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米オバマ政権のキーパーソンが語る「ゲームと教育政策」

韓国シリアスゲームカンファレンスに併設された国際会議で8月31日、米ウィスコンシン・マディソン大学助教授で、ホワイトハウスで科学技術政策分野の政策アドバイザーもつとめるコンスタンティン・スタインクラー女史が基調講演を行いました。

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コンスタンティン・スタインクラー女史
  • コンスタンティン・スタインクラー女史
  • 会場は約250名の業界関係者・学術関係者で埋まった
  • オバマ政権のイノベーション戦略図
  • 軍事と医療関係の参加団体が突出している
  • Games for Impact参加大学は東海岸に多い
  • iCIVIC(http://www.icivics.org/)
  • FiLAMENT GAMES(http://www.icivics.org/)
  • E-Line MEDIA(http://elinemedia.com/)
韓国シリアスゲームカンファレンスに併設された国際会議で8月31日、米ウィスコンシン・マディソン大学助教授で、ホワイトハウスで科学技術政策分野の政策アドバイザーもつとめるコンスタンティン・スタインクラー女史が基調講演を行いました。

自身もゲーマーで、特に『ポータル2』『風の旅人』がお気に入りだというスタインクラー女史は、米政府がゲーム産業を21西紀のアメリカ経済を牽引する重要な要因だとして、業界に対する投資を深めていると解説。昨年11月にはシリアスゲームの関連団体・企業からなる「連邦ゲームギルド」が発足したと語りました。

2010年のGDCでミシェル・オバマ米大統領夫人は、会場を埋め尽くした開発者に対して、肥満防止に向けたゲーム開発キャンペーン「Apps for Healyhy Kids」をアピールしました。オバマ大統領もまた、講演で教育用ソフトに対する重要性に触れています。オバマ政権は、これまでで最もシリアスゲームに対する理解度が深い政権だと言えるでしょう。

スタインクラー女史は、この背景としてテレビゲーム産業の急成長ぶりを上げました。今や全米ゲーム市場は251億ドルにのぼり、音楽産業(150億ドル)と映画の興行収益(105億ドル)を合計した額に相当します。2005年から2010年まで米経済はGDP換算で16%上昇しましたが、ゲーム産業の収益はその倍にも当たるものだと言います。

また、今日ではゲーム機は全米の72%の家庭に普及しており、家庭用PCに変わる新しいテクノロジードライバーとなっています。デジタルコンテンツはアナログ(書籍など)に比べて、普及すればするほどコストが安くなる特性もあり、異なるバージョンを作成するコストも安価です。しかもFPSなら知覚力や注意力の向上、カジュアルゲームならストレスや憂鬱な気分の解消といったように、さまざまなゲームでさまざまな身体的・社会的効用が認められています。

これに加えて、2009年度の米国立科学アカデミーの研究では、従来の暗記とテストに変わる、新しいアプローチが科学教育に必要だと提言されました。今日の手法では、学生に対して好奇心とやる気を増進させるような勉強法を呈示するのに限界があります。そして、そのためにはコンピュータを用いたシミュレーションやゲームの手法に大きな可能性があるとしています。

こうした背景から、スタインクラー女史はオバマ政権における基本的なイノベーション戦略にも、ゲームが深く組み込まれていると語りました。そのうえで、イノベーションの促進には産官学の促進が必要だと指摘。具体的な取り組みとして、2011年11月からスタートした「連邦ゲームギルド」について紹介しました。

連邦ゲームギルドの構成メンバーは連邦政府、学術界、産業界、慈善団体などで、37団体(うち4団体はホワイトハウスの関係団体)、191名にのぼります(中でも軍関係と医療関係の割合が突出している点が特徴です)。また全米17校の大学が協力し、ゲームで社会変革を進めようという団体「Games for Impact」とも協力体制を取っていると言います。

このほかスタインクラー女史は世界に大きな衝撃を与えた6本のゲームと、3本のシリアスゲームについて紹介しました。

ゲームは言葉探しとアクションゲームを融合させた『COSMOS CHAOS!』、遊びながら癌の手術に関する知識や、勇気が得られるシューティングゲーム『Re-Mission』、タンパク質の構造解析を進めるパズルゲームで、ゲーミフィケーションの代表例ともされる『Foldit』、健康に関する日々のアクティビティを記録できる総合サイト『President's Challenge Active Lifestyles Award』、そして『PORTAL 2』『風の旅人』です。

特に『PORTAL 2』については、制作・販売元の米バルブ社が本作の物理環境を用いて、物理パズルを作成できるツール環境を学校の教員向けに作成し、公開。総額25万ドルのステージコンテストを実施したとして、高く評価しました。

またシリアスゲームでは、『iCIVIC』『FiLAMENT GAMES』『E-Line MEDIA』の3作が紹介されました。

『iCivics』は各種ミニゲームを通して民主主義と投票の重要性を学ぶというシリアスゲームです。ミニゲームには、法律事務所を経営しながら、街の人々のさまざまな陳情が合衆国憲法的に適正か否かを判断していく『Do I have a RIGHT?』など、行政、市民の義務、市民と行政のかかわりに関する17種類が用意されており、すべて無料でプレイできます。教師向けにゲームとペーパーテストを組み合わせた授業プランが用意されており、積極的に授業で使用してもらうことが意図されています。

『FiLAMENT GAMES』はシリアスゲーム専門のゲームスタジオで、自社サイトでゲームを提供する傍ら、他のパブリッシャーにもゲームを提供しています(『Do I have a RIGHT?』を開発したのも同社です)。ミニゲームの一つ、『Citizen Science』では、クリック式のアドベンチャーゲームを遊びながら、身近な科学について学んでいきます。同社によると▽テストの前後でスコアが46%上昇▽57%のプレイヤーが自宅でプレイする▽85%のプレイヤーが十分に理解できたとレポートを提出--といった効果がみられました。

『E-Line MEDIA』が提供するシリアスゲーム『GAMESTAR MECHANICS』は、子供たちがブラウザベースのゲームを実際に作りながらゲームデザインについて学べるシリアスゲームです。同サイトではゲームを作って共有し、レビューをもらうプロセスが、STEM (科学、技術、エンジニアリング、数学) の向上につながるとしています。サービスを開始して約1年で、3000以上の学校が放課後プログラムとして導入し、20万人以上の生徒がゲームを作成し、全ゲームが100カ国以上で500万回以上プレイされるまでに急成長しました。

オンラインゲーム中毒が社会問題になっている韓国では昨年、青少年が一定時間ゲームを連続してプレイするとゲームが自動的に終了する「シャットダウン制度」の導入が法律で定められました。さらに現在、一日4時間を超えてプレイできないようにする「クーリングオフ制度」も議論の遡上に昇るなど、ゲーム業界に対する規制が強まっています。こうした中でゲームを積極的に教育に取り込もうとする米オバマ政権の方針は、聴衆にも驚きを持って迎えられたようです。
《小野憲史》

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