【CEDEC 2014】「Project Morpheus」で実現する未来・・・VRゲームの開発ノウハウをSCE・吉田修平氏が一挙公開

本格的なVRゲームは前人未踏の分野。実際にコンテンツを開発してみなければわからない、さまざまなノウハウが存在します。ソニー・コンピュータエンタテインメントの吉田修平氏はこれまで同社が蓄積してきたVRゲーム開発のノウハウを披露しました。

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【CEDEC 2014】「Project Morpheus」で実現する未来・・・VRゲームの開発ノウハウをSCE・吉田修平氏が一挙公開
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本格的なVRゲームは前人未踏の分野。実際にコンテンツを開発してみなければわからない、さまざまなノウハウが存在します。ソニー・コンピュータエンタテインメントの吉田修平氏は「VR ~Project Morpheusで体感する未来~」で、これまで同社が蓄積してきたVRゲーム開発のノウハウを披露しました。

ソニー・コンピュータエンタテインメント ワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏


はじめに吉田氏は「プレゼンス(存在感)」という概念を紹介しました。しばしばVRコンテンツの特徴に「没入感」という用語が使用されますが、VRゲーム開発者の中では「プレゼンス」という用語が用いられるとのことです。これは没入感をこえた「別の世界に自分が存在することを信じてしまう」感覚で、VRでのみ実現可能なもの。もっともプレゼンスはとても壊れやすく、ちょっとしたことで現実に引き戻されてしまうため、いかに違和感を感じさせる要素を取り除くかがキモだとされました。

はじめに吉田氏は「VRコンテンツ制作はテーマパークのアトラクションを作るようなもの」だと説明しました。既存のアセットも流用できますが、ゲームデザインはVR用にイチから考え直す必要があります。VR専用に、イチからコンテンツをデザインするのが一番良いというわけです。

「フレームレートが一番重要で、60FPSでなければ発売すべきではない」とも提言されました。フレームレートが高ければ高いほど、シミュレータ酔い(3D酔い)が減少するからです。現実でも乗り物酔いしてしまうような動きは、VRコンテンツでも禁物です。さらにVRならではの要素として、急な加速は避けるべきだとのこと。プレイヤーは制止しているのに、視覚だけ動いているように見えるため、脳が混乱してしまうのです。

実際に坂道をそりで駆け下りる『ストリート リュージュ』というデモでも、動き出しはゆっくり加速する、相手のそりにぶつかっても止まらずに、速度を落とすペナルティを加えて、コリジョン抜け(オブジェクトを抜ける)させるようにしたとのことです。またゲームの途中でも要所、要所で必ずポジショントラッキングをさせる工夫が求められるとしました。

カメラの動きも重要です。カメラ移動はプレイヤーの頭部の動きのみで行い、ゲーム内の地平線を守ることが求められます。そのためカットシーンのようにカメラが別の方向に飛んだり、カットごとに切り替わるような演出は作り直すか、削除するべきとのこと。またはゲーム内にバーチャルスクリーンを表示するエリアを作っておき、そこで再生するなどの工夫が求められるといいます。

プレイヤーの姿勢をゲーム内の姿勢を合わせることも重要です。手や体の一部(または影)を画面に表示させ、動きを同期させるのも、体性感覚を保つうえで重要なテクニック。画面上にコクピットやフレームがあるとプレイヤーは安心するとも語られました。実際に海底探索中にサメと戦う『THE DEEP』でも、檻の中に入って海中に潜るという設定になっています。

THE DEEPCastle


体性感覚を保つという点では、ゲーム内のモノの大きさ(スケール)を現実にあわせるというTIPSも紹介されました。3Dオーディオも非常に効果的とのことです。またゲーム内キャラクターがユーザーを認識して見つめたり、話しかけたりする演出もプレゼンスを高める効果があるとしました。

またVRコンテンツでは、まだプレゼンス自体に価値がある段階であるため、体験者はゲームの目的よりも、ゲーム内世界とのインタラクション自体を楽しむ傾向にあるといいます。ゴールをめざして進むのではなく、壁やモノに触ろうとしたり、周囲をぐるぐると歩き回ったりするのです。

そのためステージに物理現象やフィジックス、パーティクルなどを用いた演出を仕込んでおき、プレイヤーの動きにあわせて表示させるなどすると、非常に喜ばれるとのこと。キャラクターの移動速度も通常のゲームでは速くすることが多いが、VRコンテンツでは現実と同じにしたほうが良いとされました。また、こうした演出を加えることで、コンテンツの消費速度を抑えられるメリットもあるといいます。

他にプロジェクト・モーフィアスでは(オキュラスリフトも同じですが)ゴーグルをセットすると周囲が見えにくくなるため、座って体験させる方がベターです。しかし、そればかりではコンテンツの内容が限定されます。またプレイヤーの動き自体が周囲からすれば一つのコンテンツになり得ます。そのため、必ずしも座った体験でなくてもいいとのこと。ただし安全面の配慮は必要とのことでした。

意外なところでは、一人称視点のコンテンツにとらわれる必要はないとも言います。シミュレーションゲームのように、神の視点でのゲームプレイにも向くのです。その場合ユーザーの役割はゲーム内カメラとなります。VRコンテンツの幅が広がりそうです。

このほか吉田氏はVRゲームの歴史的背景や、ゲーム以外の可能性、普及のための今後の課題などについて説明しました。特に課題面では「技術面」「ビジネス面」に加えて「社会とのかかわり」について触れ、「偏見をもたらさない、明るくてソーシャルなイメージ作り」を進めたいとコメント。ゲーム内の画面をリアルタイムに外部ディスプレイで表示し、周囲の人も一緒に楽しめるようにすることにこだわった、などと話しました。

講演の冒頭、吉田氏はVRコンテンツは始まったばかりの分野であり、先駆者であるオキュラスVR社とも良好な関係を築きながら、VR体験の伝道者として「この素晴らしい体験を、ぜひ多くの人に広めたい」と語りました。すでに大手パブリッシャーでは専用コンテンツの開発も進行中ですが、実際のところ本講演で一番恩恵を被るのが、オキュラスリフトの開発者コミュニティであることは、言うまでもないでしょう。

同社はすでに公式サイトなどで開発者向けノウハウ集を公開しており、GDC2014でも技術講演を行っています。吉田氏の講演は企業やプラットフォームの垣根をこえて開発ノウハウを共有し、開発者コミュニティと共に、良質なVRコンテンツを増やしていこうとする姿勢の表れだったといえそうです。
《小野憲史》
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