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【SIG-Audio#4】ゲームのオーディオをめぐる最新の動向・・・GDC2013報告会 オーディオトピック編

NPO法人IGDA日本オーディオ専門部会(SIG-Audio)は2013年05月24日(金)、「SIG-Audio#04 GDCオーディオ報告会」をスクウェア・エニックスで開催しました。

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NPO法人IGDA日本オーディオ専門部会(SIG-Audio)は2013年05月24日(金)、「SIG-Audio#04 GDCオーディオ報告会」をスクウェア・エニックスで開催しました。

バンダイナムコスタジオの中西哲一氏は「オーディオトピック編」と題し、GDC 2013におけるオーディオ関連のセッションについて全体的な動向と、いくつかのトピックを取り上げた報告を行いました。

SIG-Audio#4 GDC 2013 AUDIO REPORT ゲームオーディオ トピック from IGDA Japan SIG-Audio


まずは1日通して行われる、オーディオ開発の基礎講座Audio Boot Campから。

最初に行われた「How to Fail - And Prevail - As a Composer」というコンポーザー向けのセッションでは、作曲に対する心構えなどが論じられました。

作曲に際して意識するべきワードとして「YOURSELF」、「CLIENTS」、「MUSIC」、「TRENDS」、そしてほんの少しの「SUPRISE」と5つのワードが挙げられました。ほかにも「作曲家たるもの愚か者であれ」や「ありきたりはやめなさい」と言ったフレーズを交えながら講座は展開していきました。中西氏は「結局、曲の作り方は精神性によるものが大きいので、参加者に対しての贈る言葉集だったのでしょう」と本報告本セッションをまとめました。

セッションの最後には『Call of Duty: Modern Warfare 2』で作曲を手がけたHans Zimmer氏、『Call of Duty: Modern Warfare 3』、『Far Cry 3』で作曲したBrian Tyler氏などの数名のコンポーザーの言葉が引用されており、中西氏の指摘したようにコンポーザーの精神性を後押しする側面の強いセッションだったようです。

続く「Dynamic Game Factors」は、距離や遮蔽効果といったサウンドの多彩な変化について扱ったセッションです。いかにもゲームらしいセッションで、セッションのとっかかりも映画と比較してゲームのサウンドは制約が多い、という内容から始まります。ただし、制約が多い一方、それこそがゲームにおけるサウンド制作のおもしろいところでもある、と中西氏は強調します。その一方でCPUやメモリといった各種リソースが共有の財産であるため、「それが原因で争うこともある」と、会場の笑いを誘いました。

Blizzard EntertainmentのテクニカルサウンドディレクターTomas Neumann氏による「Bring Me Problems, Not Solutions!」というセッションでは、彼の問題解決に対する姿勢や、その秘訣が語られました。表題どおり、が示す通り解決方法ではなく、どういう問題なのかを知ることが重要であるという主張で、問題解決にあたっての姿勢を以下の3つのステップに分けて説明しました。

最初のステップは「What:なにが求められているのか考える」。相談内容に対して、単に解決方法を提示することは必ずしもよいわけではなく、そこに潜む本当の問題の見極めが重要ということです。次のステップ「Why:それがなぜ必要かを説明する」では、それがあることでゲームがよくなっているかだとか、プレイヤーのためになるのか、といったことを考えながら問題解決に取り組む姿勢を強調しています。最後に「How:どうやって実現するか決める」。問題に対する理想的な解決方法はいくつもあるのですが、開発コストや期間、技術といった部分を考慮したうえでよい落とし所を見つけなければなりません。しかし、希望通りの設計が得られなくとも改善の手助けになることはあると主張しました。

具体例として挙げられたのは「体力低下時に専用のミックスを呼びたい」という相談です。この場合、実際には「体力低下時以外の状況を含む、多様な状況において適したミックスにしたい」というのが本質的な要望であり、問題の見極めをすることで単に言われたとおりの実装をするよりもよい結果をもたらすことができます。

「プログラマの方も、サウンドクリエイターに対してこの視点で接してもらえるといい結果が生み出せるのではないか」と中西氏。それと同時に自身も要望をそのまま聞き入れてしまう面があると顧み、コミュニケーション手段の最適化の必要性にも言及したうえで、本セッションが非常に有用であったと結びました。

「What to Do While You're Waiting」というセッションでは、フィールドレコーディングに関するノウハウが語られ、収録風景の写真が多数紹介されました。銃ひとつとってみても車に弾丸が当たる音を実際に録ることもある、という海外のフィールドレコーディング。ブルドーザーや爆発物、飛行機といった大掛かりなもの、犬や馬に始まり、果てはラクダといった多様な動物に関する録音の模様が紹介されました。無論、これらがどこでも簡単に実施できる規模ではないことは確かですが、一方で録音のチャンスは幾度もあるわけではなく、距離の違いを考慮して同時録音をしたり、音割れリスクの高い近距離の録音は複数のマイクで入力レベルを変えて収録するしたりといった工夫も行われており、準備や計画の重要さが際立っていました。

「Producing Music for AAA Video Games」は、AAAタイトルの音楽プロデュースに関するセッションです。これまでのセッションと同様に、目標と課題の明確化、きっちりとした計画が必要となる強調されたのは言うまでもありません。さらにAAAクラスともなれば、世界のどこのホールやオーケストラで収録するのがよいか、といったような問題まで考える必要があるそうです。また、AAAタイトルではほぼ当たり前の存在となっているAdaptive Scoring(インタラクティブミュージック)についても言及がなされたとのことでした。

テレビ業界に端を発した「ラウドネス問題」が取り扱われた「Loudness and How to Measure It」というセッションでは、Sony Computer Entertainment EuropeのオーディオディレクターGarry Taylor氏が講演。さまざまなラウドネスの規格があるなかでITU-R BS.1770を基準に考え、Sonyが提案するゲームラウドネスの標準規格ASWG-R001を紹介しました。

ASWG-R001はインタラクティブコンテンツであるゲームに適用するため、さまざまなシーンを含む30分以上のゲームプレイを計測方法の指標としています。さらに据え置き機と携帯ゲーム機においては異なる基準を設けたというのが、大きな特徴です。また、AUDIO BOOT CAMPでの話ではありませんが、ラウドネスをめぐったパネルディスカッションでは、このASWG-R001に対してEA SportsやActivision、Microsoftなどが続々と賛同を見せたとのことで、ASWG-R001が一気に世界標準に近い存在になった、と中西氏は説明しました。

AUDIO BOOT CAMPをひと通り紹介した中西氏は、続いていくつかのトピックを紹介しました。まずは日本でもスクウェア・エニックスから発売されている『Hitman: Absolution』に関するセッションです。雑踏にまぎれて対象を暗殺するというシーンの多い同作では、最大で1200人の群衆をAIで制御しているそうで、その群衆音の表現も優れていると紹介しました。

群衆と一言に言ってもその規模は多様で、1人のときもあれば1000人にまで及ぶこともあり、またその中間程度の人数ということもあります。『Hitman: Absolution』ではここに群衆の状態も加味され、1人がパニック状態に陥ったときの音もあれば、1000人がパニックになったときの音が必要になる場合もあります。そこで開発チームはパニック状態をいくつかに細分化して問題解決を図りました。具体的には自身に危険が及んだ警戒段階、叫びまわったりして恐怖を感じている段階、最終的に座り込んでしまう怯えた段階といった状況です。これらの異なった状況をブレンドして群衆に適用することで、多彩でシームレスな群衆音の変化に対応しているのだそうです。

一方でプレイヤーにごく近い者はオブジェクト単体で音を表現するようになっており、近くにいるキャラクターは「ガヤ」ではなく、ちゃんとした台詞をしゃべるようになっています。これによって群衆と個が混じった世界をきっちりと再現しているとのことでした。

次にG.A.N.G.(Game Audio Network Guild)の紹介です。G.A.N.G.は、インタラクティブオーディオ発展のための非営利団体で、毎年GDCでアワードを開催しています。今回の2012 GANG AWARDSでは、SOUND DESIGN OF THE YEARに『Halo 4』が選出され、同作に関わっていた『METAL GEAR SOLID』シリーズで知られる戸島壮太郎氏がトロフィーを受け取っている場面が紹介されました。

Game Developers Choice Awardsでの戴冠も記憶に新しい『Journey』は、MUSIC OF THE YEARを含む5つの栄誉に輝いており、サプライズでの生ライブも行われるほどの人気ぶりであったとのことでした。

最後に中西氏は、深く掘り下げることよりも全体を紹介することを目的としたため、紹介が駆け足になってしまったと振り返りつつも、本報告会から得られる刺激をきっかけに皆で勉強して開発に生かしていきましょう、と本報告をまとめました。
《千葉芳樹》
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