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国内唯一のゲームエフェクトツール「BISHAMON」セミナーが大盛況

ゲーム演出の花形で、タイトル全体の完成度も大きく左右するゲームエフェクト。見栄えの向上にとどまらず、プレイヤーにゲーム内情報をわかりやすく伝える(例:エフェクト量でダメージ値を視覚化する)など、さまざまな役割を担っています。

ゲームビジネス 開発
エフェクトツールは共通化が進みにくい
  • エフェクトツールは共通化が進みにくい
  • 参考になる書籍や資料なども乏しいのが現状
  • 学生がエフェクトを学ぶ機会がない
  • 国内唯一のゲームエフェクトツール「BISHAMON」
  • 国内唯一のゲームエフェクトツール「BISHAMON」セミナーが大盛況
  • 『ガンスリンガー ストラトス』など最新タイトルで採用
  • GUIベースの直感的な内容で容易に習得できる
  • 国内唯一のゲームエフェクトツール「BISHAMON」セミナーが大盛況
ゲーム演出の花形で、タイトル全体の完成度も大きく左右するゲームエフェクト。見栄えの向上にとどまらず、プレイヤーにゲーム内情報をわかりやすく伝える(例:エフェクト量でダメージ値を視覚化する)など、さまざまな役割を担っています。

特に現世代機ではポリゴン+テクスチャという基本表現に加えて、シェーダーやポストエフェクトなどとの合わせ技で、より高度な表現が可能になりました。またスマートフォンの普及で、モバイルコンテンツといえども相応の表現力が求められるようになり、ゲームエフェクトの必要性が急増しています。

ところが、これまでゲームエフェクト用のツールは企業や開発チームで独自に作り込まれる例が多く、標準的なものがありませんでした。そのためゲーム向けの専門書も存在せず、学生やアマチュアが学ぶ障壁に。結果としてエフェクトデザイナーになるにも、企業内でデザイナーが転職するケースが一般的でした。


こうした中で、いち早く3Dゲームエフェクトツールの外販を開始したのが、マッチロックが開発する「BISHAMON」です。これまで『Child of Eden』『機動戦士ガンダム 戦場の絆』『ガンスリンガー ストラトス』など、さまざまなタイトルで採用されています。企業向けに留まらず、昨年10月から「BISHAMON Personal」として個人向け発売も始まりました。公式サイトでは体験版がダウンロードが可能です。

同社ではBISHAMONの講習会も開催しており、7月14日には初心者向け講座「ゲームエフェクト・セミナー」が東洋美術学校で開催されました。入場無料で、BISHAMON Personalの期間限定ライセンス付き体験版も無償配布とあって、当初40名だった入場枠は即座に満員御礼。急遽会場を100名に拡大しての開催となりました。

セミナーは同社BISHAMONエバンジェリストの後藤誠氏の司会進行で始まりました。後藤氏は冒頭、これまで「『良いゲームは良い環境から生まれる』をモットーに開発環境の整備を行ってきたが、今後は企業の枠を超えて整備を進め、日本のゲーム開発力を底上げしていきたい」と挨拶。その契機となったのが、本年3月の米GDCへの参加だったと言います。

後藤氏はドキュメンタリー映画『インディーゲーム・ザ・ムービー』の試写会に端を発する、国産ゲームの現状をテーマとした世界的な議論について紹介。国産ゲームが世界中から高い注目を注めている一方で、その期待に見合ったゲームを自分たちが作り出せていないのでは、という問題意識を抱いたと語りました。その結果、企業の枠を超えた取り組みの必然性を痛感するようになったとのことです。

セミナー本編は三部構成に分かれ、第一部ではゲームエフェクトの基本的な概念について、第二部ではBISHAMONを用いた簡単なエフェクトの作り方について、後藤氏による講演が行われました。第三部ではゲームエフェクトに強い開発スタジオ、アグニ・フレアの稲葉剛士社長が登壇し、プロの開発現場でどのようにエフェクトが作られているか、さまざまなテクニックが紹介されました。

第一部で後藤氏はゲームエフェクトを大きく「パーティクルエフェクト」(爆発や閃光など、粒子による表現)と「ポストエフェクト」(被写界深度など、カメラの光学的シミュレーションによる表現)に分類し、このうちBISHAMONでは前者を手軽に作成できると説明しました。その上でパーティクルエフェクトはエフェクトを放出するエミッターと、そこから放出されるパーティクルの組み合わせから表現されると解説。両者の関係性を蒸気機関車と、煙突から排出される煙に例えました。

またゲームでパーティクルエフェクトを効果的に使用するには、ランダム幅をうまく設定することがポイントだと解説しました。アニメ作品の爆発シーンなどでは、すべての爆発表現をセルに描き込む必要がありますが、ゲームなら計算によるリアルタイム処理で表現が可能です。そこでエミッターからパーティクルを放出する際に、色や方向、移動速度、範囲などの固定値に適度なランダム幅を設定すれば、よりリアルなエフェクトが手軽に実現できるというわけです。

第二部ではBISHAMONを用いた「雪を降らせる」「画面に(東宝のロゴバックのような)閃光を光らせる」「竜巻を起こす」という3つのエフェクトの作り方について、具体的な説明が行われました。

まず「雪を降らせる」では、BISHAMONのテクスチャ作成ツールで作成した雪片をパーティクルに設定し、3D空間上に広く薄く設定したエミッタからランダム幅を持たせて下方に放出して表現。閃光は細長いパーティクルを角度を変えながら放射状に配置して表現しました。最後に竜巻は、多関節構造の回転状エミッターを設定し、そこから煙状のパーティクルを上昇・拡散させて表現。このように多関節構造のエミッターを手軽に作れるところがBISHAMONの特徴とのことです。

これらは事前にキャプチャされたデスクトップムービーを再生しながら解説されましたが、後藤氏は何度も画面上でプレビューを確認しながら、少しずつパラメータを調整して、完成形に近づけていきました。このようにプログラマーの手をわずらわせることなく、デザイナーがGUI上でプレビューを見ながら、高速にトライ&エラーができる点がBISHAMONの特徴。そのメリットが講演を通して、改めて強調されました。

同社では同様のセミナーを定期的に開催していくとしています。第2回目の開催が7月28日にアナウンスされており、Unityとの連携などのデモが行われる予定ですが、すでに申し込みは満員御礼状態となっています。国内で珍しいゲームエフェクトのツールセミナーだけに、第3回目以降の開催も期待されます。
《小野憲史》
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