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【TGS 2011】過去最もスケールの大きな作品に、『Gears of War3』プロデューサーが語る開発秘話

『Gears of War』シリーズと言えば、『Halo』シリーズと並ぶMicrosoftスタジオのフラッグシップ的シューター。その最新作についてのプレゼンテーションが14日、日本マイクロソフト本社にて行われました。

ゲームビジネス その他
 
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『Gears of War』シリーズと言えば、『Halo』シリーズと並ぶMicrosoftスタジオのフラッグシップ的シューター。その最新作についてのプレゼンテーションが14日、日本マイクロソフト本社にて行われました。ある意味、欧米においてXbox360(360)そのもの普及を牽引したキラーソフトの位置づけである同ソフト。かの有名な全米キー局の一社、NBCの「Late Night with Jimmy Fallon」が2回にも渡ってフィーチャしてきた話題作でもあります。

マイクロソフトゲームスタジオのエクゼクティブ・プロデューサである Chris Kimmel氏が本作について語ってくれました。

■今作は、「最もスケールが大きく且つ面白い」作品とクリス氏

クリス氏によれば「最もスケールが大きく且つ最も面白い」と期待されている『Gears of War3』。開発規模もEpic Gamesサイドが70名、Micrsoftサイドがコアメンバのみで20人という大きさ。また本来は11年4月のリリースにあわせ開発も順調に進んでいたものの、大作配地の調整から9月へと延期。その後、今回のリリースまでマルチプレイヤーモードをチューニング。ストーリーモードの部分もかなりブラッシュアップしてきたとのこと。この点はまるでハリウッドの大作映画のようですね。

冒頭では、ゲーム内に搭載されている「あらすじ」からこれまでのストーリを振り返りました。このような機能は初心者にとって親切ですね。このように初心者に対するケアが随所で感じられるのが本作の特徴でもあります。

前作で人類の敵であったローカストに加え、ローカストの突然変異体ランベンドの存在が明らかとなり、それぞれの存亡をかけた三つ巴の争いへと突入した惑星セラ。人類がよりどころとしていた政府も崩壊し、マーカスフェニックスが率いるデルタ部隊も含め、生存者は限られたメンバーで戦いを強いられることになりました。結果的に女性すら実践に巻き込まれるという事態になっているのです。このような流れから、本作からは女性キャラクターでのプレイも可能となりました。

『Gears of War3』ではストーリモード、Hordeモード、Beastモード、そして対戦モードと4つのモードがあります。ストーリモードはSF小説家として『Star Wars』シリーズや、『Halo』ユニバース、並びに『Gears of War』ユニバースを皮切りに、自身のオリジナルも含め数多くのSF小説を手がけてきたKaren Traviss氏によるもの。マーカスフェニックスを中心とした話は本作が最後であるためこれまでで最も長大になっているとのこと。また『Gears』シリーズのコミックからJayson(Jayce)、小説からはSamantha(Sam)が本ゲームで登場します。これは、コミックファンや小説ファンにとって嬉しい事であると同時に『Gears』ワールドの広大さを示すいい方法ですね。

■世界観をもとに徹底的にゲームデザインの作り込みを図ったBeastモード

一方、『Gears of War』シリーズを最も特徴づけるフィーチャーとしてあげられているCO-OPモードでは、前作から搭載されたHordeモードに加えBeastモードが加わりました。「このふたつのCO-OPモードはゲームデザインから根本的に違う」とクリス氏。Hordeは、4人のプレイヤーが人類となり共に助け合いながら12回にもおよぶローカストの攻撃に耐えるというものですが、Beastの場合は、プレイヤーがローカストとなり人類を倒すというのが目的となっています。ですので、Hordeの本質は「ディフェンス」であり、12回に及ぶ波状攻撃の中でより敵が強力に成る中で自らが仲間とともに「生き抜く」というのが重要になってきます。それに対しBeastの本質は「オフェンス」。つまり、如何に早くステージ内の人類を殲滅するかがポイント。Beastではステージがはじまってから、制限時間のカウントダウンがスタートします。ゲーム内で敵や拠点を倒すことで時間を延ばすことが出来るものの、プレイヤーには素早い判断と攻撃力が必須となってくるのです。この「世界観設定に最適化したゲームデザインを考えていく」という発想は大変興味深いですね。単にプレイヤーキャラクターのモデリングを変えるだけと言った判断も出来そうですが、ゲームデザインレベルから抜本的に変えていこうという姿勢にEpic Gamesスピリットを感じることが出来ます。

なお、対戦モードについては、「ゲーム初心者を置いてきぼりにならないように細心の注意を払いました」とクリス氏。数多くのハードコアプレイヤーがプレイする『Gears』シリーズでは、初心者がハードコアプレイヤーの物凄さに圧倒されてしまいやる気を失ってしなう場合もあるとのこと。そこで新たにカジュアルモードを搭載。このモードは、プレイヤーデータを参照し、初心者として確認出来たプレイヤーのみがプレイ出来る仕様になっています。更に、初心者の能力が向上し常にトップを維持するような状態となるとカジュアルモードから「卒業する(Kicked Out)」とクリス氏。

なお、チームデスマッチではリスポーン(復活)機能が追加されました。これまでは一旦倒されると、セッションが終了するまでプレイヤーは他のプレイヤー同士の戦いを観察することしか出来なかったのですが、本作からは一度倒されてもすぐに復活し戦いに参加できるのです。ただし要となっているのが15デスルール。つまりチーム内全体で倒された回数が一人で複数回倒されてしまう場合も含め、先に15回を超えると負けということ。「このモードでONE DEATH LEFTと表示されるとゲームプレイの緊張感が一気に高まる」とクリス氏。

この他に新たなモードとして加えられたのが、ストーリモードでのアーケードモード。ゲームセンターのような雰囲気で楽しめるマルチプレイヤーモードなのですが2人~4人でプレイしながら得点を争うというモードです。Xbox Live経由で全世界の人達とハイスコアを争う事が出来るのです。また、シーズンパスも導入。これを購入することで今後リリースされるダウンロードコンテンツ等も33%割り引きとなります。また、AVATARのアンロックなども数多くリストされ、条件なども多岐に渡るためやり込み要素が非常に高い事も明らかになりました。

■地道な調査のもと、底上げがされる作品のクオリティ

このように新たなフィーチャーが数多く追加されている本作なのですが、前述のように開発の主体となっているのがEpic Gamesであるのに対し、その開発をサポートしていくのがMicrosoftスタジオです。今回のインタビューで、クリス氏はその開発チームの構成についても語ってくれました。20名のコアメンバーで構成されたMicrosoftスタジオですが、その中のUser Research Teamは、心理学の修士号や博士号を持つ人たちで構成されているとクリス氏。そこでは、ゲームプレイなどを分析しそれをフィードバックとして提示していくというのが役割とのこと。ゲーマーは必ずしもゲームを開発出来るわけではありません。時には気まぐれな事を言ったりします。ですが、調査チームはゲーマーの要望を、「開発者がゲームをデザインしていくうえで必要となる情報」へと展開しなければならないのです。

今回、チームデスマッチモードにおいて、復活機能を追加したのもこれらの人たちの調査結果に基づいています。研究の初期段階では、ゲームにおける「死」というのがユーザーにとってペナルティにつながると思っていたとのことです。ですが、調査を進めていくと、プレイヤーにとって自身の「死」が問題なのではなく、数多くの敵を倒す事が出来ない」ということが、問題であることが明らかに。また、初心者は、最初の何回かのゲームプレイで10回敵を倒すことが出来れば、リプレイ率が高くなることも調査結果として現れたとのこと。復活機能の実装はその比率を高めるために必要だというわけです。この他にも、Beastモードに主要キャラクターを登場させるといった、Epic Games側アイデアに「各キャラクターの特徴を際立たせるべき」と提案したのもMicrosoftスタジオ側だとクリス氏。フィリックスの場合はワイルドに、ホフマンはこのようにという感じです。また音声を入れその存在を分かりやすくするといったことも決定されたとのこと。あくまでも最終的な決断は、Epic Games側に委ねられるとしつつも、「Epicが考えたアイデアをより優れたモノになる様サポートするのがマイクロソフト側の仕事」とクリス氏。 

時にはユーザーの要望もストーリーに反映させることも。作品中、戦死してしまうことで知られるCarmine兄弟の1人が今作も登場するということが明らかになってから、ユーザー間で議論がさく裂。それを受けてEpic Games並びにMicrosoft側は、Carmineの運命をユーザーに託すと決めたのです。Carimine Must DieならびにSave Carmineという双方のTシャツをリアル及びバーチャルアイテムとして販売。販売数が多かったTシャツに基づきCarmineの物語も決定したとのこと。売上は全てチャリティに献金したのですが、双方合わせ17万5000ドルもの売上を達成したとのこと。このようなコミュニティの盛り上げも重要ですよね。

クリス氏が『Gears of War』シリーズを担当するようになって最初におこなったのが、『Gears of War 2』日本語版のリリースであったとのことですが、その時から次回作では、全世界同時発売で進めるべきだと決めていたとのことです。ですので「数日後には他言語バージョンとほぼ同時期に日本語版をリリース出来ることが本当に嬉しい」とクリス氏。これまで米国ならびに欧州での長期滞在経験がありながら来日は今回が初めてというクリス氏。日本に関しては「素晴らしくて、趣深いと同時に他国とは全く違った国」と率直な意見を語りつつも、『Gears of War』シリーズの成功はファンの愛情と情熱で成り立っており、その意味では「日本のファンは他国のファンと同様に作品に対して情熱的」(クリス氏)とのこと。

「東京ゲームショウ2011では、Hordeモードをプレイアブル出展しますが、今作も強力にバージョンアップしているので期待しておいてほしい」と発表を締めくくりました。TGS直後という絶妙なタイミングで発売される『Gears of War3』。TGSの試遊でより多くの人が作品の世界感に共感してくれると良いですね。
《中村彰憲》
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