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アプリのマーケティングは選挙戦略と同じ!? 元首相を父に持つWowmax Media海部氏が語る

ゲームビジネス 市場

Wowmax Media 海部正樹氏
  • Wowmax Media 海部正樹氏
  • 北米アプリ市場の現状とアプローチ
  • プロフィール
  • 選挙メソッドを紹介
  • 選挙活動の要点
  • アプリの販促の要点
  • 選挙戦は空中戦と地上戦に大別される
  • 選挙の際の分析はこのような感じで必要な票を読む
CRI・ミドルウェアは13日、渋谷ヒカリエにて「海外マーケティング×モバイル開発技術セミナー」を開催しました。同社では米国のWowmax Mediaと提携して「CLOUDIA Glocalizer」という海外でのアプリ・ゲームのマーケティングのワンストップサービスを提供開始します。セミナーでは、このWowmax Mediaの海部正樹President & CEOも登壇し、北米のアプリ市場について紹介しました。

海部氏は首相を務めた海部俊樹氏の長男。大学卒業後はTBSテレビで「ザ・ベストテン」「笑って!ポン」といった番組のディレクターを経験した後、父親の首相就任時には内閣総理大臣秘書を経験。その後、WOWOWでアニメや映画のプロデューサーを務め、2003年に独立しWowax Mediaを設立し代表執行社員/CEOを務めます。政治家の家に生まれ、何度も選挙を経験。その経験を元に、スマートフォンアプリの販促においても「選挙メソッド」が有効であると説きます。

■選挙メソッド

選挙活動をシンプルに述べると以下のような活動となります。

1.解決すべき課題を提起
2.解決手段としての政策を訴え
3.実行する人柄、行動力、信頼感をアピールし
4.名前を覚えてもらい
5.投票所へ行き
6.わが候補者の名前を投票用紙に書いてもらう

これをアプリの販促に置き換えると以下のような活動となります。

1.解決すべき「ウォンツ」と「ニーズ」を想起
2.解決手段としての「アプリ」を訴え
3.アイコン、機能とそこから得られる「良いこと」をアピールし
4.アプリ名称を覚えてもらい
5.マーケットプレイスへ行き
6.わがアプリの「ダウンロード」ボタンを教えもらう

こうして見てみると大差はありません。問題を提起し、それに対する解決策を提示、自分を訴求し、最後に行動に繋げてもらいます。また、選挙では「空中戦」と「地上戦」という考え方があります。空中戦はいわゆる個人、浮動票を取り込むための戦術で、組織戦は団体や講演会など組織を固める戦術です。アプリの販促で言えば空中戦は広告、地上戦はソーシャルメディアマーケティングに該当すると海部氏は言います。

地上戦の出陣式や総決起集会はバズを仕掛ける起点になる取り組みであり、ミニ集会や個人演説会はファンを獲得すると同時に、ファンからの口コミを期待する取り組みです。空中戦の選挙カーやポスターは認知度を高める取り組みです。「選挙カーやポスターだけで投票を決める人はいませんし、出陣式やミニ集会だけで決める人もいません。その相乗効果が大事なのです」これはアプリにもそのまま当てはまりそうです。

■北米市場の現状

次いで北米市場について説明がありました。米国は端末数が1億6500万台、AppStoreやGooglePlayの売上も日本の数倍で世界でもダントツの規模を誇ります。そのビジネスモデルは現在はフリーミアムが有力なものの、定額課金(サブスクリプション)も大きくなりつつあると指摘します。(本講演とは関係がありませんが、デロイトも過剰アイテム課金はゲームバランスを損なう可能性があり、サブスクリプションモデルへの移行圧力が高まっていると指摘しています)

言語では当然英語が第一言語で、ヒスパニック系の存在感も高いため、スペイン語の需要も大きいようです。米国以外の国では、母国語ではない言語(日本では英語など)のアプリについてもある程度の売上は見込めるようですが、米国では英語に対応してないアプリでは全く売上が立たない傾向があるようです。

ただし、その唯一の例外が韓国発の「江南スタイル」であると指摘。これについては、YouTubeの映像が偶然の重なりによってバイラル化、伝統的なメディアにも取り上げられたことが要因になったようです。また、PSYがボストンの音楽大を卒業しているという経歴があり、英語が堪能というのも番組などで人気を集めた要因と考えられるとのこと。

海部氏は江南スタイルのヒットについて、確かにクオリティの高さが基盤になっているものの、ヒットの過程は大いに偶然に支えられたものだとコメント、自分達も同じような結果を得られるとは考えるべきではないと述べました。「もちろん、本当に極稀にただリリースしただけでヒットする事はあります。しかし一般的には、YouTubeに載せただけでヒットはしないし、同様にアプリもストアに並べただけでヒットはしません」このように話し、適切なマーケティングの必要性を説きました。

■ローカライズのキモ

後半ではWowmaxが手がけてきた事例を引き合いに出しながら米国展開のためのローカライズについて語られました。

楳図かずお先生の「へび少女」の米国展開では、楳図先生のウェブサイトで当初は「Snake Girl」とされていたタイトルを爬虫類を意味する「Peptilia」に変更し、表紙デザインも変更しました。海部氏によれば、「Snake」という言葉には日本語のおどろおどろしい雰囲気は余り無く、「Marvelに出るような蛇の能力を使うカッコイイキャラクターをイメージさせる」ということで変更されたそうです。表紙の絵もインパクトのある形に変更。出版社からは余り期待がされなかった作品だったそうですが、完売することができたとのこと。

こうした細かなニュアンスや感覚の違いは意識する必要がありそうです。日本のヤフーで「猫」と検索した場合と、米国のヤフーで「Cat」と検索した場合では出てくるイラストのテイストが異なります。端的に言えば、キュートとクールの差のようなものでしょうか。海部氏は「日本のアプリをローカライズすると猫は"Cat"と翻訳する場合が多いのですが、場合によっては"Kitty"という言葉を使うこともできます。日本語でも漢字とひらがなとカタカナでは印象が違うように英語でもこうした点に配慮する必要があります」と説明しました。

そのほか、アニメ「ソウルテイカー」のDVDジャケットは日本版の萌えキャラ絵から、暗くてカッコイイ印象の主人公キャラ絵に変更。こちらもアニメ「パワパフガールズ」の日本輸入の際には、キャラクターに道具を持たせ、タイトルに「Z」を付けました。この2点は日本でヒットさせる際の常套手段になっているとか。

海部氏は幾つかの事例、特にデザイン面について紹介しましたが、単に一例に過ぎないと言います。「デザインだけでなく、タイトルやディスクリプション、キャッチコピーなど細かい掴みの部分には気をつけるべき点が沢山あります。ローカライズの段階で変更するのが困難なこともあり、最初からプロジェクトに参加できていれば良かった、と思う事も多々あります」

■米国でのプロモーション

プロモーションは冒頭にもあったように地上戦と空中戦に大別されます。地上戦ではソーシャルメディアの活用や展示会、キャンペーン、ニュースリリース、ニュース・レビューサイトへのリーチ、大学アニメクラブの活用などがあります。空中戦ではAppRedeem、TapJoyなどのリワード広告やInMobiなどのアドネットワークが活用できます。選挙戦と同じく、地上戦と空中戦を上手く組み合わせることが重要だと言います。

ソーシャルメディアについてはWowmaxの調査によれば、フェイスブックが実に84%のユーザーに利用されていて、最も重要な窓口になりますが、意外に良いとして紹介されたのはタンブラー(Tumblr)。利用率は8%と低いですが、利用時間は1日あたり2.7時間と他のソーシャルメディアよりも長く、海部氏もマーケティングでの活用を進めているそうです。

情報収集ポイントでは「家族、友人」が最も高く、AppStore/GooglePlayなどの「マーケットプレイス」が次ぐという結果。以下、「ブログ、コミュニティ」「動画サイト」「テレビ」「ソーシャルメディア」「レビューサイト」「インターネット広告」という順に。丁寧な地上戦で口コミを広げていくという重要性を物語る結果と言えるでしょう。

最後に海部氏は季節柄も重要なポイントになると指摘。ホリデーシーズンはアプリのダウンロード数も増加させ、サンクスギビングでは前の週と比較して約25%もダウンロードが増加したというデータが紹介されました。ハロウィンは既に終わりましたが、クリスマスに向けて商戦期がスタートしています。こうした季節柄を上手くプロモーションやゲーム内で利用することでより良い結果が得られそうです。

Wowmax Mediaではこうしたノウハウや経験を活かしてCRI・ミドルウェアと共同で「CLOUDIA Glocalizer」のサービスを開始。このサービスの詳細については追って紹介していきます。
《土本学》

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