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プレイステーションVSセガサターン 「次世代ゲーム機戦争」がゲーム産業を加速させた(2)

ゲームビジネス その他

プレイステーションVSセガサターン 「次世代ゲーム機戦争」がゲーム産業を加速させた(2)
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8月31日、セガなど幾多のゲーム会社で活躍してきた黒川文雄氏が主催する、エンタテインメントの未来を考える会「黒川塾」の第2回が開催されました。イベントではソニー・コンピュータエンタテインメントの生みの親の一人、丸山茂雄氏や藤澤孝文氏、「アークザラット」シリーズの生みの親・赤川良二氏が登場してエンタテインメントの未来について議論が深まりました。

任天堂との決裂、イノベーションでなし得た初代プレイステーション立ち上げ秘話(1)

任天堂という強大過ぎるライバルの前に、大半の人が失敗するであろうと考えていたプレイステーションでしたが、見事に任天堂の牙城を切り崩し、大成功を収めることになります。この点について、黒川氏はソニーの音楽部門のメンバーがアーティストやクリエーターの発掘のノウハウを持っていたことに起因するのではないかと分析しました。

実際に赤川氏は、サードパーティの開発者を訪問することは、アーティストを発掘することに似ていると振り返ります。他方、丸山氏はクリエーターやアーティストは我々が育てたのではなく、自ら育ったのであって、我々は良い環境を作り、彼らをリスペクトしていたという点を強調しました。実際にソフトメーカーを訪問する際には、丁重に挨拶を行ない、相手に対する敬意を払うことを怠らなかったといいます。

また黒川氏は、エンタテインメント産業においては才能のある人材の発掘が非常に重要であるため、プレイステーション事業は製造や流通だけではなく、クリエーター発掘においてもイノベーションがあったのではないかと分析しています。音楽業界にはA&R(アーティスト&レパートリー)と呼ばれる新人発掘部門がありますが、従来のゲーム業界にはその部分が足りていなかったのではないかと、黒川氏は述べました。その点、SCEの立ち上げには音楽部門のメンバーが多く参加し、プレイステーションには新たなクリエーターが多く発掘された点を黒川氏は強調しました。

事実、丸山氏は当時のゲーム業界を振り返り、クリエーターの名前が表に出てこないことには違和感を覚えたと述べました。映画や音楽では、制作会社よりもクリエーターの名前がブランド化するのに対し、ゲームではクリエーターは裏方であり、制作会社が表の顔を担っています。そこで、ソフトメーカーに対してはクリエーターの名前をもっと表に出すことを要望しましたが、多くの会社側は乗り気ではなかったといいます。それでも、クリエーターたちは自身の名前が出ることを好意的に捉え、丸山氏は「下品な誘い方ではあったが、ミュージシャンは六本木で女の子に名前を出すとキャーキャー言われるが、ゲームクリエイターは言われない。君たちも女の子たちにモテたくはないのか」と勧誘したと言います。

また時代的にも、ゲーム業界には徐々にネームバリューがあるクリエーターが輩出されてきたことも、プレイステーションの成功に有利に働いたといいます。SCE側もクリエーター発掘のための「ゲームやろうぜ」などのプロジェクトを積極的に行なうことで、新人発掘に力を出していたことを、赤川氏は認めています。その点でも、藤澤氏が開発に関わった『パラッパラッパー』は音ゲーの先駆者となるとともに、ゲームプロデューサーの松浦雅也氏やイラストレーターのロドニー・グリーンブラッド氏など著名なクリエーターが全面に出ていることが特徴として挙げられました。

さらに2Dから3Dへのグラフィックの変化に対応していたことも、プレイステーションの成功の鍵として挙げられました。ソニーの内部では、家庭用ゲーム機において3D描画は時期尚早だと考えられていました。しかし、セガのアーケードゲーム『バーチャファイター』の登場を目の当たりにすることで、赤川氏は「これはイケる」と思ったそうです。丸山氏も、当初は3Dゲームがどのようなものかまったくイメージができないまま、ソフトメーカーにプレゼンテーションを行なっていたことを認め、『バーチャファイター』が登場した後にようやく「俺たちがやろうとしていることはこれなんだ」と理解したといいます。

結果として『バーチャファイター』の成功がプレイステーション事業の成功に結びつき、当時の日本の「次世代ゲーム機戦争」の日進月歩の様子が改めて確認されました。セガ側もナムコがプレイステーションのローンチタイトル『リッジレーサー』の映像を見て、その圧倒的なクオリティに驚き、セガサターン版の『バーチャファイター』開発に火が付いたと黒川氏は振り返っています。丸山氏によれば、この時代の「次世代ゲーム機戦争」は自動車産業全盛期のトヨタと日産の戦いに匹敵しうる日本のビジネス史として後世に残るだろうと振り返っていました。

CD-ROMという新しいメディアと流通の基盤という点にも、プレイステーションの成功の理由があると、赤川氏は指摘しました。当時の任天堂のロムカセットは1万円を超す高価格でしたが、プレイステーションはメディアのコストダウンにより5800円を基本の価格として設定しました。さらに品切れの際の再発注もロムカセットに比較すると圧倒的に早く、流通の面でプレイステーション事業が優れていたことが指摘されました。またセガサターンが従来の問屋制度を利用することで、スムーズな物流網を築けなかったのに対し、レコード事業を手がけていたソニーはより速やかな物流を行えたことがゲーム機戦争においての勝因の1つにあったのではないかと指摘しました。

(つづく)
《今井晋》

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